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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第58話 同居人増える

 夕食である。

 なぜか、フローラさんが食卓にいて、食事を楽しんでいる。先ほど、ゲストルームのベッドをソフィアさんの部屋に持っていくよう頼まれ置いてきた。

 そこにソフィアさんとフローラさんが一緒に寝ることになったということだ。フローラさんは馬車で寝るはずだったのでは、と、余計な詮索はしない。それが、関係円満の秘訣だ。


 マチルダさんとの約束で僕は攻撃魔法が使えないことになった。今以上に僕の身が危険になるというからだ。そして、本当に守るべき人が出来た時に使うという二人だけの秘密になってしまった。ソフィアさんには、マチルダさんに教えてもらったが、出来なかったと報告するのは悲しいことだ。

 しかし、ソフィアさんも魔法を使えないということから国の軍への召集がなく、教育者として残されたとのことだ。その事も踏まえると出来ないというのは皆を安心させる事なのかもしれない。

 また、軍人をしている長男を心配するマチルダさんとしては新たな心配事を増やしたくないとの説得もあり、僕を大事にしてくれるマチルダさんの気持ちが嬉しく、また、この人達を大切にしたいという思いも強くなったと思う。


 僕のライトの魔道具は食卓のテーブルで光っていた。

 また、廊下にも、台所でも光っているとのこと。夜なのに明るいためか皆の顔の表情も明るい。その中で、フローラさんは次のビジネスも考えているようだ。フローラさんが話し出す。

 「ヒロシ様、私もこの家にいるときは、王子と呼んでいいですか?」

 いきなり、悪戯っぽい笑顔を僕に向けて言い、言葉は続く。

 「その方がこの家族の一員となった気になれますからね」

 僕の意見などきかず、それを皆に了承させた。さらに、言葉は続く。

 「それでは、早速ですが、魔道具に関しての私の感想を言います。

 王子が作った灯りの魔道具は便利ですね。実は、私は火の魔道具より、灯りの魔道具が売れる気がするんですよ。この魔道具が普及すれば、家の中の暗がりがなくなり、昼と変わらないくらいに動けます。

 ミーナさんも言われてましたが、ダンスの練習も出来るようになったり、夜に編み物や裁縫も出来ますし、私は本も読めますし、勉強も出来るようになります。普及していけば、夜が寝るだけの生活から変化していく気がします。

 私は家外でも使えるこの灯りの魔道具を組み込んだ設備を考えております。これを道に設置すると夜の道も明るくなり、馬車も安全に走らせることが出来ます。暗い人目がないところで起こる犯罪も減る可能性があります。私はこの設備を使って、街を明るく安全にする商売をしたいと思っているのです」

 日本にあった街灯を普及させたいということか?僕はそう受け取った。そして、彼女の話をフォローするように発言した。

 「なるほど、素敵ですね。街が夜明るくなれば、人々は家にいないで、街を歩きだしますね。

 広場に設置すれば、昼と同じように市場を開くことが出来ます。

 噴水広場夜市とか銘打って、食べ物の屋台とか野菜、果物や雑貨を売るお店を集めて、マーケットを作ると楽しいかもしれませんね。

 王都にくる楽しみが出来るでしょうし、良い宣伝になると思います。

 また、道への設置は、王都の行政か治安部隊への売り込みが有効かと思います。安心に暮らせることで王都には人がさらに集まってくるでしょう。

 人が集まれば、新しい商売も出てきますし、税収もあがります。

 それに、設置台数が増えれば、それを管理する組織も必要ですし、その組織を運営するとなれば、その商会には多くの雇用と莫大な利益が約束されると思います」

 僕が言うと、フローラさんが間髪を容れず、返答する。

 「そうか、そうなのね、私に足りないのはそれだわ。物は売ったら終わりだけど、次に売ったものを管理する仕組みでお金をもらうことが出来れば、売った分だけ商売になるのね。ありがとう、王子。新しい目標が出来ました」

 フローラさんの新しい目標ってなんだろう。フローラさんが続ける。

 「今日、工場は大体出来たので、明日には材料を搬入します。工場は明日から稼働出来ますので、よろしくお願いします」

 「分かりましたが、早すぎないですか? でも、明日から魔道具の製作作業が出来るということですね。あの、明日もまだ、職人さんはこられますか?」

 僕がフローラさんに尋ねると、

 「何でしょうか? 細かい棚が出来ていないので、職人は明日も来ますが……」

 フローラさんが答え、さらに僕は言った。


 「作っていただきたいものがあるのです」

 僕は、量産用の水晶で出来た基板をインベントリから取りだす。

 「実はアルベルトさんとの打ち合わせ時にはお見せしてなかったのですが、この基板が量産用のライトの基板になります。この基板のこの面に魔法インクをのせ、新しい石盤に押し付けて、上から魔力を流すと、ライトの魔法陣が転写され、本体部が作成出来ます。

 この作業を簡単にするために、量産用の基板を固定する丸い穴が開いた板と、魔法陣を作成する石盤を固定する板を作って欲しいのです。さらに、この板同士の端を蝶番で固定して、量産用の基板が固定された板を上げて、刷毛で魔法インクを塗って、押し付け、魔力を流して、転写していくような機械としたいのです。これが数台作ってもらえれば、比較的に楽に量産出来るようになります」

 僕はフローラさんに石と石を挟みこむようなワッフルメーカーのようなものを作ってもらえないかと話をする。

 「なんとなく分かりました。明日、職人にお願いするとします。その機械は王子しか使えないのですか?」

 と、フローラさんから問われる。

 「いえ、魔力のある人であったら扱うことが出来ます。最終的には魔石ボックスに対応して、誰でも作れるようになると思いますが、そこまでは、現時点では考えておりませんので、当面は魔力持ちの学院の生徒さんにお願いすることになると思います。どうでしょうか、オルフェス先生?」

 と、いきなりオルフェス先生にお願いする。

 「そうだね。私達家族もマチルダ、アンナでポーション、ソフィアとミーナでパン工房、私は別として、王子の魔道具の製作をサポートする人が現在はいない。当面の製作担当は王子一人になる。

 最初は、アンナ。それから、ソフィアを考えていたけど、それぞれ、別の役割を担うことになったから、現在、王子の魔道具製作をサポートする人がいない。学院で良い人材がいる?マチルダ」

 「うん、何人か候補はいるけど、まだ、これと言った人はいないわよ。実習と称してやらせてみる?」

 「それも案としては考えていきたいけど、今日、明日では対応出来そうにないな。ソフィア、アンナ、どうかなぁ。君たち以外で協力してくれそうな人はいる?」

 「どう、アンナ。私はいないわ」

 ソフィアさんが言うと、

 「私もいない」

 アンナさんは元々人付き合いが得意でないのか、ぶっきらぼうな感じで答える。そんな中で、フローラさんが口を挟む。

 「私がいます。私は王子に助けられました。それに対してのお返しも出来ておりません。私が明日から魔道具作りをする王子に協力します。私が作り方を学べばそれだけ、その工程にあう最適な人材を私達商会のネットワークから見つけることが出来ます。

 王子は考えられていないと思いますが、王子が生み出す魔道具はこの世界を変えていくでしょう。この変化を生み出す中心に私がいるのは最高の気分です。

 そして、その販売により集まる富をどうするのかも考えていかないといけません。

 私はそのことに関しても王子と一緒にやっていけると思っております。明日からは王子の世話を含めて、私にお任せください」

 フローラさんが小鼻をふくらませて、胸を張る。偶に出来るエクボが可愛い。

 「ダメです」

 ソフィアさん、アンナさん、マチルダさんの声が重なる。

 「そんなこと言って、お前たち解決する方法があるのか?ないよね。このまま、酷使すると王子は確実に倒れる。今回はフローラさんにお願いしよう。

 我々はそれぞれ新しいことをやる必要があって、正直、王子にいつも構っていられない。魔道具製作が軌道に乗るまではフローラさんにお願いしよう。そのうち、我々も新しい製作にも慣れて、時間がとれるようになるだろう。それから、我々が王子と新しい事を考えても良いはずだ」

 オルフェス先生がそう言うと、

 「ところで、オルフェス、あなたは何をするの?」

 と、マチルダさん。

 「うん、さっき、フローラさんも言っていたが、集まる富の使い方を考えている。学院を大きくすることも考えていたが、それより前に王子を中心としたアレクサンドの街を作りたいと思っている。その街は、この国の法、制度にとらわれない自治の街となる。でも、今、それは絵空事かもしれない。また、すべてが上手くいかないと何も出来ないが、その時に考え始めては遅い。だから、今から準備している」

 「具体的に何か、案はあるの?」

 と、マチルダさん。

 「王都から離れた海沿いの場所を考えている。いつかは、私達祖先が生まれた土地に出て行くためだ」

 オルフェス先生が視線を遠くにして話す。

 そんなオルフェス先生の決意のなか、そんなに期待してもらって大丈夫だろうかと考えてしまう僕がいた。

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