↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元・覇王の最強魔王、少女に転生したら「普通の人生」を送りたかった。⸻なのに勇者も王女も魔族も私を放っておいてくれない  作者: KiedeJWL


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

第四話 王女、庭園にて

よろしくお願いします

 計測石破損事件は、その日のうちに学園中を駆け巡った。


「あの子、辺境出身なのに歴代最高記録らしいわよ」

「計測石を壊したのなんて、開校以来初めてだって」


 廊下を歩くたびに向けられるひそひそ話に、リゼルはひたすら小さくなって過ごしていた。目立たないどころか、初日にして学園中の有名人になってしまった。


 昼休み、人目を避けるように学園の奥にある庭園へ逃げ込んだリゼルは、そこで思いがけない人物に出くわすことになる。


「あら。あなた、噂の転入生ね」


 薔薇の生垣の向こうから現れたのは、金色の巻き毛を揺らす、気品ある少女だった。制服の意匠が、他の生徒とは明らかに違う。


「フィオナ・カレンディア……第一王女殿下」


 リゼルは反射的に片膝をつきそうになった。長年の――否、正確には数百年ぶりの、王族に対する礼儀作法が体に染みついている。


「そんなに畏まらなくていいわ。ここは学園、身分は関係ないもの」


 フィオナは楽しそうに笑い、ためらいなくリゼルの隣に腰を下ろした。距離が、驚くほど近い。


「計測石を壊した子に、直接会ってみたかったの。ねえ、あなた、本当はどれくらいの魔力を隠しているの?」


 紫水晶のような瞳が、まっすぐにリゼルを射抜く。ただの好奇心ではない。この王女は、何かを見抜こうとしている――そんな鋭さがあった。


(厄介な。この国で最も聡明な王族というのは、伊達ではないということか)


「さて。私自身、驚いているところだ」


「ふふ、その喋り方も気になっていたのよね。まるで、どこかの物語に出てくる王様みたい」


 図星を突かれ、リゼルは思わず言葉に詰まった。フィオナはそれを面白がるように、くすくすと笑い続けている。


「怖い顔をしてるわりに、存外わかりやすい人ね、あなた」


「……そのようなことを言われたのは、初めてだ」


「そう? なら、私が最初の一人ってことね」


 そう言って、フィオナはごく自然にリゼルの手を取った。


「これから、仲良くしましょう。リゼル」


 その手の柔らかさと、屈託のない笑顔に、リゼルの中で何かが小さく音を立てて崩れた。千年の統治の中で、王族から友好の手を差し伸べられたことなど、一度もなかった。


(……悪い、気分ではないな)


 二度目の、そんな感想だった。

よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。