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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第57話 ファイアボール

 工場建設現場に戻ってくると、不思議なことに建設する人数が増えて、箱みたいな家が出来ていた。傍らでフローラさんがニマニマしていた。また、その横には、パン工房の間取り位置に建築資材が置いてあり、この数時間に何がおきたのかと思えるような早さだ。


 「フローラさん、これは早すぎないですか?」

 「はい、最速でやっています。ただ、お父様からの指示があったときから、大体の規模感で用意しておりました。後はタイミングだけでしたので、私は何もしておらず、掛け声をかけるだけでした。ふふふっ」

 「そうですか、その割には、この場で言ったことにも対応されていると思うのですが……」

 「気のせいかと思いますよ」

 フローラさんがそう言うと、さらに言葉を続けた。

 「あと、私がわがまま言ったこともありまして、オルフェス先生もご了承くださったのですが、ヒロシ様の住まいの隣に私の部屋を作りまして、工場の生産が軌道に乗るまで泊まり込みとなりました。そちらもよろしくお願いいたします」

 と、ペコリと頭を下げる。

 「えー、どうしてそんなことをするんですか?」

 僕が言うと、

 「心配性なんですよ。投資した資金が戻ってくるのかとか、命の恩人が大事にされているとか、色々確認しておきたいのです」

 フローラさんが答え、さらに、続ける。

 「今日はさすがに難しいので馬車での泊まり込みになります。一旦、帰って、馬車でお邪魔します。ご心配なさらず、こういったことは旅では慣れておりますので」

 僕は固まってしまった。


 離れに戻った僕は、フローラさんのことを忘れようと、ファイアボールの魔法陣を解析に熱中した。

 転写出来たことで半分は使えるのでは無いかと思っている。僕からフローラさんの話を聞いたソフィアさんは、フローラさんの扱いでオルフェス先生に抗議というか、話し合いに行っている。フローラさんからは既に決まっていた感じがあったので、簡単に覆ることは無いように思える。ソフィアさんの感情的な問題なのかもしれない。


 ところで、ファイアボールである。

 仕組みとしては何となく分かった。火の魔道具の延長で、火をつけたままの魔道具を投げつけ(別の力で押し出し)、衝撃と同時に別のところにある振動を感知する回路で、魔素を急激に圧縮し、それに点火することで爆発という威力を出す仕組みのようだ。コレはまるで花火である。花火と考えれば、最初から燃えている火の玉なんて必要ない。

 プログラムとして考えると、まず、目的物へ到達するまで魔素を吸収しながら圧縮し、衝突を感知すると圧縮した魔素を爆発するモジュールを考える。初期化処理では、魔素圧縮する回数とどれくらい魔素を吸収するかの範囲設定である。メインのループ処理では、何かに衝突するだけのチェック。衝突を確認したら、魔素に火魔法で点火する。プログラム自体はそこですべて破壊されるので、ループを抜けるというより暴走して終了という感じか?なので、終了処理を加えても実行されないので不要と判断する。

 あと、このモジュールを押す力だが、僕の場合は、風魔法でこの火魔法を押すというか、風に乗せて行けば実現出来るのではないかと考える。

 その時、閃いた。


 風の力で押すにしても、物体の大きさとして認識出来ないと余計なところを押すと無駄が出るし、速くするためには適格な場所を強く押す必要がある。それを解決するには、火を燃やして、この火の範囲を押すのが効率よく、速く、遠くまで飛ばせることになる。だから、火の玉として魔法を実体化する必要があるのだ。なるほど。

 そのため、ループ処理に円形に火で魔素を燃やすという処理を加えて、火の玉として実体化させ、それを、風魔法で押すということだ。

 わかった。

 やってみたい、実験したい。

 僕は飛び出した。

 

 僕は訓練所にきている。

 マチルダさんが先ほどファイアボールを使ったところだ。魔法を使ってみたい。ファイアボールのイメージを浮かべて、ソフトボールくらいの火の玉を作成する。

 『天地の理に沿って、私は彼の的に打ち当てる』

 「ファイアボール」

 体の前に出来たファイアボールを

 「ウインド・プッシュ」

 で押し出す。

 『野球のバットでボールを打った感じか』

 しかし、方向が定まらなかった。狙った正面の的でなく、横の的のその脇を逸れた。その先の壁にぶつかると大きく爆発した。

 〝ド、ドーン〟


 うん、威力は問題なさそうだけど、飛ばす方向が上手くいかない。

 再度、試す。

 『天地の理に沿って、私は彼の的に打ち当てる』

 「ファイアボール・ウインド・プッシュ」

 今度は、水平にはずれなかったけど、的の手前に落ち、爆発する。

 〝ド、ドーン〟


 的の手前にすり鉢状の穴が出来る。

 『まずいな。制御がうまく出来ない』


 考える。

 銃は的に向かって照準を合わせることで正確な射撃を行うことが出来る。ということは、目の前に火の玉を出して、その位置から風の力で真っすぐ押すことでまず、届く位置を決め、それから、少しずつ調整していく方法が考えられる。

 いや、その前に、目の前じゃなくても、風魔法で風の管を的まで作り、その風の管の中に火の玉を押し出せば、確実に的に当たるのではないかと考えた。いわゆる、風魔法で銃身を作り、その銃身の中に弾の代わりに火の玉を入れて、強烈な力の風魔法でさらにプッシュするという方法である。

 僕は風魔法の膜を伸ばすだけ伸ばすと、魔素を圧縮しながら、風の銃身を作る。


 『天地の理に沿って、私は彼の的への道をつくる』

 「ウインド・チューブ」

 それから、ファイアボールの呪文だ。

 『天地の理に沿って、私は彼の的に打ち当てる』

 「ファイアボール・ウインド・プッシュ」

 火の玉が出て、的まで一直線に飛び、激突する。

 〝ド、ドーン〟

 と、的が吹き飛んでいく。よし、上手くいった。


 次はランスか?

 プログラムとして考えると、ランス本体は、形状を細長く、先がとがった形にする。ボールの場合は、何かに衝突すると爆発させたので、衝突確認をメイン処理でおこなったが、ランスの場合は的を突き抜け、壁では爆発するという動きになる。突き抜けるためには、錐もみ状で的にぶつかって的に穴をあけるとその先の壁でその錐もみの回転が停止したら、爆発するというイメージを考えた。

 初期処理では、形状を細長く、先がとがった形で、全体をドリル状にする。メイン処理では、回転が止まったら爆発をする条件処理を入れる。でも、このままでは、動作したら、すぐに停止しているので爆発してしまう。なので、回転したことが確認出来ていて、その状態で回転が止まったら爆発をする条件処理とした。


 でもどうしたら回転させることが出来るのか?

 普通じゃだめだ。

 考えろ。

 そういえば、銃身にはライフリングがあった。そうだ螺旋状の溝を風の銃身に作り、その銃身に合うようなドリル状の火の槍というかライフルの弾を作り、お尻だけを平面として、そこを押し出すことにすれば、尖ったドリル状の回転した炎が風の道を通っていく。

 マチルダさんのファイアランスではないけど、その動きを真似ることが出来るのではないかと考えた。それに、風の道を通ったら自然に回転するため、回転が止まったらという条件が有効になる。これだ、やってみよう。


 『天地の理に沿って、私は彼の的への道をつくる』

 「ウインド・ライフリングチューブ」

 『天地の理に沿って、私は彼の的に打ち当てる』

 「ファイアランス・ウインド・プッシュ」

 錐もみ状の細長い炎が発射され、的を真っ直ぐ射抜く。強烈な高音の金属音が発生する。

 〝キーン〟

 そして、的を食い破るように炎の槍が飛び出してきて、その先の壁に突き刺さり、爆発する。

 〝キーン、キュルルル、ルル、ル、ド、ドーン〟

 と、壁にひびが入った。威力が凄い。

 成功か?ちょっと違う気がするけど、出来た気になる。


 的の先にあるレンガの壁まで来てみるとひび割れがひどい。このままでは放っておくと崩れてしまうのがわかった。粘土を集めて、修復してみようと思う。

 「アース・粘土を集めろ」

 集めた粘土を手で持って、削れていたり、ひび割れた部分に粘土を張り付け、一部分は隙間に押し込んでいく。日本の左官仕事をイメージしてたのだが、子供の粘土細工だ。でも、大丈夫。

 「ウインド・ウォーム・低」

 粘土を乾かす。粘土の上に掌を近づけて

 「ファイア・連続・土が赤く光ったら・プチファイア・5秒後停止」

 

 急に壁が熱くなった。

 びっくりして離れる。幸い魔法は動作していた。歪な修復だが、当面大丈夫そうだ。良かった。安堵して、振り返ると、そこにはマチルダさんがいた。


 「見ていたわよ、王子。壁を壊したのね」

 人がいないと思っていたところに、声をかけられた驚きに言葉が出ない。

 「でも、その魔法は使わない方がいいわ。というより、使えるということを隠した方がいいわ」

 そして、静かに言った。

 「あなたは人を殺したことがある?」

 それから、悲し気に続けた。

 「ないでしょう。でも、貴方の力を見れば、それを求める人が出てくる。それは想像出来る未来よ。特にこの国の第一王子は好戦的と聞くわ。彼にその力が知られたら、あなたは戦場で見知らぬ人を殺し、怨まれ、そして、その罪の重さに殺されることになるわ。もし、その力を使うとしたら、愛する人を守るために使うべきよ。ただ、今はその時でないと思うし、それまでは隠しておいて」

 マチルダさんは厳しい顔をしていた。

 それは戦を経験した神々しい魅力的な表情だった。

 その表情を見ていると、僕は何も答えられなかった。

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