第21話 魔道具 実験
五枚の魔道具を並べて見つめている。漠然と眺めても何も浮かばない。ただし、頭のモヤモヤは無くなった。きっと、魔道具と鑑定出来たからだと思う。
このままではいけない。
数分だろうか、小一時間だろうか?ずーっと眺め、考えていた。やはり、何も変わらない。解析のアプローチが間違っているのかもしれない。はっと、別の方法に気づく。
この道具の機能仕様はなんだろう?その仕様が分かればある程度、実現する機能構成がわかるのではないだろうか?それから、その機能の解析を行えばこの魔道具を復元出来るかもしれない。
まず、どこで、何のために使うものなのかを考える。
火の魔道具という事から、火を熾すものだろう。火を熾してやる事と言えば、食べ物の煮炊きとか、灯りとか、暖房とかだろう。とすれば、何処かに同じものが使われているかもしれない。こういうのを使っているとしたら?と考え、僕は宿に戻り、宿の主人に聞くことにした。
結果は成果無し。煮炊きに関しては炭を固めてある練炭のようなもので行っているという事だった。灯りに関してはランプか蝋燭を使っているとのこと。暖房に関しても暖炉で薪を燃やしているとのこと。残念である。
ギルドに戻って困った時のエミリアさん、
「エミリアさん、火の魔道具って聞いた事があります?」
「ヒロシさん、いきなり何? 火の魔道具? たまに、ダンジョンから出てくるやつね。ほとんど壊れているんだけど、ごくまれに動くものがあって、貴族とか、大商人が買っていくわ。レバークレーゼンさんも持っているんじゃないかしら。
私達が使う事は無い。
出来る事?
ギルドでもオークションの前に動作確認をすることがあるけど、なんかしょぼい火が出るだけで、面白味も何も無いよ。買う人は財力を自慢したいだけよ。
動かし方?
どうだったかなぁ。あの時は、魔石を真ん中に置いたら、小さな火が10cmくらい上に出て、魔石を取り除いたら、消えるといった感じじゃなかったかなぁ。つまらないよね。夜のランプの代わりにはなりそうだけど、何かのはずみに火が付いたら火事になるし、危ないわよ。
急に、どうしたの? 魔道具なんて?
段々胡散くさくなってきたね。
魔石?魔物からとれる石よ。あー、あった」
カウンターの引き出しを探していたエミリアさんが取り出した。
「綺麗よね。大きいほど価値が上がるのよ。こんな豆粒みたいなのは小さすぎてお金にならない、屑魔石というの。
いくらか?」
少しエミリアさんが考え込んだ。
「無料でも良いんだけど、……レバークレーゼン家に請求すればいいか……100個1Gでどう?
あ、いえ、お代は結構よ。レバークレーゼン家からもらうから」
最後のほうは、ほとんど独り言だった。
というやり取りで豆粒大の魔石を手に入れた。これで、実験の続きが出来る。
ギルド裏手のゴミの山があるところに戻る。
五枚の魔道具を地面に並べる。魔石を乗せる中心が比較的綺麗なモノを選ぶ。赤い魔石をひとつそっと乗せる。瞬間、円盤の中心の円が光り、その円から星へ線が光りはじめ、外周の円に到達すると、外周の円が空中に浮き出て、その真ん中に魔素が集められた――ように思えた。しかし、その後何も変化が無い。動作が停止したようだ。円盤に変化が無いか確認すると、魔石の色が薄くなっている。魔石というくらいだから、魔力を持った石だろう。魔力が出力されると、その分、色が薄くなってしまうのかもしれない。
これがもしかして、魔力切れ?だとしたら、やりようがある。危険かもしれないが、僕の魔力を供給するのだ。
恐怖より興味が勝った。自分の右人差し指を円盤の中心部にあてる。体から何かを吸い取られる感覚がある。円盤の中心の円が光る。それから、星へ光が走る。そして、外周の円に到達し、先ほどと同じように、外周の円が光の環を作って、10cm程度空中に浮かんだ。魔素が急速に集まりだしているのが分かる。
見ていると、さっきは変化のなかった星が点滅し始め、何かが起ころうとしている。急激に体から何かが抜けていく。どんどん何かが体から抜けていく。
あー、ダメだ。意識がなくなる。
手をこの石の円盤から離さないと危険だ。
しかし、円盤の10cm程上空に小さな火種がでてきている。
もしかして、もう少しで、火がでてくる。
もう少し、もうすこし。
意識を手放した。




