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異世界の魔法をプログラムする~日本生まれの異世界の王子は培ったプログラミング技術で魔法国家を建設する~  作者: 霧里 野蒜


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第45話 ライトの魔法の進化

 「それは、この国の大物だ。ブランゲン国の第一王子であるハインリッヒ様だ。次期国王候補になる。レバークレーゼン商会のアルベルトさんから紹介していただいた。お忙しい中、お忍びでの直々のお目通りとなる。これ以上にない適任だ。気に入っていただけるといいが……」


 マチルダさんが、オルフェス先生の言葉を引き取って答える。

 「苦渋の決断だったわね。場合によっては、王子の自由を束縛してしまうこともあるし、これから行うであろう様々な革新の芽を摘んでしまうことになるかもしれないわね。

 もしかしたら、地位か女性をあてがわれ、王家に取り込まれる可能性もあって、その時はアレクサンド国の再建に支障をきたすし、賭けの部分が大きいわ」

 オルフェス先生が答える。

 「それは私も考えた。しかし、王子のやることなすことで何が起こるか、私は想像が出来ない。もし、この王室が我が王子に仇なすことになったら、我々も王子とともに流浪の民となって、この国を逃げ出す必要がでてくる。そうなる覚悟もしておいて欲しい。

 また、結果にかかわらず、明日以降は必ず、王子の監視がつくことになる。そのため、ソフィア、お前は明日から王子と一緒に離れで暮らして欲しい。そして、その監視に注意しながら、王子を警護してくれ。良いね」

 オルフェス先生はソフィアさんに命令をした。

 「分かったわ。私が抱き着くことはあっても、賊には誰一人として王子に指一本触れさせません」

 ソフィアさんが冗談ともつかない言葉を返す。

 「ソフィア、私が王子に抱き着くのは許してね」

 マチルダさんがさらに不可解な言葉をソフィアさんにかける。

 「お母さんも許しません。王子は私のものです」

 ソフィアさんもきりッとした顔で答える。ちょっとソフィアさんの可笑しな答えを聞きながら、ややこしいことになってきたことを感じている。

 「王子、というわけですから、明日、離れにソフィアが護衛として移動します。寝室がもう一つあったはずなので、そこをソフィアの部屋とさせてください」

 「分かりました。でも、妙齢の女性が独身の男と一緒に暮らすのは問題ありませんか?」

 その言葉に、オルフェス先生が反応する。そして、僕をじっと見つめて言った。

 「王子はそんなことは出来ないと信じています。それに、ソフィアはああ見えて、武術の嗜みがあり、そこいらの騎士では歯が立ちません。しかし、今はそう言う状況ではないのです。分かってください」

 その思いつめた感じに、僕は覚悟をきめる。

 「分かりました。では、引っ越し、お手伝いしますよ。多分、インベントリに入れて移動すれば簡単に引っ越しも終わりそうですから、明日の朝食後でもいいですか?」

 「それでお願いします。と言って思うのですが、王子のインベントリはどれだけの量が入るのでしょうか?教えてもらえますか?」

 「測ったことがないので正確なことを言えませんが、感覚では離れの家程度の大きさだったら入るのではないかと思います」

 「えっ……」

 オルフェス先生は絶句する。


 「あー、ダメだ。だめよ。オルフェス、王子は何も分かってない。離れをインベントリで運ぶ人なんて王子以外この世にいない。明日の謁見時は、王子に何か質問されても、答えさせてはいけないわ。

 答え方によってはその場で殺されかねない。自分の常識を超えた人間がいると、恐怖を覚える人もいる。段々、心配になってきた」

 マチルダさんは、僕の方を見て、優しく声をかける。

 「王子、王子はこの世界ではまだ、産まれたての赤ん坊です。赤ん坊は喋れないし、動けないことが分かっているので、大きくなるために周りが手助けすることが出来ます。

 しかし、王子は違います。赤ん坊のくせに、魔法が使えるし、鑑定やインベントリも持っていて、人並み以上の頭脳もあります。

 そんな者はこの世界にはおりません。

 その能力に嫉妬して、自分の能力を疑うアンナのような者であれば問題になりませんが、そういった人間を許さない権力者もいるのです。ですから、どうか、今、私が言ったスキルに関しては正直に答えてはいけません。出来ないとか、勉強中くらいがちょうどいいのです。今後は、私達家族以外にはそうお答え下さい」

 「そうですか。言動に注意します」

 と、僕は答える。


 「オルフェス、火の魔道具の件だけど、王子の名を出すのは危険よ。王子には悪いけど、オルフェスか私が修理したことにしないと、良くないことが起こりそうだわ。

 王子、あなたの功績を奪うようで申し訳ないですが、良いですよね。それでも、疑う人がでてくると思いますが、そのときはそのときです」

 「ああ、あー、そうしよう」

 硬直がとけたオルフェス先生がマチルダさんに答える。そして、僕に話しかける。

 「引っ越しは王子のインベントリの能力を知るためにも明日の朝食後お手伝いをお願いします。また、謁見時の受け答えですが、私経由で行いましょう。話が分かっても直接答えないでください。

 王子は外国人だとして、私が通訳します。私が異国の言葉としてアレクサンド語を話します。王子は小さな声で私に返答を返して下さい。私がそれを受けてこの国の言葉として、ハインリッヒ王子に返します。

 多分、謁見時はかなり離れているのでぼそぼそ話せば分からないと思います。よろしいでしょうか」

 「分かりました」

 僕はそう答えるしかなかった。明日を考えると気が重い。


 食事後、マチルダさんからヒカリゴケの入った瓶を受け取った。

 離れに戻ってきて、これをどう活かすか考えている。

 現在のアイデアはこうだ。魔力は二系統が必要で、空中に魔法陣を描くための魔力とその魔法陣を動かすための魔力の二種である。空中に魔法陣を描くことはヒカリゴケを使えば、魔力の流れがみえるようになるので難易度はかなり低くなる。

 しかし、描くだけでは魔法陣としては完成せず、これを維持する必要がある。魔法インクで石の円盤に魔法陣を描くのと訳が違うのだ。


 ヒカリゴケの混ざった丸いスクリーンを風魔法で作って、それから魔力の線を伸ばす。イメージはゴム風船を紐でつないでいるイメージである。その魔力線の先に魔石を繋いで作成した魔法陣を維持するというアイデアに至った。


 まず、ヒカリゴケの混ざった丸いスクリーンを作る。そのために、目の前に魔力で円盤の覆いを作り、その中を魔素で一杯にし、その中で風魔法を発動させる。風は循環が続くようにして、その中をヒカリゴケで満たす。


 「ウインド」

 風魔法を発動する。

 次にヒカリゴケを目の前の風のスクリーンにあるあたりに流し込む。キラキラしたヒカリゴケのスクリーンが出来た。そのスクリーンにつながる魔力線を意識して、左手から魔力がでるようにして、風のスクリーンを維持する。


 さらにライトの魔法を魔法陣の星の回路を作って構成してみる。魔素貯蔵回路、圧縮回路、保護回路、発動回路、初期発動位置の指定回路、それを繋ぐ呪文とともに魔力線で接続する思考イメージ、それを風のスクリーンに映し出す。

 「定着」

 頭のイメージを写す言葉がみつからず、右手を風のスクリーンに押し付け、思わず呟く。前頭部から何かが抜けるような感覚があり、僕のイメージが目の前のスクリーンにあった。この丸いスクリーンの真ん中にある中心核から魔力線を出し、右手と繋ぐ。右手から魔力を少しずつ放出する。各回路を流れている魔力が、次から次へと光るヒカリゴケの光によってわかる。すべての回路が光ると、その上、50cm程の上空に光の玉が発動した。

 「出来た。空中に魔法陣をつくることが出来た」

 幸せ物質が僕の体を満たしていく。でも、これではまだ、道半ばである。右手の魔力線を魔石につなぐ必要がある。インベントリから屑魔石を左手の掌に取りだし、ゆっくり、右手の魔力線を魔石につなぐ。一瞬、ヒカリゴケの淡い光が消えて、魔法陣への魔力が途切れるのが分かる。嫌な感じが渦巻く。

 「繋がれ、繋がれ、つながれ、つながってくれ」

 祈りが届いたのか、少しずつ魔石から魔力が流れ始めた。ホッと溜息をつく。ライトの魔法の光を維持出来た。

 「成功だ」

 左手からの丸いスクリーンを維持する魔力を切断すると、キラキラとヒカリゴケが霧散した。それでも、ライトの魔法の光は点灯している。僕の成功を祝福しているようだった。

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