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パウロの旅  作者: shimura_sleepy
第1編 セトマイカ
6/11

第4話 透明になる魔法です。

「依頼は2つあって、1つがお母様に謝るために、一緒に過去へ行くこと。もう1つがお母様がどうして名古屋に行ったのか一緒に調べること。で、よろしいでしょうか?」

「うん。それでいい」

「すぐに実行致します。まずお母様に死ねと言った時間、お母様が名古屋に到着した時間は知っていますでしょうか?」

「私がお母さんに暴言吐いたのは朝の8時くらい。いつも8時に家出てるからだいたいそれくらいだと思う。お母さんが名古屋に到着した時間帯は知らない。でも、どうしてそんなこと知りたいわけ」

「目的の時間帯が分からなければ、移動する時間帯も決められないためです」

「そう。それじゃあ、その件はあんたが調べてくれる? 申し訳ないけどさ」

「分かりました。それでは調べてきます」

 そう言うとパウロは消えた。物音一つ立てず、いなくなった。

「は?」

 そんな言葉しか出なかった。言葉にしては短すぎるが。

 何が起こったのか理解できなかった。

 どうしてこんな化け物のことを忘れてしまうことができたのだろうと思った。

 パウロとこの前会ってから、パウロが何をしたのかは覚えていなかったが、パウロの存在だけは覚えていた。それが不思議だった。

 再会すると「以前の記憶を一旦取り戻しますね」と言い、私の頭に手を違づけた。数秒後、以前の記憶が蘇っていた。

 やっぱりこいつは化け物なのだ。悪さはしてこないだろうけど、常識を超えてくるそんな化け物なのだ。

 マイカはパウロが高速移動して、どこかに消えたのだろうと思っていた。

 待っていたら戻ってくるはず。そう思って周囲をキョロキョロしていると、いなくなっていたはずのパウロが目の前にいた。戻ってきていた。

「どこ行ってたの? 急に消えて急に戻ってきて、ちょっと気味悪いけど」

「それは申し訳ありませんでした。過去に行って、時間帯を調べていました。マイカ様が死ねと言って家を出たのは、7時55分ごろ。お母様が名古屋に到着したのは、13時25分ごろでした」

「は? もう調べてきたの?」

「はい」

「どうやったの?」

「特別なことは何もしていません。タイムスリップをして、過去に行って調べてきただけです。戻ってくる時間を私が消えた時間の数秒後にしたので、数秒で調べてきたように見えるんです。ただこの時間に帰ってきただけです」

 話していることの意味はわからなかったが、こいつには何度も驚かされるなと思った。だけど不思議とそれが嫌じゃない。むしろ飽きないな、と内心笑った。


 数日空けて、とうとうタイムスリップをすることにした。

 数日空けた理由は、心の準備が必要だったからだ。

「いつでもすぐお母様に会いに行けます。今でも行けます」

 パウロにはそう言われたが、死んだはずのお母さんにすぐ会いに行く気にはなれなかった。

 それにパウロの能力についてもすぐ飲み込むこともできなかった。

 だから数日間心を落ち着かせる期間が必要だったのだ。

 休日のお昼頃、私の家の近くの公園に集合した。集合時間に家から公園に向かうと、そこにはもうパウロがいた。ベンチに座っていた。

「こんにちは」

「うん。こんにちは。待った?」

「はい。少々待ちました」

「こういう時は全然待ってないっていうんだよ。なんかあんた空気読めないよね」

 ベンチに座ろうとすると、背もたれがスプレーで落書きされていた。近所の悪ガキがやったのだろう。最近までこんな落書きなかったのに。

「ところでタイムスリップをする準備はできましたか?」

「うん。できた」

「それでは今からワープします」

 怖くて目を閉じた。

「到着しましたよ」

 パウロにそう言われて目を開けた。

 だが、景色は全く変わってなかった。さっきまでいた公園と何も変化がなかった。

「これ、本当にタイムスリップしたの?」

「はい。完了しました。今はマイカ様のお母様が亡くなった日の朝の7時30分になります」

「本当なの? だってさっきの世界と何も変わらないじゃない」

「空を見てください。太陽の位置が違います」

 確かにそうだった。さっきまでいた世界では太陽は高く真上に登っていたはずなのに、今はまだ登りたてという感じで太陽は低く位置している。

 でも気のせいのような気もする。

「なんか、これ!っていうわかりやすい変化はないの?」

「そうですね。ではこのベンチをよく見てください」

 そう言われて、立ち上がりベンチを眺めてみた。

 ベンチの背もたれからスプレーの落書きが消えていた。

「なんで? さっきまでここ汚れてたのに」

「これがタイムスリップです。落書きされる前の時間帯に戻ったのです。そろそろ行きましょう。もうすぐ、マイカ様が家を出る時間帯になります」

 二人で家に向かい、マイカの家があるマンションの下に到着した。私が死ねと言って家を出る時間である7時55分の少し前だった。

「もうすぐ過去のマイカ様が家から出てきます。このままだと遭遇してしまいますので、魔法を使います」

「どんな魔法?」

「透明になる魔法です。......もう大丈夫です。透明になりました」

 マイカは自分の手や足を見た。透明だった。だがそこに手や足があるということはわかるくらいの透明度で目で認識はできるのだった。

「これ、透明っぽいけど近くに来たりしたら、結構見えちゃうんじゃない?」

「私やマイカ様の姿は私とマイカ様しか認識できないようになっています。完全に透明にすることも可能ですが、そうすると自分の手足や私のことが見えなくなってしまいます」

「そうなんだ。まあ他の人から見えないならいいけど......。ていうか、今家の中どんな感じ? 私とお母さんが喧嘩してるのかな」

「聞いてみますか?」

「聞く?」

 するとパウロはマイカの耳の近くに手を出した。そうすると、マイカの耳にある音が流れてきた。

「私の声だ。お母さんの声もしている」

 それは二人が喧嘩をしている音声だった。

「これ、家の中の音声ってこと?」

「そうです」

「盗聴してるってこと?」

「そうなります」

「あんた、普段からこんな魔法使うの?」

「私用では使うことはありません。もっとも過去には使ったことがありましたが」

「何の目的で使ってたの? 答えによってはきもいかもしれないけど」

「敵の会話を盗聴するために使っていましたね。あの頃は自分の国の国民を守るのに必死でしたから、どんな手段でも使っていました」

 どういうこと? そう聞こうとした、その時だった。

 盗聴している音声から「死ね」という言葉と、玄関のドアをバンッ! と勢いよく閉める音がした。

「そろそろ過去のマイカ様がやってきます」

 トントントン。階段を降りてくる足音が聞こえた。喧嘩して怒っているから、勢いよく階段を降りているようだった。

 音はどんどん近くなり、やがて目の前にマイカが現れた。

 ーー私だ。

 過去のマイカはマイカやパウロに気づく気配がなく、素通りして学校に向かった。

 本当に見えないんだ。マイカはそう思った。

 

 マイカとパウロは階段を登り、自分の部屋に向かった。

 マイカの母親に会うとしたら、この時間しかなかった。

 例えば9時以降だったら、どうして学校に行ってないの? と聞かれてしまうことになり、場合によっては学校をサボっていると思われて怒られてしまい、話にならなくなってしまう。

 だから家を出てすぐ謝りに来たという設定にしないと難しかった。

 マイカはとうとう自分の家の玄関の前に立った。

 どんな顔をしたらいいか分からない。それでも勇気を出して、ドアを開けることにした。

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