第66話 新魔道具開発
魔道具は光と火の魔道具が作れた。
また、何度も試作を行うことができるように何もない空間に魔法陣を作ることもできた。これを空間魔法陣と呼んだ。
新しく、覚えた空間魔法陣を使って、次の新しい魔道具も作りたい。
冷蔵庫は何となく出来そうだが、ただ、今、それじゃないような気がする。
そうだ、三次元プリンターはどうだろう。
三次元プリンターは、形状を三次元CADで描き、その図を基に、材料、素材を射出しながら、指定された図の通りの形状に生成するような仕組みである。
これを処理で分解すると、形状を描く処理があり、その図をメモリし、製作するための棒状になった材料を温め、メモリした図をなぞるように溶かした材料を射出、固める処理となり、簡単に構造物を作ることができる。
まず、図を描くにしてもコンピューターのような機械を今から作ることは無理だ。
すると、図はフリーハンドになる。いや、定規を使うにしても、紙と何度も書いたり消したりできる、鉛筆と消しゴムの組み合わせがないと綺麗な線がでない。
最初の元図を描くところでつまずく。では、実際に描くのでなく、頭に描き、想像して、そのイメージを魔法インクをのせた石盤に定着させた方が、魔法インクで描いた綺麗な図面ができると考えがまとまった。
そうすることで、一挙に形状を描いて、メモリするところまでの処理が完成する。
しかし、この石盤に定着するだけでは平面となるため、これを光の魔道具を使って、立体に投影する必要がある。
やってみよう。
定着させて図を光魔法で空間に投影する空間魔法陣を試作する。定着させるイメージはロベルトさんが住んでいる家である。この家のイメージをホログラムで立体化することを考え、やってみた。
一つの光源を二方向に分けて、位相をずらした光で投影し、参照光だけで立体映像を作ることができたが、このホログラム画像はあくまで二次元平面を立体として見せるだけで、実際の三次元データでないことに気づいた。これでは、画像をなぞることができない。
あくまでも必要な情報は三次元データなので、物体そのもののイメージを定着するのではなく、三次元フレームとして物体構造を扱えるように、フレームを構築する点のデータを定着させ、それを再生するような空間魔法陣として作成してみた。
試行錯誤を繰り返しながら、再生した三次元フレームの点のデータの数を調整し、やっと思い通りの赤い光の立体フレームが机の上に浮かびあがるようになった。
試作魔法陣を石盤に定着し、魔法インクでなぞり乾かす。これでロベルトさんの家のデータの魔法陣の完成である。
さらに、ロベルトさんの家のデータを拡張して、三階建てとし、屋上も作った。
次は土の魔法陣で、先ほど作った三次元フレーム通りに構造物を作る魔法陣を試作する。
ロベルトさんの家のデータの魔法陣を起動すると、机の上にロベルトさんの三階建ての家の立体フレームが表示される。
土魔法陣を試作し、ロベルトさんの家の石盤のデータが取り込めるように魔力線を試作土魔法陣につなぐ。
これで、作成するデータの入力はできた。材料は土魔法で送り込む。その先は、形状の作成だ。
作成に関しては、作成する物の形状の倍率を決めて、取り込んだ形状のパーツの位置情報を土魔法の魔力と魔素で包みながら、材料を送出していけばできるではないかと考えついた。
準備ができたので土魔法陣を起動する。
にゅるにゅるとどこからともなく粘土が机の上に出てきて、最終的には光の立体フレームに似た粘土の構造物ができてきた。
しかし、問題が発生する。二階の床が落ちて、構造物がつぶれてしまったのだ。
送出された時点で粘土がある程度固まらないと簡単に自重で崩れ落ちてしまうのだ。対策が必要だ。
そのため、対策として、送出と同時に材料を乾かす必要があり、包み込んでいる魔素を粘土の射出時にコーティングし、素早く水分を抜いて固める事にした。その改善を施し実験を何度かしなおすと、壊れずに光の立体フレームに似た粘土の構造物ができた。
上手くいった。
この魔法陣を魔法ぶっくに定着して記憶する。
最後は、実験で使った粘土のような棒状の材料を作る魔法陣の作成である。
ベースは材料系なので、土魔法の魔法陣で対応することを考えた。
この魔法陣では、材料の範囲を指定して、その指定した範囲を土魔法の魔力で覆い、その覆っている範囲から指定した素材だけを取りだす。その土魔法陣の出力を、新たに作成する火の魔法陣への入力として取り込み、火の魔法で溶かしこみ、柔らかくして棒状に出力する。
実際に、材料を抽出する土魔法陣とそれを溶かす火魔法陣を試作してみる。
両方の中心部を合わせて、入力と出力を合わせることにてこずったがなんとかできた。この試作の魔法陣を維持しながら、鉱山までの入口を作った時にインベントリに放り込んでおいた小さな岩を取りだし、この岩から鉄を抽出するように材料を抽出する魔法陣に手を加えて、両方の魔法陣に魔力を供給する。
すると、岩が砕かれ、魔法陣から赤い鉄の紐がにゅるにゅると数cm出てきて、コロンと落ちた。落ちた先の床が高い温度のため焦げながら、歪な形になって固まった。
『成功だ』
僕は、それぞれの魔法陣を魔法ぶっくに急いで定着する。
これで、溶融した材料の抽出が可能となった。
三つの魔法陣を石盤に定着して、魔法インクでなぞり乾かす。それを三枚重ねて、組み合わせ、三次元プリンターの魔道具を作った。これで、新しい家を作ろうと思う。
噴水広場の場所に行って、インベントリから大量に入っていた鉱山の岩石や泥を取りだし、大きな山を作った。この山から鉄成分を取りだすように、ロベルトさんの家のデータの魔法陣を動かし、その家情報を魔力線で三次元プリンターの魔道具につなぐ。
それから、構造物の倍率設定を行うと、魔道具に自身の魔力を供給して動作させた。すると、燃え上がるような赤い鉄が出てきて固まって、フレームを作っていく。鉄のフレームがロベルトさんの家の形になって、魔法陣が止まった。
次に川砂と鉱山の大きな山から、石灰石を取りだし、コンクリートを取りだすように設定して、再度、三次元プリンターの魔道具を起動する。打ちっぱなしの鉄筋コンクリートの三階建ての建物ができた。
半日で、家が一軒建った。自分で作っておきながら、信じられない。
昼食を食べながら、魔道具工場での魔道具作りはお休みとすることをソフィアさんに言った。
理由を聞かれたので、住む家を作っていると話した。話しているうちに、ロベルトさんの訪問があった。
「王子、広場に大きな頑丈そうな建物がありますが、あれはなんですか?」
「今、ソフィアさんに説明していたのですが、住居を作ろうと思って、新しく作り始めています」
「昨日はなかったようなのですが、あんなに大きな建物をいつ作られたのですか?」
「今日です。先程、形になってきました。今日は、午後も家づくりをしたいので魔道具工場はお休みとしました。一度説明したいので、ロベルトさん、ソフィアさん、一緒に見にいきませんか?」




