第五話 過保護な王女殿下
よろしくお願いします
それから数日、フィオナはことあるごとにリゼルのもとへ姿を見せるようになった。
「はい、リゼル。今日のお弁当、一緒に食べましょう」
「殿下は王族専用の食堂があるのでは」
「あんな堅苦しい場所より、あなたと庭園で食べる方がずっと美味しいもの」
フィオナは当然のようにリゼルの隣に座り、持参した弁当を広げる。しかも、なぜかリゼルの分まで用意されていた。
「これは……」
「厨房に無理を言って、二人分作ってもらったの。遠慮しないで」
戸惑うリゼルをよそに、フィオナはテキパキと取り分け、あろうことか一口大に切った肉を、フォークに刺してリゼルの口元へ差し出してきた。
「あーん」
「じ、自分で食べられる」
「いいから。今日は疲れてるでしょう、実技の授業で無理して魔力を抑えてたみたいだし」
見抜かれている。リゼルは観念して、差し出された肉を口にした。
(何なのだ、この距離感は……)
千年前、忠実な部下からでさえ、これほど無防備に世話を焼かれたことはない。むしろ距離を置かれ、畏怖されることの方が常だった。
フィオナの態度は、明らかに度を越していた。授業の合間には必ず様子を見に来る。雨の日には傘を持って迎えに来る。図書室で調べ物をしていれば、いつの間にか隣の席に座っている。
「殿下、いささか過保護が過ぎるのでは」
「あら、心外ね。私はただ、気になる子の面倒を見ているだけよ」
フィオナは悪びれもせず、リゼルの前髪を指先でそっと整えた。
「あなたを見ていると、放っておけないの。強いくせに、どこか危なっかしくて……ずっと一人で戦ってきたみたいな、そんな目をしてるから」
その言葉に、リゼルは息を呑んだ。
まさか、見透かされているのか——そう身構えたが、フィオナの表情に他意はなかった。純粋な、心配と好意だけがそこにあった。
「な、何を根拠に」
「勘よ。私、こう見えて人を見る目には自信があるの」
フィオナは悪戯っぽく笑うと、リゼルの頬に人差し指でちょんと触れた。
「それに――可愛いから、ってのもあるかしら」
「なっ……!?」
普段は動じることのないリゼルの顔が、初めて分かりやすく赤く染まった。フィオナはそれを見て、心底嬉しそうに声を上げて笑った。
「ふふっ、そんな顔もできるのね。ますます気に入ったわ」
(この王女、手強すぎる……)
千年の戦いを生き延びた王でも、少女の距離感の詰め方には全く抗う術がなかった。
よろしくお願いします




