第12話 噓をつくのも生きるため
老人はひとしきり小声での会話の後、納得した顔になり僕に話しかけてきた。
「この国にある魔法学校を紹介したいと思います。しかし、入学金や授業料の保証は私がするにしても、この国で作成された身分証がないと入学手続きが出来ません。まず、この国の身分証を作って下さい。ただ、作るためには犯罪歴の確認もあります。お話ししている感じではそういった心配も必要なさそうですが、万が一の場合はその場で拘束され、国へ強制的に送還されます。最悪の場合はその場で処刑される事もあります。それでも身分証を作られますか?」
「大丈夫です。よろしくお願いします」
ためらいも無く答える。
「安心しました。ヒロシ様の身分証ですが、この街の冒険者ギルドの審査が比較的簡単で、身分証を短時間で発行する事が出来ます。まず、そこで作成されたらどうでしょうか?ただ、冒険者としての登録になりますので、ギルドの依頼をある程度こなさないといけないという制約があります。しかし、実際の依頼に関しては私どもから指名依頼をしますのでなんとでもなります。ご安心ください」
「分かりました。ご配慮ありがとうございます」
「セバス、後はよろしく頼む」
老人は役目を終えたかのように、フーッと息を吐いた。そして、ゆっくり立ち上がると、
「また、何かありましたら、お声がけ下さい」
と言って、奥の机に戻り、席につくと、机の上にある書類の束から別の書類を取り出し、目を通し始めた。
退出しろ、というサインのようだ。
セバスさんを見ると、にこやかに頷いた。
「本日はゆっくりなさって、明日、身分証を作る手続きをしましょうか。さあ、打ち合わせを兼ねて部屋に戻りましょう」
部屋に戻った。ソファに座る。何か言いかけたセバスさんを制するように、戻る間ずっと考えていた事を伝えた。
「身分証の手続きですが、今から出来ないでしょうか?特に何をするという事はないのですが、見ず知らずの私がこの家にいては余計な気を遣わせてしまいます。できれば、身分証を作り、宿を借りられたら良いなと思っております。学校に行かせていただくご厚意は受けるとして、私も一日でも早くこの国の生活に慣れたいと思っているのです。ワガママ言って申し訳ございません」
セバスさんはそのまましばらく立ち尽くすと、
「旦那様に確認して来ますのでしばらくお待ちください」
また、一人になった。




