第49話 魔道具販売契約
王宮からの帰りの馬車でレバークレーゼン商会まで送ってもらった。
今はレバークレーゼン商会の僕が面接を受けた応接室で、アルベルトさんを待っている。今日の報告をするとのことだ。
帰りの馬車の中では、一言も言葉を交わさなかった。御者に会話を聞かれたくなかったのだ。セバスさんが出してくれたお茶を飲みながら、ホッとしている僕たちがいた。
そうこうしている間にアルベルトさんが入ってきた。オルフェス先生がアルベルトさんに今日の出来事を話す。
「上出来ではないでしょうか。第一王子は気難しいところがあり、一度でもへそを曲げるとどうにもならないのですよ。今回の第一王子の言葉から考えて、かなり、機嫌がよかったのかもしれません」
と、アルベルトさんの分析である。
「えー、緊張しましたが、これで王子を守れたと思うと、やり遂げた感はあります。また、魔道具の販売も認めてもらえましたし、屑魔石の販売は当面独占販売出来るようで何よりです」
オルフェス先生の口も軽い。
「本当に良い契約かと思います。屑魔石の販売に関してですが、できれば、王子に改造してもらって、私達が販売する魔石しか動作しないようにしてもらえば、一挙に我々は魔道具だけでなく、屑魔石も独占販売の利益を得ることが出来ます。これには、どれだけの利益が上がるか想像もつきません。
それに、当初は販売方法が難しいと思っていたのですが、第一王子のお墨付きを利用して、まず、この国の王侯貴族への販売を先にしていきましょう。
あと、火力を調整する機能をつけることが出来ませんかね。そうすると、持ち運びも、据え置きも出来、ほぼ、すべての台所の竈を置き換えることが出来ます」
アルベルトさんは利益をさらに膨らますような提案をしてきた。オルフェス先生が僕を窺うような目で見る。僕が答える番らしい。
「魔石に関しては魔石ボックスという形で、その箱の中でしか魔道具が動かないような仕組みを取り入れることが可能です。
それと、火力の切り替えは石盤の大きさで対応しようとしていましたが、三段階であれば切り替え回路の追加で対応出来ると思います」
と、僕は答える。
「素晴らしい。しかし、火力に関しては切り替え機能を追加することでなく、ラインハルトさんの考え通り、三種類の大きさで対応しましょう。その方が分かりやすいし、私どもも販売しやすいですからね。
あとは生産スケジュールと行きたいところですが、まず、レバークレーゼン商会と魔法学院との間で契約書が必要ですね。これは、前もって私が作成しております。
魔道具の販売利益の50%を第一王子、25%を魔法学院、残り25%をレバークレーゼン商会とし、魔石に関しては、販売利益から加工費として30%を魔法学院、調達費を含めた販売手数料として70%をレバークレーゼン商会とすることでお願い出来ないでしょうか?
この契約には、契約期間を一年有効とし、契約更新時に金額の交渉が出来るという一文をいれさせてもらいます。一度、お読みください。それで、問題なければ、サインをお願いします」
アルベルトさんは手回しよく、商売の話を進める。
「王子、どうしましょうか?」
オルフェス先生が聞いてくる。
「先生の判断で問題ありません。でも、現在、魔法銀が入手出来ない状況では生産出来ないので、契約してもあまり意味がないのかもしれません」
と、答えると、アルベルトさんが思い出したように言ってきた。
「そうそう、魔法銀ですが、冒険者ギルド経由で入手出来ましたよ。今日、お渡しします。また、依頼をだせば、定期的に入手出来るようになりますので、調達の不安はなくなりました」
それを聞いてオルフェス先生は、アルベルトさんに言う。
「今回の第一王子の取次にお金もかかったと思います。また、魔法銀の入手費用もかかっていると思います。それらの費用を考えると我が学院に都合が良すぎる契約だと思っております。学院の取り分は20%、レバークレーゼン商会は30%にする契約でお願いします。
魔石の取り分は変更しませんが、基本的な考え方として、材料の調達、製品の販売をレバークレーゼン商会、製品の加工を学院が行う文も追加させていただき、その内容で早速サインをさせていただきます。この契約内容の追加は学院が魔石の販売、調達は行えないとするもので、商会側にもメリットはあると思いますが、いかがでしょうか?」
と、オルフェス先生が言うと、
「分かりました。ありがとうございます。その比率だと私どもも長く商売が出来そうです。それに追加した一文はお互いの職分を明確にするということですね。我が商会は生産には興味はありませんので問題ありません。
早速変更した書類を作成しますので、それからサインをいただけますか?」
アルベルトさんが答え、セバスさんがその書類を持って変更するために出て行った。そして、アルベルトさんから
「魔法銀をお渡しします。こちらです。それと屑魔石もご用意しました。材料は揃ったと思いますが、生産スケジュールはいかがお考えでしょうか?」
と質問されたので、
「今日、帰ってから構想を練って、明日、試作を行います。問題なければ、明後日に試作品を持ってお伺いします」
と僕は答えた。
「早いですね。私は、めぼしい貴族に声をかけておきます」
アルベルトさんの方が気が早い。
「王子、今後は外出するときは私もしくはソフィアと一緒に移動してください。お願いします」
と、オルフェス先生だけが心配そうな顔を僕に向けた。




