第37話 やらかした後は
オルフェス先生の家族と夕食を取っている。話題は僕の今後の生活に関してである。オルフェス先生から報告があった。
「食事しながらで良いけど聞いてほしい。まず、王子の処遇の件だ。今日だが、マチルダと王子が作った高品質ポーションの販売をギルドと調整してきた。一本2万Gだ。月に六回の納品になる。また、最高品質ポーションだが、レバークレーゼン商会で一本10万Gですべて購入するとの事だ。
これが、五本あるから学院としてはかなりの収入になる。
ここからが、王子の話だ。
王子が今日、クリーンの魔法を使った。王子はただのクリーンの魔法というが、特別な魔法だ。綺麗にするだけで無く、色んなモノを修復した。
これはマチルダもソフィアも経験済みだから分かるだろう。
そういった事を考えると王子の存在は危険だ。
国に知られると王子は興味の対象とされるだろう。飼い殺しになるか、危険視されて殺されてしまうかも知れない。だから、王子は学院の秘密としたい。
私は、そう思うが、皆はどうだ?」
マチルダさんが答える
「オルフェス、大変だったわね。今回のポーションの契約は学院へかなりの利益をもたらすのね。学院の経営も楽になると思う。
しかし、これも王子がいるからだけど、ただ、何をやらかすか分からない王子をこのまま自由に行動させるのはやはり危険だよね。王子は当面、学院の授業には出さない方が良いと思う。
それでは学院で魔法を学びたいという気持ちが満たされないと思うから、オルフェスか私かソフィアの個別授業を離れで行うというので、どうかしら。
オルフェス、ソフィアそれで良いわよね。
私達が対応出来ない時は、書庫の本で自習になるわ。王子もそれで納得してほしい。
それと、明日から、高品質ポーション十本納品するようにする。でも、今までのポーションも作るのよね、だとすると、手伝いがいるわね」
そして、マチルダさんはアンナさんの方を向いた。
「アンナ、あなた手伝える?」
「はい、お母さま」
アンナさんがそう答えると、マチルダさんは続けた。
「良かった。そう、じゃあ、お願い。王子はどう?」
僕に話を振られた。
「僕としては魔法の勉強が出来れば場所は構いません。ただ、細々とした生活雑貨や替えの服を用意したいと思っていて、外出の許可は頂きたいのですが……」
「許可は難しいですね。王子は学院ではかなり有名人になってしまっています。多分、見つかると学院を出られませんし、街で見つかると拉致される可能性もあります。細々としたモノはミーナに申し付けください。私達が用意します。当初、支払いをお願いしていた生活費用も不要です。逆に、講師をしていただかなくても報酬をお支払いします。今回のポーションに関しては王子無くしては出来なかったモノです。また、この先もこういった開発製品が生まれるかも知れません。また、次のお願いになりますが、これから王子が見つけたモノや開発したモノを学院のものとして発表させて下さい。私からは以上です」
オルフェス先生が言った。
皆が沈黙している。僕が喋る番なんだろう。
「分かりました。僕は魔法の勉強が出来ればそれで良いので、勉強の成果として出来たものに関しては学院のモノとして特に問題ありません。僕がオルフェス先生ご家族と一緒に生活させてもらうことは心苦しいのですが、お言葉に甘えさせてください。さらに、甘えついでに一緒に考えて欲しいのですが……」
と、魔法陣の試作を何度も簡単に行うために、やり直しが出来るように、空間に描くことを考え、魔力に着色して見えるようにする方法を聞いてみた。その説明が分かってもらえるように、同時にライトの魔法で灯りをつくる。
「ライト」
明るい光の玉が皆を照らす。
「このライトの魔法陣を空間に作成して、その魔法陣と魔石と繋ぐことを考えたのです。このライトの魔法陣を可視化する為に着色する必要があると考えました。
これをどう実現するか、魔法エンサイクロペディアに聞くと、
魔法陣を描くときに自身の血液を使えという回答だったんですが、これを何度もやりながら、試行錯誤で魔法陣を作るとすると、毎回意識を無くしてしまうことになりそうで良くありません。
何か、これを解決する情報ありませんかね」
しばし、皆の沈黙のあと、
「うーん、魔力を見えるようにするならヒカリゴケの粉末で幕を作って、そこに魔力で魔法陣を描いたらどうかなぁ。魔法の練習の時、お手本で魔力の流れを見せるときがあるのよ」
とマチルダさんが言ってきた。
「そ、そうか。空間に描くのでなく、スクリーンの上に投影するイメージでいいんだ。凄い、マチルダさん、ヒカリゴケの粉末の幕ってどうやったら手に入りますか?」
「そうね、私の研究室にあったと思うから、明日、渡すので受け取って。但し、一人で気を失うような危ない実験はしないでね。アンナ、あなた、明日は授業あるの?なかったら、王子の実験に付き合ってあげて!ヒカリゴケを持っていって欲しいの」
アンナさんが僕のお目付け役に任命された。
「王子、もし、ライトの魔法の実験が上手くいったら、魔石があれば誰でもライトの魔法を使うことが出来るようになるということですか?」
とオルフェス先生が言葉をかけてきた。
「魔道具という形になると思いますが、そうなります」
即答する。
オルフェス先生が難しそうな顔をして、続けた。
「それはそれで困ったことになります。今まで魔法と無縁だった人にライトの魔法が広まるという事になります。これは夜の暗がりを怖がらなくてすみますから、これが広がると、当然、利権が生まれます。全国で広がる可能性のあるこの利権は莫大なものになるでしょう。
販売するのはレバークレーゼン商会にお願いするにしても、庇護を得る王侯貴族を選ばないと、暴力で奪いにくる輩から逃れられません。それまでは、実験が成功しても口外はしないでください。もしくは、情報を限定的にしてください。よろしくお願いします。
さもないと、危険はあなただけでなく私ども家族および学院内に広がります。私は明日レバークレーゼン商会長とあなたのことで話す予定で、会長と一緒に王宮のどこかの派閥に庇護を求めに行くつもりです。利益も相当奪われるでしょうが、アレクサンド市の建設までの我慢です。耐え忍ぶ覚悟はおありでしょうか?」
『建設?耐え忍ぶ?』
そんな気は起きないが、自分のやっている事の危うさには気づいた。
「分かりました。気をつけます」
オルフェス先生がさらに続けた。
「それと王子。貴方の実現したい事と進捗を毎日、この食事の時間で良いのでお話し頂けないでしょうか?よろしくお願いします。長々と話をしてしまい、食事が冷めてしまいました。温め直されますか?そうですか、宜しいですか?」
僕は冷めた夕食のステーキを食べながら、ヒカリゴケを使ったスクリーンの作り方を考えていた。布に塗布するとしても均一性が必要だ。塗布するにはスプレーみたいな噴霧器が必要だ。
聞いてみる必要がある。
「霧吹きみたいなものはありますか?」
反応が薄い。多分、見たこともないようだ。とすれば、吹き付けることで均一を保つのは難しいようだ。ならば、水の上にヒカリゴケの粉末を浮かして、浮かした状態で均一を確認したうえで、木の板とかを上に被せて、ヒカリゴケを貼り付け、乾かすのはどうだろう。
この乾いた木の板に自分の思い描くライトの魔法を描いてみることは出来ないだろうか?なんか、思わずニマニマしてしまった。
この笑顔を不審そうに見ているオルフェスファミリーがいた。




