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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第50話 魔法インクと魔法陣

 離れに戻ってきた。

 魔法インクをどう作るか考えている。いや、正確には、どうしたら魔法銀がインクと混ざるのかを考えている。銀及び水銀は水とは相性が悪く基本はシアン化溶液に溶かしていた。銀メッキはその溶液に浸けて行っていたと思う。

 魔法銀はどういう特性があるのか、銀というが、別物なのか、確認する必要がある。実際入手した魔法銀を見ているが、銀色の粉末だった。

 魔法エンサイクロペディアで聞いたように通常のインクと一対一にしてマチルダさんにもらった練習用の薬研に入れ、魔法銀をいれる。

 すり潰してみる。ザリザリと音がして粉末がさらに小さくなり、魔力を込めると混ざる感じがしてきた。いや、かなり混ざっている。鑑定すると、魔法インクとでた。これが魔法インクだ。案ずるより産むが易し、銀といいながら、想定していた物と違う物質なのかもしれない。


 次は魔道具としての土台となる石盤である。何が最適か分からず、ひとまず、庭にでて大理石を魔法で作成してみた。

 「アース・大理石・直径10cmの厚み1cm円盤・作れ」

 出来た石盤を持って、離れのテーブルに戻る。

 これにどうやって魔法陣を描くか、考える。


 まず、魔法インクをたっぷり染み込ませた羽ペンで頭に描いた魔法陣をフリーハンドで描いてみる。インクが大理石にはじかれ線にならない。

 早速行き詰まった。

 この前ミーナさんからもらった針の先で一旦形を描いて、それから、魔法インクでなぞる方法を試す。フリーハンドで描いたため歪な形となってしまったが、それでも魔法インクでなぞる。インクで図形が満たされていき、歪だが魔法陣が完成した。

 細い線から順にインクが乾き、銀色の線になっている。擦ってみても簡単に剝がれない。インクに含まれる魔法銀は魔力を流すことが出来るようにするだけでなく、線をコーティングする意味もあるのだ。

 風魔法で乾かす。

 「ウインド・ウォーム・低・5秒」


 石盤に銀色の線が輝きインクが乾いたことが分かった。

 これからデバッグだ。この石盤の中心に手を置いて、魔力を供給してみる。銀色の線にほのかに橙色が加わり、魔力が流れるのが分かった。流れを追っていくと火が点いた。魔法陣は大丈夫なようだ。

 しかし、炎が不安定で、炎が大きくなったり、小さくなったりしている。魔力の流れと魔素の流れが安定していないのが分かる。やはり、歪な魔法陣では魔法の効果も歪になることが分かった。

 これではダメだ。コピーのような複写が出来ないと難しい。

 複写か、その言葉にライトの魔法陣を空中に作成したことを思い出した。


 「そうか、ライトの魔法陣を空中に作成したように、この石盤の上に作成すればいいんだ。やり直しだ」

 先ほどフリーハンドで作った魔法陣の線を針で弄り、以前魔道具の線に施したように、その部分に魔力を流しながら、ほじるように銀の線をはがしていく。魔法陣の抜け殻のような線をとりだせた。再利用のため、魔法インクの薬研に放り込む。はがした魔法陣残滓を大理石の円盤から布で拭きとり、

 「アース・傷の修復」

 で、また、綺麗な大理石の石盤が出来た。


 僕はライトの魔法陣を石盤に定着させる。

 「定着」

 石盤に見えない魔法陣が出来ているはずだ。石盤の見えない魔法陣の中心に手をあてて、魔力を流す。見えない魔法陣に魔法が流れ始め、淡く光ることで魔法陣自体を浮かびあがらせ、最終的に灯りが灯った。問題なく動作している。

 この状態で、試作した魔石ボックスを石盤の中心に置き、手を離した。以前の製品開発で仮設電源から本物の電源にスイッチしたことを思い出した。製品開発は似ているのだ。懐かしい気分になる。

 一番簡単なのは、魔力の流れがわかっているのだから、その上から魔法インクで上書きする方法だと思える。魔法インクをつけたペンで魔法陣の魔力の流れを中心の魔石格納部からなぞろうとした。

 すると、インク自体も流れる魔力で押し流され、線にならない。

 上手くいかない。

 魔力を止めると淡く光る線が見えなくなるし、最終的には線自体も消えてしまう。消えてしまうなら、ヒカリゴケを乗せていれば跡は残るので、ヒカリゴケに魔法インクを乗せて固まらせる方法も考えた。

 でも魔法に関係のないヒカリゴケという不純物が入った線では魔法の効率が悪いのではないかと思える。できれば、魔力のみで解決出来る方法が望ましい。


 そもそも、魔法インクで線が描けないのは、水みたいに魔力が流れているからである。水という言葉から、水道も水が流れているが、水の流れがある程度可視化出来るのは、水道管があるためである。

 これと同様に、流れる魔力にも管の中を通るようにして、その管にインクで色を付けて定着させれば、魔法陣としてつくることが出来るのではないかと考えた。方法は、氷を作ったように、管を意識して魔力を流し、流した魔力の表面のみを固くするのだ。

 難易度は高いが、出来ないことはない。魔法は魔力の膜を作って、その中で魔素を爆発させることで変化を生み出しているのだ。血管のようなイメージを作ったら魔力も部分的に硬化出来るのかもしれない。

 やってみよう。

 そこまで考えて、魔石ボックスを取り除こうとして、石盤を見ると、点火部の星の一部にキラキラした銀色が見えた。なんだろうとよく見ると魔法銀のようである。この魔法銀はどこから来たのかを考える。

 先ほどの実験ではがし忘れた魔法銀の一部か?

 否、はがした後に修復の魔法をかけているのであり得ない。

 よく考えると中心部から描こうとして流れた魔法インクではないかという結論に至る。

 たっぷりつけた魔法インクをペンで中心の魔石格納部から再度、なぞる。すると、魔法銀がスルスル流れて行き、点火部の星にたどり着き、固まった一部に継ぎ足された。

 これだ。

 線を描くというのではなく、線をインクで満たすという意識が必要なのだ。

 魔法インクを次々と中心から流し込む。どれくらい時間が経ったか分からないが、インクで魔法陣が埋まった。

 次に、魔石ボックスを取り除く。ライトの魔法が消えた。中心核の図形の残りの魔法の残滓に、魔法インクを乗せるようにペンで描く。

 「ウインド・ウォーム・低・5秒」

 乾いたキラキラ輝く銀色の魔法陣が完成した。

 

 テストしてみる。

 自分の手で魔力を出力する。灯りがともる。出力停止。

 次は魔石ボックスを乗せる。灯りが灯る。取り除く。灯りが消える。

 魔石単体を乗せる。灯りが灯る。取り除く。灯りが消える。魔力を出力して一秒も経たずに灯りが灯る。性能的にはこんなものか?


 次は、正規品以外の魔石では動かないようなプロテクトを考える。最初は、屑魔石そのものに、プロダクトIDをつけようと思ったが、これはかなりの手間であり、下手するとこの作業に一日のほとんどを費やすといったことも考えられた。

 そのため、僕は、火の魔道具の修正時にあったように、他人が作った魔法インク同士は反発して魔力が流れて行かないことを思い出した。


 魔道具の上に魔法陣を保護する別の石盤を乗せ、その石盤の中心に僕が作成した魔法インクで描いた魔力入力用の円を作る。同時に、魔石ボックスの屑魔石を僕が作成した魔法インクでつなぎ、魔石ボックス底面に魔力出力円を作る。この入力、出力円が重なるようにすると、魔力が流れて魔法陣の魔法が実行されることになる。電池のプラスとマイナスを併せるような動きを考えた。


 早速上に重ねる石盤を作ってくる。そして重ねると同時に、アースの魔法で小さな穴を作る。また、重ねた石盤に魔力で円を描き、小さな穴から下の魔法陣の魔力入力部へつながるように魔力を流す。繋がったのを確認して、その流れに魔法インクを垂らし、同じように魔法インクが固まるのを待つ。

 次は魔石ボックスだ。魔石ボックスもアースの魔法で四角い直方体の石を切り出し、貫通しないような円形の穴を作る。魔石ボックスの底部となる部分に魔力で円を描き、アース魔法を使いながら、底部とくりぬいた穴の底部に魔力を流し、同時にその魔力の流れにそうように魔法インクを垂らして、魔力線がつながる。その状態で屑魔石を詰め、石の蓋をすると、試作の魔石ボックスが出来た。

 石盤を重ねたことにより、魔法陣が完全に隠され、傷つけられることがなくなった。また、魔法陣が見えなくなりほぼ解析が不能となった。

 まるで、魔石ボックスを魔法陣に乗せると、お盆のうえに四角いカステラが乗っているように見える。


 テストを行う。

 魔石ボックスの底面の円を魔道具の円に重ねる。灯りが上空に点灯した。魔石ボックスをずらすと灯りが消える。これを繰り返して動作確認し、問題なく、灯りの魔道具として動くことが分かった。


 次に同じ要領で火の魔道具の試作を行う。

 火の魔道具の魔法陣を空中に描いて、それを記憶する。そして、大理石の円盤に定着させる。ライトの魔法陣と同じように、中心部から魔法インクを流し、魔法陣を埋め、火の魔道具が出来た。

 複雑な魔法陣であるが、テストも良好で、特に問題は発生しなかった。

 時間はかかったが、光と火の魔道具の試作品が完成した。後は、オルフェス先生に見せて確認して、アルベルトさんに最終確認である。

 期待に応えられると良いのだけれど。


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