第3話 知らない場所へ
「お嬢様~、逃げてください」
執事のセバスが叫ぶ。いつの間にか魔物が近づいてきた。
少しでも早く家に帰りたいという私のワガママのせいで、無理やり森を突っ切る近道を選んだばかりに、魔物の群れに囲まれてしまった。
ブフォブフォ、ブフォ。プギャ。ブフブフ。魔物の息遣いが聞こえてきている。もう、護衛の冒険者はどうしたの?
「お嬢様~、逃げてください」
と、セバスの声。
「護衛は逃げてしまいました。商会の人間しか残っていません。私が戦っている間にできるだけ遠くへ~」
私は馬車から飛び降りようと扉を開こうとした。
すると、目の前にオークのギラギラした目があった。もう、すぐ近くまで来ていたのだ。
ブフェラ、フェッ、フェッフェ。くさい息がかかりそうだ。
『嫌だ、殺される、誰か、誰か助けて!』
恐怖に喉が締めつけられ、声にならない。
急いでドアを閉め、内側から鍵をかけた。
がんがん、扉をたたく音と同時に馬車が揺れる。
「あー、もうだめだ。お父様、助けてください」
◆
「どいてくれ~」
叫びながら、僕は知らない道を走っていた。意識が戻ったばかりだった。
セーフティセンサーも既に壊れてしまっているのだろう。次々に動物らしきものをはねている。不自然にピコン、ピコンとした警戒音が脳内に響く。
方向を変えようと腕に力を入れるがハンドルはロックされたままで何もできない。
目的地へのオートパイロット機能が働いているのだろう。
でもどこに行くの?
絶望感あふれる頭で考えた不具合要因は、ナビシステムのアップデート。
従来の2次元ナビを3次元ナビへ変更しなかった。だからZ軸が不定になり、目的地設定がバグったのだろう。
なぜ一緒にアップデートしなかったのか?
だって、システムの担当が違うのだ。
おーっと。
ドーンという大きな音と同時に、動物?にぶつかって大きく道をそれ、近くの森へ突っ込んだ。木々を押し倒しながら車が進んでいく。
あー、もうだめだ。何回目かの絶望感。
やっぱり、死んじゃうのかなぁ。




