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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第59話 魔道具工場

 ほぼ完成した魔道具工房に魔道具製作の材料が運ばれてきた。

 いそいそと僕は動き出す。その横にはフローラさんの姿も。

 昨日からの話で、フローラさんが魔道具製作工場の立ち上げと僕のサポートを行っている。僕は職人さんにお願いして、魔道具製作のプレス機を二式作成してもらった。併せて、火の魔道具用の量産基板も用意する。これで、プレス機をライト、火の魔道具用で、それぞれを個別に量産することが可能となる。

 実際量産していくにあたり、今更ながら、手伝ってもらうフローラさんの能力を把握するために鑑定を行うことにした。

 「フローラさん、ステータスを見ても良いですか?」

 「良いですけど、ステータスってなんですか?」

 「えっ、知らないのですか?セバスさんも使われていたから、てっきり、ご存知かと思っていました」

 「あー、セバスはこの国の人間ではないので、知っているのではないでしょうか?私はこの国で生まれましたので何も分かりません」

 「そうですか、では、念のため、ステータスと呟いてもらっても良いですか?」

 「ステータスですよね。じゃ、言いますよ。ステータス」


 ステータス画面が目の前に表示される。

 NAME:フローラ・リセ・レバークレーゼン

 AGE:17

 職業:水魔術師

 状態:◎健康

 HP:150/150 MP:100/100

 STR:40 DEX:55 AGI:45 INT:60 VIT:60 LUK:60

 武器:なし

 防具:なし

 アクセサリ:なし

 スキル:算術、管理、交渉

 魔法:

  水魔法

  (ウォーター)


 「あれ、私、魔法が使えるの?」

 「そう、みたいですね。水魔法が使えるようです。フローラさんの能力があれば、魔道具を作成出来ると思いますので、魔力を出す練習をしてみますがいかがでしょうか?」

 「やりましょう」

 フローラさんからの返事を待って僕は話し出した。


 「魔力はお腹のおへそのあたりの魔臓にあります。その魔力を放出するためには、その魔力を血管に乗せて、掌まで持ってきます。難しいと思いますが、やってみましょう」

 フローラさんは、うんうん唸っているが、いまだお腹の魔力が光らず、動き出す気配がしない。やはり、強引にやるしかないか?

 「フローラさん、少し、辛いかもしれないですが、私の考える方法でやってみますか?」

 「お願いします。今は自身で解決する手段がありません。手伝ってもらえますか?」

 「分かりました。まず、この言葉を言って下さい。

 『天地の理に沿って、私は掌から水を出す、ウォーター』。

 『天地の理に沿って』は、ゆっくり自分を落ち着かせるように見えない魔素を自分の魔力で覆うことを考えながら、

 『私は掌から水を出す』で、掌から水を出すイメージを作って、

 『ウォーター』で右手を前に出します。

 その掌からお腹にある魔力を出すことを意識してください。その魔力に、水を作るイメージを載せます。その時、その手に僕がちょっと触れます。魔力の流れを感じて下さい。集中して、いいですか?やってみましょう」

 フローラさんは、呪文を唱え、力強く掌を前に出した。その小さな掌に僕の掌を重ねて、魔力を吸い上げる。しかし、彼女の魔力は動かない。

 強く、強く念じてみても動かない。僕の額には薄っすら汗がにじむ。このままではダメだ。方法を変えよう。

 「フローラさん、僕が強引に魔力の道をつくります。もしかして、気分が悪くなるかもしれないので、その時は言ってください」

 合わせた彼女の掌の血管から彼女のお腹にある魔力の道を作るイメージで僕の魔力を送り込む。あたかもカテーテル手術のような細い管を血管に押し込み魔臓の位置を探っていく。

 手から腕、肩、心臓、それから胃、その近くの魔臓へ。僕の細い魔力線が魔力の道を作っていく。しかし、魔臓の入口が開かない。

 「フローラさん、気分はどうですか?」

 「少し、気持ち悪くなってきています。でも、大丈夫です。我慢出来ます」

 次第に青ざめてきた顔で彼女は答えた。

 「魔臓を開きます。いきます」

 僕はフローラさんへ押し込んだ魔力の先を尖らすイメージで力を込めて、魔臓に突き刺す。

 「痛い、痛い、いたーい」

 こんなに痛がっているのに、やめるわけにはいかない。申し訳なさが胸をよぎる。

 「強くいきます。だいぶ、開いてきたと思います。うーん、えい」

 と掛け声と同時にさらに強く魔力線を突き刺す。じんわりと温かい何かを感じると同時に、軽い反発を受ける。異なる魔力の反発である。

 「繋がりました。よく、頑張りましたね」

 と、声をかけると、彼女は僕の方に倒れ掛かってきた。受け止める。

 「すみません。体に力がはいりません。しばらく、このままにしてもらっていいですか?」

 フローラさんの金色の髪が僕の胸の中で揺れる。速くて浅い呼吸が胸にかかる。

 「大丈夫ですか?」

 「無理言ってすみません。もう少し、このままで」

 彼女の呼吸がどれくらいだろうか、収まってきた。彼女がやがて僕の胸を手で押して、一定の距離をとる。

 「何か、変な気分ですが、大分よくなりました。でも、まだ、頭の中がもやもやしています」


 「もう一度、魔法使ってみますか?」

 「やります。やってみます」

 フローラさんは苦しいと思うが、心が折れていなかった。

 「今度は、掌から水が少しでてくるイメージでゆっくりと詠唱してみてください」

 僕が言うと、フローラさんが、呪文を唱える。

 「天地の理に沿って、私は掌から水を出す、ウォーター」

 フローラさんは、ゆっくりと詠唱する。フローラさんのお腹のあたりが光り、魔力が溢れ出てくる。心臓から肩、腕に魔力が流れてきて、フローラさんの小さな掌に集まる。

 〝ウォーター〟の声に反応して、少し水が出てきて、床に落ちる。

 「出来ましたね」

 「上手くいきました」

 「よかった」

 「よかったです」

 フローラさんが弾んだ声で言う。

 「頭のもやもやがとれてきた感じがします。それと、うれしい気分が溢れ出てきます。さらに魔法を使いたくて、使いたくてしょうがない気分です。また、やってみてもいいですか?何度もやらないと忘れそうで怖いのです」

 「いや、フローラさん、落ち着いてください。それは魔力が枯渇するパターンです。落ち着きましょう。まだ、魔力回路は開いたばかりです。体の別のところを痛める可能性もあります。もう少し、ゆっくりやりましょう」

 「わかりました」

 フローラさんはしぶしぶうなずいた。


 フローラさんが魔力持ちだと分かり、また、使えるようになり、僕は、作ってもらった魔道具のプレス機の使い方の説明をする。プレス機のそばには、パレットに入った魔法インクと刷毛がある。

 「この板の穴に新しい石盤をはめて、押し付ける板にある水晶の基板の表面を魔法インクが付いた刷毛で塗ります。

 次に、プレス機の先の取っ手を持って、塗り面を新しい石盤に押し当て軽く押し付けます。それから、水晶の基板の魔法陣の裏に魔力を込めてください。上手くいくと水晶の基板から透けてキラキラした線が見えますので、押し付ける板を上げて、石盤を取り出すと、ベースの基板の作成完了です。

 この要領で何枚か作っていただくと助かります。作業のコツと言うほどの事ではないのですが、刷毛にはたっぷりめのインクをつけた方が良いようです。不要なインクは、プレス機の根本のところに溜まるので、偶に溢れそうになったら、魔法インクが入っているパレットに戻してください」


 フローラさんはライトの魔道具のプレス機を使い出した。

 転写の魔法陣には必要な魔力しか使わないような制限をかけているので、現在の彼女でも200枚程度は作れるはずだ。彼女が黙々と作業している横で、僕は火の魔道具用のベース基板を作成していく。

 目標が火の魔道具を200枚、ライトの魔道具を100枚、魔石ボックスを600個だったので、上手くいけば10日程度で完成する。

 彼女が魔力を放出する度に、僕はインベントリに違和感を覚えるようになった。インベントリ内のアレクサンドライトの石が光るのだ。放出が止むと光が消え、放出が始まると光りだす。この奇妙な違和感が何か分からない。僕はインベントリからアレクサンドライトの石を取りだす。

 彼女の魔力に反応する石を彼女に見せると、

 「不思議ですね」

 と、彼女が呟く。彼女の手がアレクサンドライトの石に伸びて、触ると光の輝きが増す。

 「わーっ、眩しい。あれ、変です。変なものが頭に侵入してきます。わー、助けてください。石から手が離れません」

 慌てて彼女の手から石を取り除く。

 彼女が大きく深呼吸を繰り返す。心配で彼女の顔を見ると、やがて落ち着いたのか、僕を見つめ返す。

 「王子、私の使命が分かりました。私は貴方を支え、ともに生き、ともに死す運命だということです。

 あの石が私に話しかけてきました。

 『支えて欲しい』と。

 私は石に聞いたのです。

 『なんで私なのですか』と。

 石は答えました。

 『それがあなたの運命だからだ』と。

 私はすべて分かった気がしました。それをずーっと忘れていたことを分かったのです。

 王子、あなたは私の運命の人なのです」

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