お見合い
お見合い当日。
何やら向こうも親御さんは来ないようで、当人同士で待ち合わせという事になった。
久々に引っ張り出した一張羅は、みっちゃんが丁寧にアイロンをかけてくれた。
テーラーの長男坊であるみっちゃんの初めてのお客が俺だったのだ。
まあ、まだ学校を卒業したばかりだし幼馴染みだからというおじさんのお情けで破格だったけれど。
更にいつもみっちゃんがスタイリングしてくれたおかげで、これまで冠婚葬祭には困らなかった。
今日はパリッと糊を効かせた真っ白いシャツにブルーグレイの小紋柄のタイ、おまけにロイヤルブルーのポケットチーフまで着けてくれた。
「ちょっと、派手じゃない?」
「あれだけの美人に会うんですもの。これぐらいお洒落しなくちゃ」
とウキウキと送り出してくれたみっちゃんに、俺は何て報告すればいいんだろう。
高級中華料理店の個室にやって来たそのとびきりの美人が、俺と同じメンズのスーツを着ているなんて。
「あれ、部屋間違えたかな?」
「……いえ、村川和泉さん、ですよね?」
「そうだけど……じゃあ、あんたもしかして」
「一華、春樹です」
「男かよ」
そう言うとその人は、腹を抱えて笑いだした。
「いや、まさか男とはね」
「僕は名前で分かりそうなもんですけどね」
「いや、苗字しか聞かなかったからよ」
「写真……」
「んなもん見てねぇよ。まぁ、とにかく飯食おうぜ」
「そうですね。僕は炒飯で」
「俺エビチリ」
最早お見合いでは無くなってしまった会食で話を聞いてみれば、美人こと和泉さんも近所のおばさまにしつこくお見合いを迫られていたらしい。
そこに、何故かメモ書きだけの僕のプロフィールが紛れ込んでいてこれだけ適当なら成立しないだろうとタカをくくったそうだ。
「で、そっちは?」
「写真見て、凄い美人だなって」
「美人、ねぇ」
「だから、絶対そっちから断ってくれると思ったんです」
くすくすと笑う声はやがて大きくなって。
「や、お前気に入ったよ!近くに行き着けの飲み屋があるから寄ってかないか?」
「いいですね。俺も飲みたい気分だ」
何だか妙に意気投合したのと、その飲み屋のモツの煮込みが絶品だった事は記憶している。




