第4話 ここはどこだ?
バキバキバキバキ。
木々をなぎ倒していく、その先が少し開けている。
それでも車は走りを止めない。
開けた先にいたのは巨大な体に分厚い筋肉をまとった何かだった。
「な、なんだ、あれは……」
突き出したあごに生えた2本の牙、豚のような鼻、ぎょろりと動く小さな目。
太い腕には僕の背より長いこん棒を持っている。
ぼろ布を一枚巻いただけの姿だ。
こちらを見つめると、地を蹴って走り寄って来た。
「待ってくれ」
なんて言っても待ってくれることもなく、その怪物はこん棒を上段から振り下ろす。
「もう、本当にだめだ」
こん棒がフロントガラスに当たると同時に大きな音を立てて車と怪物が衝突した。
バリーン、ド、ドン、ドガーン。
僕は車のシートごと、割れたフロントガラスから放り出されて宙を舞う。
車は怪物を巻き込んだまま、見たこともない太さの大木に激突し、爆発炎上する。
僕は転がりながらも、同時に展開されたエアバッグのホールド機能に守られ、奇跡的に無傷だ。
怪物の様子を見ると車の炎の中で絶命しているようだ。
安心からか、擦り傷の痛みを感じ始めた。あたりを見回すと、馬車のようなものがある。周りに何人か倒れていた。一番手前に倒れている人を抱き起こしてみると、荒い呼吸をしている。でも、あきらかに日本人ではない。
痛みで呻くように目をつぶっているが、銀髪で鼻筋が高く、白人の老人だった。黒服のヨーロッパの執事のような前時代的な恰好である。
「Are you in pain?(痛みがありますか?)」
拙い英語で聞いてみる。
「Where does it hurt?(どこが痛いのですか?)」
声かけに目が薄っすらと開いて、唇が動く。
「#△〇□」
聞き取れず、再度、血が出ている腕を持って、
「Is your arm hurting?(腕が痛みますか?)」
「¥*@%$」
えっ、わからない。どこの言葉だ?どうしよう。でも、彼は痛む腕を上げて横倒しになった馬車を指さす。かすかにうめき声のような声が聞こえている。まずいかもしれない。老人に促されるまま、急いでそちらに向かった。
かなり大きい。ちょっとした小屋サイズだよ。
壊れた車輪をよじ登ってひしゃげた扉を開ける。陽の光が差し込んだ先に女の子がうずくまっている。




