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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第71話 新しい開発

 移住はさらに進む。

 今日は六軒ほど移住し、残りが十軒となった。村長とその息子の指示により、家を配置していくと村人が動き出し、なんとなく、新しい村の様相が整ってきた。

 ロベルトさんに新しい鉱脈を見つけたことを話すと、早速、村長、村長の息子とロベルトさんで確認しにいく。村長とその息子が鉱脈を確認すると、かなり有望ということで、早速、掘削作業の段取りをしに、息子はアイデンスタッドの街へ、村長はアイデンドルフの村へ帰っていった。


 ロベルトさんと僕は、アイデンスタッドに戻った。その帰りに、王都へのトンネルの話をした。すると、ロベルトさんはすぐ反応してくる。

 「王子、凄いことです。この村は今までは王都から二日かかります。それから、積み込みに一日、それから王都へ行くのに二日です。これが短くなり、また、新しい鉱脈からの鉄と石炭を頻繁に送れるようになれば、村にも人が集まり活気がでてくるでしょう。素晴らしい事です。直ぐに案内してもらえますか?」


 ということで、再度、村に戻り、村の坑道から滝側に十数m寄った位置に土魔法で隠した入口を魔法解除して開く。そこから、光の魔法陣で灯りをつけながら、小一時間歩くと、出口に着いたので、こちらも土魔法で解除して、出口を開ける。外の光が眩しい。それから、小道をしばらく歩くと街道に出た。

 「これが王都へ続く道だと思います。多分、あちらに遠くに見えるのが王都かと」

 僕ははるか彼方に城壁と尖塔が見える王都らしき位置を指さす。ロベルトさんも眺め確認すると、

 「王子、あれは王都です。間違いありません。距離はありそうですが、こちらからは下りなので思ったより近いかもしれません。この道を、もう少し、広い道にできますか?そうすれば入口に門番を配して、出入りを監視するように村長に人を手配します」

 「分かりました。早速、やりますので、ここで、待っていてください」

 僕は周りの木をサーキュラーブレードで切り倒し、木をインベントリに格納しながら道を広げる。土魔法で切り株を取りだし、切り株もインベントリに入れて、最終的に道を広げて終わる。

 「ロベルトさん、こんなもので良いでしょうか?」

 「十分な広さです。流石に早いですね。土木工事は王子の手にかかると一瞬ですね。この通路を使って、どれくらいかかるか、明日、テストしてみます。扉を閉めて閂をしておきましょう」

 僕らは街へ引きあげる。


 魔道具を作りながら、ソフィアさんと会話する。

 「フローラさん達は時間がかかっているようですね」

 「王都に帰るのに二日。商会と学院に報告してから、第一王子と会うための日程調整。打診。帰ってくるのに二日と考えると、あと数日は彼女達は帰ってこないですよ」

 「そうですか、まだ、そんなに経ってないんですね。移動に時間がかかるのも大変ですね。移動手段が馬車しかないのも不便ですね」

 と言いながら、乗り物が馬車しかない現状を変えてみたいとふと思った。昨日の話から急激な変化は望まないとソフィアさんに言われたことを考えて、ソフィアさんに尋ねた。

 「もし、僕が新しい乗り物を作ったら、皆さんは驚くでしょうか?」

 「そりゃ、驚きますよ。でも、王子しか乗らないであればいいんじゃないでしょうか?王子だったら許される雰囲気もありますし、住民が使えなければ許されるような気がします。ところでどんな乗り物を考えているんですか?」

 「車輪のない馬車です。厳密には車輪のようなものはあるのですが、車輪のようなもので浮かんで進みます。僕はそれに乗ってこの世界にやってきました。完全に再現はできないと思いますが、それに近いものができるのではないかと思います」

 「そうですか、面白そうですね。出来たら、私も乗せてもらえますか?」

 「もちろんです。ただ、最初は安全性に不安があるので、安全が確認できるまでは待っていて下さい」


 僕には新しい目標ができた。

 乗り物を作るのだ。


 この世界にいる人の生活を大きく変えない程度であれば、そして、異世界から来た僕以外に使えないのであれば、それは特に問題にならないだろう。僕は、火の魔道具の生産予定分を作り終えると、独自の乗り物の開発の構想を考え始めた。


 考えた乗り物はドローンである。ドローンは、四つのプロペラで空中に浮き、回すプロペラの角度を調整する事で前進、後進、左右への移動を行う事ができる。プロペラは三次元プリンターで作れると思うが、このプロペラを回すモーターを作る必要がある。モーターは磁石とコイルの開発が必要で、おまけに回す動力源として電気が必要だ。また、プロペラの角度の調整する微細な制御も必要である。開発すべきものが多すぎる。

 困った。

 最初から挫折である。


 しかし、この世界は魔法の世界である。

 何か、応用できないか考えてみる。

 やはり、空中に浮くということは、風か。

 風を下に吹き出して、空中に浮く。後ろに風を吹きだして、前に進む。後ろに吹き出す方向を変えて、方向を変える。こういうイメージで考えたらどうだろう。

 具体的には、自動車のように前後二ヵ所の計四個の車輪の位置に、風魔法で風を吹き出す魔法陣を設置し、後方にさらに風魔法の魔法陣を設置し、それで風を吹き出し推進する。

 後方の風魔法陣からは、左、中央、右と三か所の風を吹き出しを用意する。吹き出しを組み合わせることで、中央だけの吹き出しで真っ直ぐゆっくり進み、三か所の全部吹き出しで、高速で真っ直ぐ移動、左のみで右急回転、左、中央で、右緩回転、右のみで左急回転、右、中央で、左緩回転ができるような設計としたらどうだろう。


 僕は魔道具工房を出て、前の広場で、三次元プリンターで材料に木材を指定して、オープンカーの形状を作った。

 単純に風が吹き出すだけの魔法陣を作成し、前後二ヵ所計四個設置。また、車体後部に三つの風の吹き出し口を用意し、この三か所にも吹き出すだけの風魔法陣を設置する。設置した魔法陣を右手で操作できるように、それぞれの魔法陣から魔力線を魔法インクで描いて丸く黒い〇を運転席のダッシュボードに四つ作った。

 小指から魔力を流すと、四つの車輪部の風魔法陣が動作して浮き上がり、後ろの三つの魔法陣は人差し指、中指、薬指に対応する。

 なんとなく試作が完了した。

 試運転だ。


 小指から少しずつ魔力を送る。いきなり高く舞い上がる可能性があるためだ。しかし、運転席側に傾いた感じで、運転席側が重くて浮き上がらない。自分の体重を考えないと、バランスが保てないのだ。

 困った。

 小指の魔力を止めて、着地する。

 最初から挫折である。

 考える。

 飛行機では重心をセンターに動かす機能があると聞いたことがある。僕が座る運転席の対角の後方隅の位置に、インベントリから岩を少しずつ置いていき重心をとる方法を思いついた。

 再度、テストだ。

 小指から少しずつ魔力を送る。運転席側の傾きに応じて、運転席の対角のトランク位置にインベントリから岩泥を取りだして置いていく。次第に運転席側の傾きが修正されてきて、浮いている感じがするようになった。

 傾いているのかもしれないが、浮いている。最終的には水準器を付けないとどの程度傾いているのかは分からないので、後で取り付けることにしよう。

 ともかく、浮いた。


 次は、小指から魔力を流したまま、中指から魔力を少しずつ送る。

 おー、ゆっくり進み始めた。

 その状態で、人差し指から魔力を流す。

 おー、右に曲がる。

 人差し指からの魔力を止める。

 真っ直ぐ進む。

 次は薬指から魔力を流す。

 今度は左に曲がる。

 薬指からの魔力を止める。

 真っ直ぐ進む。よし、今度は、人差し指、薬指から魔力を流す。

 全速前進である。少しずつ速度があがってくる。いいぞ。上手くいっている。かなり速く感じる。風が気持ち良いが、フロントガラスが無いので目を開けていられなくなる。大体改善点も分かった。よし、止まろう。

 止まる?

 ふと、気づく。車を止めるにはブレーキだ。しかし、浮いている車に車輪はない。困った。止める方法がない。

 よく考えると無い訳ではない。何かにぶつかったり、浮くことを止めて強引に落下して止まることはできる。

 しかし、何かを壊して僕が怪我する可能性が高い。困った、困った、こまった。この世界に来た時、乗って来た車は魔物にぶつかって大破して止まった。そういう運の良さがあったのだと考えながら、車はあてもなく進んでいく。

 なぜか、いつもこうだ。

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