第77話 入浴施設
温水を出す必要があり、それは魔道具でないと出来ない。
これを作ろうと思うが、まず、温浴施設だ。
三次元プリンターで温浴施設のイメージを作る。サウナは後から作るとして、風呂、洗い場、脱衣所を対称に作る。片側を男湯で、もう一方を女湯とする。入り口側に洗濯場も用意する。
そのイメージで三次元フレームを作る。イメージを展開し、倍率設定して、三次元プリンターを動かし、鉄筋を作る。それに、コンクリートを使って補強。
浴槽、水道管、蛇口、シャワーヘッドを作り、男女の扉を作る。
窓にすりガラスをはめて、排水管を下水道へ繋ぐ。浴槽は段を作って浅めに作り、各洗い場に、水とお湯の蛇口を作る。そして、洗い場には石鹸を置いておく。あとは、温水が出る魔道具があれば温浴施設として、夏も冬も使える楽しみの場になるだろう。入り口側の洗濯場にも水とお湯の配管をして、排水を下水道へ流すようにした。
試作用の魔法陣を作成する。
「ウォーター・高」
これに魔力を注入すると、温かいお湯が出てくる。安全を考慮して50度位の温度になるように調整する。これを魔法ぶっくに定着して、この魔法陣を石盤に定着する。また、この魔法陣は、吹き出し口が湯に浸かると止まり、湯が引くと再び出るようにした。浴槽が溢れないための仕掛けである。
この魔法陣を建物上部に作り、それからお湯の配管を各男女湯へ導き、浴槽へは湯を掛け流しにし、各洗い場の蛇口は水とお湯の二つがあり、水を混ぜて温度を下げることができる。木の手桶を十個くらい男風呂、女風呂に置いて完成である。
建てた家にも屋上の貯水槽の横にお湯の貯水槽を作る。配管を新たに追加し、一階、二階の各部屋へ接続する。接続し終わった後、パン工房に行ってソフィアさんに入浴施設が完成したことを報告すると、見たいと言うので、一緒に見に来た。
「男女が分かれているのですね」
ソフィアさんが僕に聞いてくる。
「はい、そうです。じゃ、中を見てみましょう」
と、僕は男湯に案内する。
「こちらで服を脱いで裸になり、僕が木の皮から作ったこの布を持って、この扉をあけて、風呂場に入ります」
僕は扉を開けて、ソフィアさんをお風呂場に案内する。
光の魔道具で明るいうえに、大きなすりガラスの窓で眩しいくらいだ。湯気が上がる透明なお湯が湯舟の中でキラキラしている。
「この大きな湯舟に入るには、この手桶で掛湯をして体の汚れを落としてからはいることになります。また、汚れが気になる人は、いきなり、湯舟につからないで、まずこちらの洗い場で、体についている汚れを落とします。
やり方は、石鹸を塗り付けたこの布で汚れた体を擦ると泡が出ます。その泡をお湯とか水とかで洗い流します。
それから、ゆっくり湯舟につかるというのが良いかもしれません。大きなお風呂というのは開放感がありますので、気分的にゆったりとできると思いますよ。また、お湯は常に出続けていますので、少々、汚くなっても数時間経てば、また、自然に綺麗になっていると思います」
僕は得意げに話す。
「本当に大きなお風呂で気持ちよさそうですね。私達の家には作らないのですか?」
ソフィアさんがもじもじとしながら言うと、
「いや、実はもう、用意しておりまして、屋上になりますが、これよりは一回り小さいのですが、既に作りました。今日は星を見ながら、ご一緒できないかと、お誘いするつもりでした」
と僕も俯きがちに答える。
「そうですか、楽しみですね。うふふっ」
とソフィアさんが答える。
「あー、そういって頂けると僕も嬉しいです」
また、なんか、変な雰囲気になってきた。
「使い方を村長の息子さんに説明にいきましょうか?それとも、村長がいいのかな」
僕が言うと、
「村長の息子は今、ロベルトと王都に行っています。村長が良いのではないかと思います。それと、村長の息子の奥さんにも来てもらいます」
とソフィアさんが言い、僕はその意見に同意して入浴施設を離れた。
僕は村長と村長の息子の奥さんと一緒にまた入浴施設に来ている。
「また、大そうな施設を作りましたね。そうですか、お風呂ですか?拝見します」
と村長が言い、僕が村長を男湯に案内した。そして、服を脱いで、木の皮で作った布を持って、お風呂場に行くように促す。村長はまじめに裸になると、布を持って、お風呂場の扉を開いた。その後を、僕、ソフィアさん、村長の息子の奥さんも続く。
「わぁー、これはなんだ。綺麗なお湯だ」
村長が子供のように浴槽に近づく。僕は慌てて村長を制し、
「村長、慌てないでください。まず、こちらの洗い場でこの布に石鹸を付けて、体から汚れをとってから、浴槽に入ってください」
「なるほど、そういう訳か。これは石鹸というものか?これをこの布に擦りつけて、この布で体を洗うのか?オー、泡だって面白いの。背中は、アーこうやって、伸ばして洗うのか、いいの。それで、この泡をこの水かお湯で流すのか?お湯でやってみるか」
村長は風呂桶にお湯を入れて、石鹸を洗い流す。
〝バシャー〟
「これだけでも気持ちいいの。それから、浴槽にはいるのか?少し熱いなぁ。ゆっくり、入ろう。あー、あー、気持ちがよい。このまま死ぬかもしれん。あー、でも、生き返る。気持ち良い」
と、村長の独り舞台が続いた。
「村長、そんちょー。大丈夫ですか。あのー、後でもう一度、ゆっくり入ってもらってもいいので、そろそろ、感想をいただけないでしょうか?」
「うーん、良い。良いが、このままじゃ、だめだ」
「何がいけないのでしょうか?」
「儂の家が村にあって、すぐに利用できない。それが問題じゃ」
「それであれば家ごとこちらにきますか?私が手伝いますよ」
「だめじゃ、儂は村の村長だ。村にいないといけない。それが掟じゃ」
「ウーン、それじゃ、難しいですね。でも、一時的に、息子さんが王都に行っている間だけ、物騒だという理由で息子さんの家にいるか、僕の家にいるというのはどうでしょうか?」
「僕の家?」
ソフィアさんの素早い反応に、
「僕らの家で息子さん家族を守るのも村の役目かもしれませんよ。お願いします」
と言いなおしてみた。
「そ、そうか、婆さんと話してみよう」
と村長は裸のまま決心したようだ。それからは、早かった。村長はすぐに風呂から上がると風の魔道具で体を乾かしながら、服を着ると、村に駆けて行った。
残された僕は、ソフィアさん、村長の息子さんの奥さんに洗濯場の使い方も説明し、お風呂を一度、使ってみてくださいと話をして離れた。定期的に僕がクリーンの呪文をかければ、ほぼメンテナンスフリーとなると思っている。
しかし、ソフィアさんに言われたようにこの風呂施設の管理も誰かにお願いしないといけない。
まだまだ、前途多難だ。




