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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第86話 変わりゆく村

 毎日家の裏の実験農場を見ていると、みるみる成長しているのが分かる。

 植えてから十日ほどだが、テンサイの葉も茂り、ジャガイモは葉を伸ばし、トウモロコシは腰あたりまで成長している。

 もう少ししたら、収穫も出来る。簡単には上手く行かないとは思うが、上手くいけば、この街の食料事情と料理の種類も改善していくだろう。


 ロベルトさんが頭を抱えている。一時期いなくなっていた村の前にいた人々がまた増えて来たらしい。ソフィアさんが僕を呼びに来た。

 「王子、約束通り移動証明書を持って来た者達は、この街の住人として受け入れようと思っていますが、何か、ご意見ありますか?」

 ロベルトさんが、僕に聞く。

 「例えば、鍛冶、大工、裁縫、畜産、料理、商人といった職業を持った人を街の住人にして、特技がない人は門番とか、坑夫とかの仕事を斡旋して、ある期間その仕事が続くようだったら、街の住人になって貰うのはどうでしょうか?」

 僕が答えると、ロベルトさんが言う。

 「王子、良い考えですね。街に全員を受け入れるのも無理があり、何かの理由付けが必要かと思っていたのです。確かに、街には特殊職がいませんし、必要なので、街に来てもらう必要があります。また、技術のない方は、鉱山が主業務の街に住んでもらうという意味でこの街を知ってもらう必要がありますね。そうしましょう」

 ロベルトさんは納得顔になる。

 しかし、まだ解決できないことがあるようで、

 「村の前にまた同じテント村ができてしまっています。また、衛生上の問題もあり、なんとかしなければならないと思いますが、どうしていいか、わかりません」

 と、ロベルトさんがまた悩みだす。

 「では、村の前に、無料で使える長い家を作って、水汲み場とトイレを作りましょう。そこで、自炊ができれば、テントで過ごすよりはるかに良いので、落ち着くと思います。そこに人を集めておけば、監視もできて、治安を守るのも楽になると思います」

 と、僕が答えると、

 「そうですね。そうしましょう。もちろん、建物と水汲み場とトイレは王子が作るんですよね」

 ロベルトさんが言うと、

 「はい」

 と、答える。

 「王子、変装してくださいね。いずれはばれるにしても、一応、お願いします」

 ソフィアさんが言う。

 「は、はい」


 僕は、また、村長の服を着せられ、白い灰をまぶした髪をぼさぼさにした変な老人の恰好で待っている人々の前に立つことになった。

 ロベルトさんが声をかける。

 「移動証明書を持っている人は私のところに集まってください。それ以外の人はそのままいて下さい」

 ロベルトさんの元に移動証明書を持った人が集まる。

 その人達を村長と村長の息子に分けていく。村長の息子は街への住人であり、村長の元へは村で仕事をする人である。

 ロベルトさんのところから人がいなくなり、村長の息子と村長が説明をしていて、それぞれのグループが移動していく。

 半数以上の人がいなくなった。


 ロベルトさんが言う。

 「この村と街は移動証明を持っている人を受け入れることができますが、怪我や病気の人がいらしても治療できません。元の村や町に帰ってもらえないでしょうか?」

 しかし、多くの人は帰らない。

 「ここにこの先生が作ったポーションがあります。帰ってもらえる方には、このポーションを一家族一本でお渡しします。ポーションはここにあるだけなので、なくなった時点で配ることはできません。どうしますか?」


 エアリスがポーションを台に並べる。

 すると、ロベルトさんの前に怪我人、病人の家族が並ぶ。受け取った順に、人々が帰路につく。並んだ全員にポーションが行き渡ると閑散とした風景となった。

 このポーションは僕が水魔法で作ったクリーン付き魔力水が入っている。インベントリに作り置きしていて、足りなそうになったら、インベントリから補充していた。そのため、全員に配ることができた。

 あたりに人がいなくなったことを確認して、ロベルトさんから指示があり、長いかまぼこ型の平屋を20部屋分作った。その前に、井戸とトイレを作る。20部屋には鍵がかけられるようにして、村で管理できるようにした。


 「王子、ポーション作戦はうまくいきましたね」

 「そうですね。狡いかもしれませんが、治療できないと否定した言い方の後に、無料でもらえるものがあるという利益をだせば、その利益をとるしかありません。

 その私達が提供した利益をとったら、私達の言い分に従う他選択肢はありません。

 ポーション自体はせいぜい気分が良くなる程度のものなので、病気やケガは治りません。

 そのため、待っていても治らないという悪い評判もでてくるはずで、病人やケガ人も今回のようには集まらなくなると思います。

 救える命を見捨てるようで気分は悪いのですが、やれることには限界もありますし、アイデンスタッドの街の住民の幸せのために、僕は尽くしたいと思っています」

 僕は一気に話をし、ロベルトさんは納得したのか、深くうなずいた。

 ここでソフィアさんが言う。

 「王子、これは間違っているかもしれません。でも、誰かを選ばないといけないのなら、私はこの街の人を選びます。王子にはまだやることが別にあります」

 ソフィアさんが僕を後押ししてくれた。


 エアリスが夕食後、明日の予定を確認して自室に戻る。ソフィアさんはそれを見届けると座っている僕に甘えてきた。

 「今日は王子成分が足りません」

 って、僕に抱き着く。僕がどぎまぎして、

 「ソフィアさん、そういう女でしたっけ」

 と言うと、

 「そんな女にしたのは王子ですから、責任とってくださいね」

 って、キスをしてくる。唇を離すと、

 「エアリスは良い子ですが、彼女がいつも一緒なので王子に甘えられません。私は寂しいのです」

 と言う。涙かどうか分からないが瞳が濡れて、こぼれるようだ。

 「では、また、屋上のお風呂で語り合いましょうか?」

 「連れて行って下さいますか?」

 「もちろん、喜んで」

 僕は軽々と彼女を抱え上げる。

 「きゃー」

 っと、軽い嬌声を出す彼女が僕に抱き着く。

 屋上へ続く長い階段の先に広がる宇宙が二人の目的地だ。守るように抱く僕の中で必死にしがみつく彼女が愛おしい。

 この温かい重さを僕が一番に守るものであると確信する。

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