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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第92話 防壁

 襲撃者が帰った村には荒れ果てた門と柵が残った。

 以前、建てた長屋の建物も壊されてしまっている。そういった荒くれ者達をこのまま帰していいのかとも思ったが、ロベルトさんはそう決断した。

 ロベルトさんは独りで決断したことを僕に謝罪した。

 僕はそれを受け入れた。

 僕はあの時冷静な判断を下せたか分からない。

 もしかしたら、正当防衛とは言え、殺人の罪で捕縛される可能性もあった。冷静でない自分が決断した場合の結果を考えて、ロベルトさんに任せたのは最良の判断だと思った。ソフィアさんも胸を撫で下ろしている事だろう。


 村の前に散乱した建物の残骸を火魔法で燃やし綺麗にする。

 それが終わると村の前に大きな空き地ができた。この空き地に土魔法で大きな穴を掘って、穴底と壁に土魔法で粘土を敷き詰める。

 そして、水を入れ、樹木の間にある50m半径の池を作った。

 これにより、村へは、この50mの池を越えないと入れなくなった。それでも筏とか船とかを利用すればこの村の門までたどり着くことはできる。

 少しでも準備する時間が取れるのは良く、こちらの対応する時間がとれれば良いのだ。それに、この池のせいで、村の柵の傍に家やテントが並ぶこともなくなるだろう。こちらも良い事だろう。


 さらに、僕は村の門を魔法で修復する。木の門を土魔法で鉄の門とし、木の柵を土魔法で高さ3mの石の壁にした。

 その間、ソフィアさんは僕に付きっきりである。僕の精神的に弱い面が心配なのだと思う。作業を終えるとソフィアさんが言う。

 「疲れたでしょう、王子」

 「いえ、これくらいはなんともありません。襲撃時は、冷静に対応できず申し訳ありません。危うく人殺しになるところでした。僕の嫌な面を見せてしまいました。反省しています」

 僕は答えた。

 「王子は優しい人です。人の命を弄ぶ人間ではないと、今でも思っています」

 そう言われても僕は返す言葉がなかった。ソフィアさんは続ける。

 「でも私は嬉しかった。守られているのが感じられたから。ならず者を見ても少しも怖くなかった。たとえ、あの場で殺されてもです。王子がそばにいるだけで安心出来たのです」

 僕は恥ずかしくて彼女をまともに見られない。年下であるはずの彼女が僕より冷静に状況を分析し、僕を信じていてくれたのだ。しかし、そんな彼女に比べて、僕は怒りに任せて力ずくで解決しようとしていた。

 力を過信していたのだ。


 「でも、ソフィアさんが許せても、僕は自分が愛する人を蔑ろにする人を許せません。その時は悪魔と言われようが、狂人と言われようが、この体が朽ち果てるまで戦います。それで、この王国を敵に回すことになったとしてもです」

 「王子、お気持ちは凄く嬉しいです。しかし、王子が犯罪者になってまで私を守る必要はありません。王子は新しい国を作る人です。でも、私は違います。私の代わりはいくらでもおります。私は貴方の為に死ぬ事が私の幸せなのです」

 彼女の言葉は僕の身に染みた。

 僕は黙った。彼女を見つめると、その瞳に僕の顔が映るくらい近かった。僕は彼女を強く抱きしめた。

 そして、泣いた。

 彼女の体の温かさは僕の張りつめた気持ちを溶かしていく。

 それが快かった。


 「王子、私は今から王都に行ってきます。村の事を含めて父と相談してみます。それに、一番重要な人材の相談をして、できれば、何人か連れてくるつもりです。

 私がいない間は、警備の人間を残していきますが、決して、村の外にでないようにお願いします。今回は追い返しましたが、別の集団が襲ってくる可能性もあります。くれぐれもお気をつけてください」

 と、ロベルトさんは言って、単身、トンネル経由で王都へ向かった。


 僕はソフィアさん、エアリスを連れて、村を眺められる街のはずれに来ている。今回の事を反省して、いち早く状況が分かるように監視塔を建てることにした。監視塔のイメージを想い浮かべ、三次元プリンターの魔法陣でフレームを作り、それに、コンクリートで強化した。

 コンクリートが乾くのを待って、塔に登る。

 人がいなくなったアイデンドルフの村が見え、今回作成した門の先に池が広がる。その先は勾配のある道となっていて、その先の道は見えない。さらにその先には、山々が連なっているのが見える。

 僕はエアリスとソフィアさんをそこに残して、村に降りた。そこから、風魔法で、自分の声を街の監視塔にいるエアリスへ送る。

 「ウインド・ボイス・〝エアリス、聞こえますか〟」

 監視塔でエアリスが手を振る。

 『聞こえますよ』

 エアリスが同じ魔法で僕に送ってきた。

 良好だ。

 これで、半二重通信で、簡単な意思疎通ができる。また、実験をしてみる。

 「ウインド・エリアボイス・〝ソフィアさん、エアリス、聞こえますか〟」

 今度は、ソフィアさんとエアリスが手を振る。こちらもうまくいった。時計が作れれば、この魔法を使って街の人には時報を届けることができる。また、危険が迫った時、一斉に知らせることができる。

 僕はこれらをまとめてウインドコムの魔法として魔法ぶっくに登録した。

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