世話焼き
三十路の声を聞くようになってから、幼馴染のみっちゃんが毎日のように見合い話を持ってくる。
「春樹、いいかげん真面目に考えて頂戴」
「えぇ〜」
「えぇ〜……じゃないわよ!」
「だって、誰かと一緒に暮らすなんて、面倒臭い」
そう言ったとたん、レジ台をバン!と叩かれて飛び上がってしまった。
「止めてよ、爺ちゃんの代から大事に使ってるのに」
「あんたがずっと独り身じゃ、あたしがそのお爺ちゃんとお父さんに顔向け出来ないっての!」
亡くなったおじさまに春樹をよろしくって病床で頼まれてるんだから、っていう泣きまねも何時もの事。
俺はこの本達に囲まれて居れば幸せだし、何せこの「あねもね」は閑古鳥が鳴いている古書店だ。
独り身の糊口をしのぐ位の稼ぎしか無い。
大体。
「光善こそ長男なのにいいのかよ」
「ちょっと!あたしは“みつよ”よ!」
みっちゃんだって、生物学上は男なんだし。
「みっちゃんがお見合いすればいいじゃないか」
「あたしにはイケメンの彼氏……いや、かれぴが」
「うざい」
「それに、うちはいいのよ。次男坊が居るもの」
「光弘も大変だな」
何の気なしに床に目をやる。
先ほどの衝撃で落下したお見合い写真を拾ってみれば、凄い美人が写っていた。
「ほら、この人綺麗でしょ?スナップ写真でも遜色無いわ」
「……みっちゃん、俺この話受けるよ」
「やっとその気になってくれたのね!これでおじさまに顔向け出来るわぁ」
はしゃぐみっちゃんをよそに、俺には算段があった。
こんな美人が、うだつの上がらない俺と結婚する気に成る筈が無いと。
一回でも見合いをして、断られたらもう五月蝿く言ってくる事も無いだろう。
そう、この時は呑気に構えていたんだ。




