第90話 襲撃
「ところで、病人やけが人は門の前に並んでいますか?」
僕は尋ねた。
「えー、並んでいる列は日に日に長くなっている気がしています。王子が作ってくれた魔力水を配って凌いでいますが、この魔力水を商売にしている者もいると聞きます。なんとかしたいと思っていますが、与えた物をどう使うかは、個人の判断なのでこちらから強制できません。一度有料にして、様子を見てみようと思っております。
また、王子が作ってくれた村外の長屋には居住する人達がいて、別の集落を作っています。どうも、昨年から続く天候不順の影響で食料難が発生していて、村から逃げてきている者もいるようです。追い返したくても、帰る場所もないらしく、また、村外のためどうしようもありません。それで、村の範囲を広げて、彼らを一時的な村民として管轄していきたいと思っており、王の許しを受けに明日には一度、王都に行くつもりです」
ロベルトさんが言う。
難しい問題だと思う。全ての人を受け入れ、街の住人とするのもひとつの解決策かと思うが、街の仕組み作りがまだできていない時期に、種々雑多な人々を受け入れることは、折角できてきた秩序と安全な街を破壊するような気がしている。
与えられた街づくりのチャンスを大事にしたいと思っている。それで、ロベルトさんには無理を言うが、僕のやりたいようにやらせてもらっている。感謝しないといけない。
街の衣食住の中で残るのは、衣だけになっている。衣の元になるのは布であり、布を作るのは糸である。この世界で糸は麻のような糸が主であり、それで作る布はごわごわしている。
僕は、ジャガイモ等の種イモをくれた農家の家の脇の小川の傍に綿花の木があるのを見つけ、この木も入手し、それを川沿いに植えていた。これに花が咲き、種子がさく裂すれば綿毛がでてくる。これから木綿の糸をつくることができる。これがあれば、裁縫スキルを持った人と協力すれば、木綿の布が作れると思っている。
さらに、綿毛をそのまま利用して布団もできる。綿毛でなくても鳥の羽毛が手に入れば、軽くて暖かい羽毛布団もできる。いずれにしろ、待つしかない。
金属製の箱を作り、食材を低温保存ができるようにした。
箱に取り付けた開き戸に〝ウインド・コールド・低〟の魔法陣を書き込み、家の厨房に置いている。その中に、数日分の食材を入れ、料理人に管理を任せている。つまり、冷蔵庫である。
それと同じ原理を使って収穫した農作物を低温保管する倉庫を作成している。これには、数百人がひと月程度は暮らせる量の食物を保管するため、かなりの大きな倉庫にした。
壁には冷風のいくつもの〝ウインド・コールド・低〟の魔法陣を書き込み、すぐに倉庫全体の温度を一定温度に保てるようにした。
裏の畑の実験農場のジャガイモ、テンサイ、トウモロコシをすべて土魔法で掘り起こし、インベントリに保管したのち、倉庫に移動し、この倉庫に保管した。
空いた裏の畑は、さらに拡張して、次の栽培を行っている。連作が可能かどうかは、次の作物の成長の度合いで確認する予定だ。
倉庫を建て終わったところで、家に戻ると、やけに表が騒がしい。
漏れ聞こえる声から判断すると、村が何者かの集団に襲われているということだ。まだ、門は壊されていないが、それも時間の問題だと考えているらしく、ロベルトさんは警察隊を率いて村に降りて行くために、戦の準備をしていた。
魔術師としてソフィアさんも加わると言う。
「僕も行きます」
ロベルトさんとソフィアさんに言うと、
「ダメです、王子はいてください。万が一のことがあったら困ります」
と、ロベルトさんに一蹴された。
「でも、皆さんを守りたいのです。それに、ソフィアさんは僕が守ると約束しました。ソフィアさんが行くなら、僕も行く必要があります」
毅然として言うと、渋々、ロベルトさんから同行を許された。




