第87話 新しい開発目標
街に新しい住人が増えて賑やかになってきた。
入植してきた人には、鍛冶の職人がおり、一緒に入植した大工の職人と協力して、鍛冶場を作った。やはり大工という専門職がいるのは助かる。彼が必要とする寸法の柱や板を、僕は三次元プリンターで作成し、今後、建物を建てることに関しては彼にお任せした。
また、鍛冶場には、炉、ふいご、金床を作っておいた。その他の道具に関しては、ロベルトさんから費用を渡し、王都で調達してもらうことになった。実際稼働するにはもう少しかかる。ただ、職人が増えてくれば街も豊かになるようで嬉しい。
新しく入植してきた人々は一様に良い街にきたと喜んでいるとロベルトさんが言っていた。まだ、原始共産制に近い街だが、喜んでもらえるのはいい事だ。
しかし、この仕組みも人数が増えてくれば破綻するかもしれない。今の仕組みは、労働の種類、時間に関わらず、食料はすべて配給制になっている。
マイナンバーカードで調べた人数にて食料を一定の割合で配給するのだ。そのために、二日に一回、僕のインベントリから肉、野菜、穀物を出して、僕の家の前で配給をしている。人が増えてくれば、これでは賄えない。
人が増えてくれば食料だけでなく、衣料、生活雑貨も必要となっていく。それは支給ということでなく、売買するという事で色々な嗜好性を拡大するように行っていきたい。色々な嗜好のものが自由に販売できて、自由に購入できるそんな世界だ。
販売、購入と街の維持費の徴収を単純化するため、食料、衣料、雑貨を一括して扱うマーケットを作って対応しようと思っている。
このマーケットには、街の予算から一定金額を運営費として王国通貨で貸し付け、この運営費で各農家、職人からの生産物の購入を王国通貨で行い、購入した商品をマーケットで販売し、その利益を運営費に戻す。
この時の購入額と販売額の差額が、マーケットを維持するための建物整備、労力に対する対価とする。
もし、建物整備や労力に対する対価が払えなければ、街の積立金(僕の魔道具の販売代金)から運営費を補填し、逆に余剰ができれば貸し付けた運営費を返して貰い、最終的に運営費の貸付を返し終われば、運営している人々に貸付け費と同じ額で売却し、独立運営する。
それからは、利益に対して、一定の税を支払ってもらう。その税を使って、別の公共事業費に使うようにすれば、街は自然に大きくなっていくのではないだろうか?その一歩がこのマーケットの建設になる。
このマーケットの建設と運営に関して、人間が関わるものに関しては、不正は必ずあるし、それをなくす方法はない。だけど、それをできる限り少なくする工夫は平等という概念が薄いこの世界では必要だと思う。
そのため、商品の買い入れ額と販売額を誰が使ってもできるように鑑定の魔道具を作ることにした。買い入れ対応する人が変わると金額が変わり、販売する人で販売額が変わるのは問題がある。
それで、物品を鑑定する魔道具を作り、購入額をこの魔道具が決め、同時に販売額のついた値札を吐き出す魔道具を作ることにした。販売するときには値札をスキャンして、販売額を購入客に提示、支払ってもらうレジスター込みの開発となる。
そして、本当は値段は売り手と買い手が決めるものだ。今はまだその土壌がないので、まずは基準を作ってから、少しずつ自由にしていこうと思う。
僕はロベルトさん、ソフィアさん、エアリスに僕が実現したいことを説明した。多分、仕組み(システム)の内容はほとんど理解できないようだった。
その中で、ソフィアさんが聞いてきた。
「王子、それは、つまり、街が金を貸して店を始めさせ、儲かったら返してもらう。返し終わったら、その店を彼らのものにする、ということですか?」
「そうです。その後は、その店の売上金から街に税をもらいます」
「個人でまとまったお金を持っていなくても、商売を始められる、最終的にはお店を持てるということなんですね。そういう目標があると、住民も頑張れますね」
ロベルトさんが言ってきた。僕は答えた。
「そうです。住民のやりたいことをサポートするのが街の行政府という組織になります。その行政府がしっかりしていれば、街は住みやすいものになると信じています」
食料の配給制は一時的なものだと街の住民も分かっているようだ。変えるのであれば、早い方が良いと、話の後に、ロベルトさんから言われる。
これは急ぐ必要がある。
目標ができた。




