第68話 伐採に魔法を使う
翌日、ロベルトさんが木材の話を持ってきた。
木材は村の外れで伐採することができるということだった。早速、木材の収集に行きたかったが、ロベルトさんが、屋敷の進捗を確認したがった。ソフィアさんも付いてきて、ロベルトさんに、綺麗になった床、壁、窓ガラスで明るいホールを紹介した。
「王子、これはどういうことですか。綺麗で明るい、王都でも見たことがないホールができています。昨日とは、すっかり、変わっていますが……」
ロベルトさんが驚いている。驚いているロベルトさんの声に、悪い顔しているソフィアさんがにやにやして僕を見ている。
なんとなく、意図が分かったので、
「ロベルトさん、お風呂も作ったんですよ。そちらも見てもらえませんか?」
「お風呂ですか。贅沢ですね」
「こちらです」
と言って、階段を上がって、最初の部屋に入る。
「大きな扉と明るい部屋ですね。ここは誰の部屋でしょうか。まだ、決めていないのですか。私にも一部屋、いただくことは可能でしょうか。そ、そうですか。ありがとうございます。この部屋で十分です」
ロベルトさんの部屋に決まった部屋で、お風呂場の蛇口をひねる。綺麗な水が出てくる。
「これは川から引いてきた水をろ過して上水として使っています。これをひねると水が出ます。逆にひねると水が止まります。ためた水を火の魔道具で温めて使うお風呂を考えていますが、温め専用の魔道具も未開発ですし、体の汚れをとる石鹸もできていないので、今はクリーンの魔法の方がまだ便利です」
「私は体の汗が流せれば良いのでこのままでも問題ないですよ。でも、ひねると水が出るのは凄いですね。それに逆にひねると水が止まるのも便利だ」
と、ロベルトさんが言う。
「そうか、シャワーヘッドを作ればお風呂に水をためなくても体の汗は流すことができますね。今日はそれを取り付けましょう。ロベルトさん、ご指摘、ありがとうございます。
ところで、新しいトイレを作りましたので、感想を聞かせてもらってもいいですか。こちらになります。
こうやって座って用を足すのです。終わったら、このレバーで汚物を水で流しますので、清潔が保たれますし、匂いも残りません。
その後は、この魔石ボックスをここに設置するとお尻を洗うことができ、こちらにセットすると乾かすことができます。どうぞ、やってみてください」
僕はロベルトさんに説明する。
「見ているとできないと思うので、見えないところにいますね。何か、分からないことがあったら、声かけてください」
と言って、僕とソフィアさんはロベルトさんから離れる。ソフィアさんは僕の顔を見てにやにやしている。すると、
「ひゃー、王子、助けてください」
と、ロベルトさんの叫び声が聞こえてきた。ソフィアさんが僕に囁く。
「王子も人が悪いのだから……」
いや、そういう風に差し向けたのは貴方でしょうとは言えない。
「大変な目にあいました。でも、気持ち良いものですね。くせになりそうです。毎日、使っていいですか?」
とロベルトさんのトイレの感想である。
僕はロベルトさんと木材の伐採地へ向かっている。
「どうぞ、あの部屋はロベルトさんの部屋なので、ご自由にお使いください。後で、シャワーヘッドもつけておきますので、シャワーも使ってください」
「私も村の管理の任務がなければこちらに移住して、王子をお守りするのですが、領主代理としては村を離れることができません。
そうか、村には門番だけを残して村民をこちらに移住させれば、私は領主代理としてここで住むことができる。王子、村民はここに住むことができますか?」
「大歓迎です。僕とソフィアさんしかいないので、増えるとにぎやかになって楽しいかと思います。住む所はご用意します。そういう話であれば、俄然、やる気が出てきました」
「じゃ、村長とも話してみます。近日中には結論がでると思いますので、相談いたします」
村長さんの案内で伐採地にやってきた。
「ここの木々は村の管理とされていて伐採しても良いようです。何本くらい必要ですか。村の者に切ってもらいますけど」
ロベルトさんが言う。村の小さな畑の端の針葉樹の森が続いている入口にきている。目についたかなり太い木がいいと思い、
「あの木を切りたいのですがいいですか?」
「でも、あの大きさだと私一人では時間がかかるので、人を呼んできます。ちょっと待っていて下さい」
と、村長が言うと、僕は答える。
「少しだけ試したいことがあるので、人を呼ぶのを待ってもらっていいですか?」
僕は魔法で木を切れると思っている。
ファイアボールの火のボール代わりに刃物に近い形のものを風魔法で飛ばしたら大木も切れるはずだ。刃物から連想するのは、金属の刃であり、これは土魔法で作ることができる。
しかし、その金属の刃の重量を風魔法で打ち出しても、押す力が弱くて、良くて刺さるだけで、下手すれば木まで届かない可能性もある。そこで考えたのが、水魔法で水を凍らせ先端を削って刃を作り、それを飛ばすという方法である。
飛ばす刃は電動丸ノコの刃のように円形で、その周りにギザギザの刃があるものであり、これを速く回転させて、電動丸ノコの刃が飛んでいくようなイメージにする。木が切れなくても、回転が止まれば自然に氷が水になり停止するので後処理もなくていいし、その時は同じ魔法を繰り返せばそのうち切れるだろう。また、こちらに木が倒れないように、切れる寸前に風魔法で木を押してあげれば、こちら側に木が倒れず安全に切れるのではないかと思っている。
『天地の理に沿って、私は彼の的に打ち当てる』
「プレス・ウォーター・サーキュラーブレード」
体の前でできた回転している直径10cm程度の氷の丸いブレードを広げる。
「エンハンス・ブレード」
氷の回転する刃が直径50cm程度に広がり、空気を切り裂く音がする。
「ウインド・プッシュ」
で押し出す。
打ち出された氷の刃が先の大木に向かっていくと、スパッという感じで大木が切れて、その先の木も切れ、その次の木も切れて、次々と木が切れて小道ができていくようだ。慌てて、倒れてくる木に風魔法を当てる。
「ウインド」
こちらに木は倒れなかったが目の前は大惨事である。ずしーん、ずしーんと木々が倒れていく。体に響くような地響きがする。地響きが終わり、魔法の終了を確認すると振り返って、
「やってしまいました。加減が分からず申し訳ありません」
僕は呆然としているロベルトさんと村長さんの方を向いて頭を下げた。




