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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第47話 窯作り、パン作り

 これからはソフィアさんが食事を含めた僕の世話をするということだった。学院での先生としての仕事はどうするのですか?と聞いたら、当分、休講ということだった。

 彼女が教える武術に関しては、騎士団から臨時で人を雇って対応するとのことだ。どこかのタイミングで一度、武術の練習をしましょうと話しかけられたが、性格的にやんわりお断りをした。


 引っ越しも済み、今はお腹がすいているということで、インベントリからパンを出して渡した。

 「えっ、このふわふわでこんがり焼けたのがパン?柔らかくていい匂いがします。中が白いですね。食べますね。わー、美味しい。味わったことのない美味しさです」

 もぐもぐしながら、ソフィアさんが言い出す。

 「王子は作り方がわかりますか?」

 「おぼろげですけど、これに近いものは作れると思いますよ。作ってみましょうか?」

 「出来るのですか?」

 「えー、材料があればなんとかなると思います。パンを焼く窯は母屋にはあると思うのですが、離れ専用に切り出し式の石窯をつくりましょうか。じゃ、作業出来る恰好で来てください。私は先にオルフェス先生が窯を設置しても良いと言われた場所に行ってます」

 「私はいつものこのパンツスタイルなので、このままご一緒します」

 そういえば、彼女はいつもパンツで上は明るめのブラウス、ショートカットの銀髪と小さな綺麗顔。澄んだ青い目に鼻筋が伸びている。マチルダさんを幼くした感じである。マチルダさんに身長も体格(性格?)も似ている。僕より、身長は頭一つ小さいが出るところは出ており、手足の長さのバランスも良く、日本にいたら、芸能事務所にスカウトされてもおかしくない美人だと思う。


 二人そろって、オルフェス先生が窯を作って良いという場所にきた。ソフィアさんが見ているのを意識しながら、作業台を作る。

 しゃがんで掌を地面につけて、

 「アース・1m×2m×1m四角い石・作れ」

 と、作業台のもとを作る。

 「アース・四角い石・左から0.2mのところから0.8m×1.6m×1mを削れ・削った石は土に戻せ」

 これで、両端に足がある作業台が出来た。


 次に、かまぼこ型の簡易窯を作業台の端に作る。最初に薪をくべる部分を作る。石で作った作業台の上に、レンガを横向きに四つ並べ、後ろをふさぐレンガを二つ、さらにその横に四つを並べてコの字型にし、その上に、さらにレンガを重ねて二段とする。レンガ同士は、粘土で接着する。接着した粘土を乾かすために、ウインドの魔法を使う。

 「ウインド・ウォーム・高」

 レンガが乾いたのを確認して、アースの魔法で厚み5cmの石板を作る。それを作った薪をくべるレンガ部に石板を乗せる。この板がパンを乗せて焼く部分になる。

 次にレンガで一段のコの字型を作り、かまぼこの上部の円を作れるようにウインドで風を流してみる。風でレンガの重さを維持出来るかと思ったら、案外、あっさりとクリア出来た。微妙な半円を作りながら、アーチ型に組んだ上下に手で粘土を接着し、それが済むと、維持している風魔法の温度を上げる。

 「ウインド・ウォーム・高」

 粘土を焼き固めて安定させる。アーチ型が安定したことを確認して、最後に裏側にレンガを積んで蓋をして、火力が漏れないようにした。

 簡単だが、薪をくべて温め、その上にある石の板でパンを焼く方式のパン窯が出来た。


 窯が出来たので、実際のパン捏ね作業になる。その前に必要なのはパン酵母の作成か。

 「ソフィアさん、窯が出来ましたので、次はパン作りになります。今回のパンには、酵母というパンを膨らます素が必要です。この酵母は、干した果物で作ることが出来るのですが、干した果物とかありますか?なかったら、普通の果物から作ってしまうので、そちらでも構いませんが……」

 ソフィアさんは驚きの表情で言葉を返す。

 「この手の窯は一か月仕事だと思いますが、相変わらず、恐ろしく作るのが早いですね。驚かずにいられません。酵母ですか、それはどういったものですか?」

 「説明するのは難しいのですが、パンを膨らます素になるものです。それが、パンをふわふわにします。それと一緒に小麦粉を捏ねることでさっき食べたようなパンが作れます」

 「ミーナに確認してみますので、少し、お時間を下さい。あと、小麦粉ももらってきます」

 ソフィアさんが離れて行った。


 その間に火力の準備をしようと思い、近くの雑木林から火つけ用の枯れ枝を拾ってくる。煮炊きするには練炭のようなものがあると聞いているが、それだと火力が足りない。薪のように長く熱を保つものも確保する必要がある。

 ソフィアさんに言うのを忘れていた。ソフィアさんを追いかけるようにして母屋に戻る。ミーナさんと話しているソフィアさんがいた。

 「あっ、忘れていたことがあってやってきました。燃料である薪が必要でした。薪はありますか?」

 「ありますよ。いい所に来ていただきました。お嬢様が言われていることが良く分からないので教えていただけますか」

 ミーナさんが僕に話しかけてきた。レーズンに近いドライフルーツがあるようだ。見せてもらうと問題なさそうである。

 「ソフィアさんが言うとおりのことなんですよ。お時間がありましたら、一緒にパン作りをしてみませんか?」

 ということで、ソフィアさん、ミーナさんと僕でパンを作ることになった。


 「まず、魔法で作ってみます」

 「ウォーター」

 僕はそう言って、先ほど作った作業台の上で、酵母を作るために、ドライフルーツが入った瓶に魔法で水を入れた。

 「ファイア・低」

 魔法で温め、急速発酵させる。

 「ファイア・低・泡が出てきてドライフルーツが浮いてくるまで」

 魔法で発酵を待つ。

 やがて、発酵がはじまり、ドライフルーツが浮いてきた。

 ソフィアさんとミーナさんには、通常、酵母を作る工程は4日~5日程度はかかると説明する。この液体と小麦粉を混ぜて中種を作る。この捏ねる作業は魔法での自動化を思いつかず、ソフィアさんとミーナさんに手伝ってもらう。この作業で出来た中種を魔法をかけて発酵を加速させる。

 「ファイア・低・三倍に膨らむまで」

 パン種を作るために発酵させる。さらに、これを最終的なパンにするため、出来たパン種と小麦粉と塩を混ぜて、ソフィアさんとミーナさんに手ごねしてもらい、パンの形にしてもらう。出来たパン種を発酵させるため、再度魔法を使う。

 「ファイア・低・二倍に膨らむまで」

 発酵させ、その間に、魔法で事前に窯を温める。

 「ファイア・高・10分後停止」

 膨らんだパン種を石窯に並べる。

 「ファイア・高・15分後停止」

 温かい空気の対流を意識しながら、魔法をかけると、こんがりと焼けたパンが出来た。

 短いようで長かった。

 早速、ソフィアさん、ミーナさんに試食してもらう。

 「美味しい」二人の声が重なった。


 「発酵と焼き上げに、もう少し時間をかければ、もっと美味しくなると思います」

 「今まで食べたことのない、ふわふわした柔らかいパンですね。スープにつけなくてもそのまま食べられます。私も作ってみたいです」

 と、ミーナさんが言う。

 「私も作りたい」

 と、ソフィアさんも言う。

 「では、こちらで、再度、パンごねをして、パンの形にして、それが二倍に自然に膨らむまで待ってください。少し、時間がかかるかもしれません。膨らんだら、この上の段に並べてください。この膨らむというのがこのパンの特徴であるふわふわを出します。そして、この下の段で薪をくべて、パンを焼きます。焼き方は今までのパンと同じだと思います」

 二人はいそいそとパンを捏ねだした。


 「ソフィアさん、作業中申し訳ありませんが、パンを焼くために薪に火をつけることになると思いますが、その時、便利だと思いますので、僕が作ったプチファイアの魔法を覚えませんか?」

 「出来るかしら?」

 「多分、火魔法の属性をお持ちですから大丈夫だと思います。魔法の発動イメージを伝えるのが難しいので、僕にステータスの魔法の項目をいじらせてください」

 「わかりました。王子を信じます。ステータス」


 NAME:ソフィア・グレイフォード

 AGE:22

 職業:剣士

 状態:○健康

 HP:250/250 MP:200/200

 STR:45 DEX:65 AGI:35 INT:60 VIT:45 LUK:45

 武器:なし

 防具:なし

 アクセサリ:なし

 スキル:算術

 魔法:

   火魔法

    ファイアボール


 鑑定のスキルでソフィアさんのステータス画面の火魔法の項目をタッチする。出てきた火魔法一覧に僕のプチファイアのイメージを

 「定着」

 と呟く。

 一旦、火魔法一覧を閉じて、再度確認してみるとプチファイアの項目がある。大丈夫だ、定着出来た。

 しかし、これはまずいかもしれない。他人のステータスに書き込めるということは、魔法を教えるどころか、人の能力そのものを書き換えられるということだ。マチルダさんに言われたことを思い出す。この力は、誰にも知られてはいけない。


 NAME:ソフィア・グレイフォード

 AGE:22

 職業:剣士

 状態:○健康

 HP:250/250 MP:200/200

 STR:45 DEX:65 AGI:35 INT:60 VIT:45 LUK:45

 武器:なし

 防具:なし

 アクセサリ:なし

 スキル:算術

 魔法:

   火魔法

    ファイアボール

    プチファイア


 「ソフィアさん、プチファイアの魔法が使えると思います。やってみませんか?」

 「あっ、そう。なんか、出来そうな気がします」

 そして、呪文を唱える。

 「天地の理に沿って、私は彼のものに火をつける、プチファイア」

 指先から火が出ている。

 「『プチファイア停止』と、言ってください。そうすると火が止まるはずです」

 ソフィアさんは、僕の言うとおりに呪文を唱える。

 「プチファイア停止」


 「あっ、火が消えた。凄い。呪文ってこんなに簡単に身につくものなの?」

 「すみません、やり過ぎました。この能力は内緒にしていて下さい。ともかく、これで、種火を点けることが出来るようになったので、薪を燃やすまでの時間を短縮することが出来ると思います。良かったですね」

 「うん、少し、納得いかないけど、これからやってみます」

 パンが膨らむまでお茶の時間となった。それから、ソフィアさんとミーナさんはパンを焼き始めた。パンの香ばしい匂いが立ち込めていた。


 「王子、こちらでしたか、探しましたよ。今から出ますよ。さあ、いきましょう」

 今度はオルフェス先生に手を引っ張られる。今から、王宮に行くのだ。


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