第79話 動き出す街
街は朝を迎え活気をとりもどす。
昨日作った公衆浴場の周りでは街の人々がうごめき、洗濯場もにぎわい始めている。人々の交流の場ができたのは良い事だと思う。ソフィアさんは常に僕の横にいるようになった。僕はそれでも良いのだが、彼女が困ることはないのだろうか?
僕は学校を作っている。例のかまぼこ型の平屋である。教室が三つ、職員が集まる小部屋も作る。各部屋には十組の机と椅子。鉄と板で三次元プリンターを使って作った。見栄えをよくするための二次加工を除けば、簡単に作成することができるので最強である。ソフィアさんが喜んでくれて、街の子供たちもこれから、ここで勉強することになった。
ロベルトさん達が帰ってきた。
フローラさんも一緒である。まず、家に戻り、話を聞く。
ロベルトさんから、この街の扱いに関しての話があった。王国法では、未発見の土地に関しては発見者が優先されるということだったので、アルベルトさんから、第一王子に報告し、アルベルトさんの所領にすることをお願いした。
しかし、反対する貴族がいたため、最終的には、第一王子の所領内で見つかったという事実から、第一王子は、アルベルトさんを男爵に、アイデンドルフの所領を預かるオルフェス先生を準男爵の貴族待遇に昇爵し、オルフェス先生の所有ということで認められたとのことだ。
しかし、その見返りとして、第一王子には魔道具販売代金の利益の七割、その残りをレバークレーゼン商会と学院で分けることになったということだ。
何はともあれ、アイデンスタッドはこの国の所領となり、この国で保護されることになった。
フローラさんはこの街にレバークレーゼン商会の支店を作るとだけ言って、魔道具を引き取り、慌ただしく王都に戻って行った。
過剰生産による値崩れを抑えるために、魔道具作りは今回の納品を持って休止となった。
ロベルトさんから新しい住人を紹介された。
ブドウ栽培とワインの醸造をする農家の人々である。
鑑定を使い、身分確認をしたが、問題なかった。この街の住人になってもらうため、村長の息子の奥さんに言って、彼らに新しいマイナンバーカードを作ってもらった。
僕は川の向こうに渡り、村にあった空き家を移動して、彼らの住居にした。その間、ブドウ栽培の土地を調べていた新住民は満足したらしく、早速、ブドウ園の開墾と植え付け作業をはじめていた。
当面の食料は支給ということをロベルトさん経由で話してある。それに、醸造所の建築もお願いされているので、こちらに作業時間を振る必要がある。建築に伴い、この街の産業部の施設も併設することにした。このまま、この産業部の担当をブドウ栽培と醸造をする家族で担当してもらえればと思っている。明日も新しい住人が来るらしい。
ロベルトさんとは警察組織に関して話し合った。
現在の住民から数名募集し、専任の警官を置き、村の検問とトンネルの検問を行うことにした。村民が交代制で対応していた村の検問を専任とすることにより、仕事の質と責任が明確になった。それに、その職に就くことにより、居場所に誇りを生み出すことになった。こちらは、ロベルトさんの配下となる組織とした。
また、街の庶務として、村長の息子の奥さん(カナーレさんというらしい)、また、教育部の学校担当として、ソフィアさんを推薦し、ロベルトさんの了解をもらった。ロベルトさんはこの街の責任者ではないと言い張ったが、無理やり了承してもらった。形ができてきた。
ロベルトさん含めて、王都へ鉱山資源を納品してきた人達を入浴施設へ案内する。脱衣所で裸になってもらい、石鹸と木の皮から作った洗い布を渡す。備え付けの石鹸で体を洗い、泡を落として、湯舟につかるということを説明した。
実際、お風呂を使ってもらうと疲れがとれて、リラックスできるということだった。風呂上りに水が飲めるようなコップを備えているので、水を風呂上りに飲んでもらうと、少し、涼める場所を近くに作って欲しいという要望があったので、入浴施設の横に、休憩所として、屋根があるだけの箱を作り、その中に、机と寝そべれる椅子を作った。ロベルトさんは気に入って、そこで、すでに眠りこけている。
さらに、ここにアルコールがあると、街の最大の娯楽になるかもしれない。
やはり、風呂上りはビールだろう。ワインの生産だけでなく、ビールの生産も必要か、これも検討しよう。
眠りこけていたロベルトさんをゆすって起こし、ソフィアさんが診療所の話をする。ロベルトさんは足の曲がった患者が鉱山で働き出したのを聞いて驚いている。また、目の手術とか歯痛を治したと話してからは、心配に変わってきたようだ。
この話が変に伝わると僕の立場が、王都を含めたこの世界の富裕層に取り込まれる可能性があるという事だ。オルフェス先生と同じ心配をし始めた。
「王子、おとなしくしていてください」
ロベルトさんはそう言って、急に立ち上がり、さっきまでうとうとしていた椅子を名残惜しそうに見つめながら、いそいそと別のところに行ってしまった。
多分、その治療した患者の状況を確認しに行ったのだろう。確認したうえで、オルフェス先生に報告しに行くのかもしれない。
残されたソフィアさんと僕はその場で立ち尽くし、
「お兄さんに王子にプロポーズされたことを言いそびれた」
というソフィアさんを眺めながら、それはそれで、ロベルトさんを驚かしてしまうのだろうということを考えていた。




