第40話 魔法の魅力
「魔法が成功すると楽しくて、止められなくなってしまうのです。これは病気でしょうか?」
僕はオルフェス先生に尋ねる。
朝ご飯の食卓である。
皆さんは神妙に、伺うように聞いている。
オルフェス先生が答える。
「魔法を覚えたての子供がそういったことになるということを聞いたことがあります。成功体験による幸せ物質が体中に放出されるため、自分の意思では止められないこともあるようです。
王子はこの世界に来て、魔法の成功体験に免疫がないためこの状況に耐えられないでしょう。免疫がつくまで誰かが付いている必要がありますね。今日は、アンナが面倒みるとして、明日からどうしましょうか?
少し、考えさせてください。
ところで、どんな魔法が出来るようになったんですか?」
と、オルフェス先生。
「水で器を作りたいと思っていたら、氷が出来てしまいました。お見せしますので、先生のコップに氷を出してみますね。プレス・ウォーター」
オルフェス先生のコップに3cm角の氷が五つ出現した。
「凄い、本物の氷ですか?おっ、冷たい」
オルフェス先生がおどける。
「それを利用して、こんなのも出来ました。クリーン・ウインド・ウォーム・低」
とオルフェス先生に魔法をかける。
オルフェス先生の体が一瞬光に包まれる。
「いきなり何をするんですか?でも、凄く爽やかな気分です。気持ちがいいです。これは何の魔法ですか?」
オルフェス先生がきりっとした顔でほほ笑む。
『えっ、こんなにイケメンだったのか?』
「クリーンの魔法の進化系です。クリーンと同時に温かい風で服や体を乾かします」
「これもまた凄い。毎日、かけてくれませんか?」
「いいですよ」
気軽にオルフェス先生にこたえる。
「王子、お願いがあります。私と娘二人にも同じ魔法をかけてもらえませんか?」
マチルダさんにもお願いされる。
「お安いごようです」
「クリーン・ウインド・ウォーム・低、クリーン・ウインド・ウォーム・低、クリーン・ウインド・ウォーム・低」
綺麗な三人娘?が出来上がった。
「凄く気持ち良い。朝の汗ばんだ体がスッキリしている。寝ぐせがついた髪も綺麗になってるし、服も新しくなったみたい」
「やっぱり、王子はおかしい」
「これは癖になる。王子に朝は任せたい。身だしなみを整えるのが楽になるわ」
誰の声だろう、区別がつかない。
「王子、魔力は大丈夫ですか?」
オルフェス先生が尋ねる。
「ええ、今のところは問題ありません。ただ楽しくてしょうがないのです」
と答えながら、こんなのも出来るようになりましたと、インベントリから、テーブルに鷹の氷の彫刻を出した。
「ライト。いかがですか?」
下からライティングされた鷹の羽が輝く。
「綺麗」
と誰かが呟く。
「王子、凄いですが、やり過ぎです」
オルフェス先生に怒られた。
「楽しくてしょうがないのです」
を繰り返す。やはり、僕は病気かもしれない。
「王子、食事を急ぎましょう。私達は学院の授業がありまして、ゆっくりしている時間もなくなってしまいました」
「氷の鷹はどうしますか、しまって良いでしょうか?」
オルフェス先生が頷く。
「分かりました。インベントリ」
氷の鷹をしまった。
ギロッとオルフェス先生が僕を睨んで、
「インベントリもお持ちですね。鑑定もありますよね。魔法も火、水、風、光が使える。
土は?使えそうですか?
困った、困った。
こんな人がいる事が知られると本当にまずい。
授業は……すまない、ソフィア、私の代わりに歴史の授業をお願い出来ないだろうか?
早く、レバークレーゼン商会のアルベルトさんと会って、王子の庇護者を決めないと良くない事が起こりそうだ」
オルフェス先生は食事もそこそこに席を立った。
「王子、おとなしくしていてくださいよ。アンナ、王子のそばを離れるんじゃないぞ。出かける」
慌しく出て行った。
「王子といると飽きないね、私がずっと一緒にいたい気分よ」
マチルダさんが言う。
「でも、私達には可愛い生徒が待っている。そうだよね。ソフィア行きましょう。王子、アンナに変なことしたら許さないわよ」
マチルダさんに睨まれる。
「変な事する時は私にしてね」
その後の意味深のウインク。
コレはこれで可愛いと思うが、先生の奥さんにしては態度がおかしい。
「なに、ニヤケた顔しているのよ。私のお母さんだから、あなたはどうにも出来ないの」
ばしっと肩をソフィアさんから叩かれた。
「目を覚ましなさい、こんなに美しい女がいるんだから」
言ってるそばから、マチルダさんがソフィアさんを引っ張って行く。
「王子をからかってないで早く行くよ」
「本気よ、私は本気いっ〜」
マチルダさんの声が引っ張られていく。
残されたアンナさんは黙々と食事をしていた。
「今日はよろしくお願いします」
僕はアンナさんに声をかけた。
「私の魔法は誰にも負けない、見て驚かないでよ」
ぶっきらぼうな口調に驚いた。
「魔法に勝ち負けがありますか?」
「食事を早く済ませて!勝負よ!」
えっ、可愛い顔から物騒な言葉が発せられた。




