表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

892/1471

892.サンゴの森の主

 ゼティアの門を目指し、メイたちはサンゴの森を駆けていく。

 人魚の言う通り、ここは美しい光景に見合わぬ恐ろしい場所のようだ。


「ツバメ、【酔い】は大丈夫?」

「はい、戦闘が終わって少ししたら収まりました」


 すでに森は『警戒状態』

 色とりどりの魚たちが、群れをなして標的を探している。


「サンゴや魚たちは兵器だけあって、戦いの気配に敏感です」


 海洋兵器の流出を留めてきたイルカを抱えた人魚は、そう言ってハッとする。


「こちらへ!」


 そして、慌ててテーブル型サンゴの背後に身を隠す。

 直後、青い魚の群れが一斉に通り過ぎていった。


「出口まではあとわずか……このまま無事たどり着ければいいのですが」

「無事にたどり着ければ……」

「はい、確かに聞きました」


 そんな人魚の言葉に、レンとツバメは自然と武器を構えつつ歩き出す。


「レンちゃん、ツバメちゃん……?」

「無事に着ければいいのですがって、祈るように言ったら間違いなく強敵が出るわ」

「そーなの?」

「そ、その可能性が高いですっ」


 うなずくまもりに、メイは「なるほどー」と感嘆する。

 各自がこの後「強敵が出るはず」と、意識しながらサンゴの森を進んでいく。すると。


「……そんな」

「はい【フレアストライク】!」

「はい【投擲】!」


 容赦なくレンは炎砲弾を、ツバメは【雷ダガー】を発射。

 視線の先にあったのは赤から桃色、そして先端にかけて白くなっていく大樹のようなサンゴ。

 その付近を、淡い緑の魚たちが泳いでいる。


「やりましたか……?」

「さすがにダメみたいね」


 驚きを見せている人魚が説明を始める前にした攻撃は、どうやらカウントされないようだ。

 傷の一つも負っていなければ、付近の魚たちも逃げていない。

 二人はおとなしく、人魚の話を聞くことにする。


「これはヤドリサンゴ……本体の増殖再生だけでなく、魚型の住処になる基地のような兵器です。それがここまで大きくなってしまっているとは……もはやイルカたちでは、その増殖を止められない状況なのかもしれません」


 人魚はできるだけ距離を取り、そっとサンゴの背後にある出口を目指す。

 しかし索敵範囲を広げていたヤドリサンゴはこちらに気づき、天敵であるイルカに攻撃をしかけてくる。


「気づかれました……っ!」


 ヤドリサンゴはその触手を一気に伸ばし始める。

 するとその隙間から、大量の淡い緑の魚たちが現れた。

 その数はなんと約4000匹。


「イ、イワシの群れの様です……」


 異常な数に、さすがに驚くまもり。

 その高い密度から放たれるマシンガンのような【体当たり】を喰らえば、ただでは済まないと即座に理解できるレベルだ。


「きますっ!」


 ツバメの声と共に、一斉に空を泳いで迫る魚群。


「【加速】!」

「【バンビステップ】!」


 立ち止まって回避できるレベルではないと判断し、メイとツバメが走り出す。


「【フレアストライク】!」


 群れの横っ腹を叩くような形で、レンが炎砲弾を放つ。

 しかし魚群は、一部の形をゆがませてそれを回避。

 一匹の被害も出さないまま進行を続ける。


「まさに魚の大軍そのものね……!」

「それなら……これでどうですか! 【紫電】!」


 ツバメは足を止め、追ってきた魚群の戦闘に電撃を放つ。

 その密度の高さを利用し、通電を狙う攻撃は見事。

 まとめて数百匹の魚たちが硬直した。

 この隙を狙って駆けつけたメイは、そのまま剣を振るう。


「【ソードバッシュ】!」


 放たれた衝撃波を伴う一撃は、硬直中の魚たちを吹き飛ばす。

 しかし後続の魚たちは硬直した個体たちを捨てて、回り込むように進行。

 そのままメイ目がけて、真横からなだれ込む。


「【かばう】【コンティニューガード】【地壁の盾】!」


 即座にまもりが飛び込み、猛烈な魚たちの突撃に対応。

 機関銃のごとき猛烈な金属音を鳴り響かせる。

 無事防御が決まり、安堵の息をつく二人。


「まだですっ!」


 ツバメの声に、慌てて状況を確認。

 魚群はすさまじい勢いで反転し、再びまもりたちを狙う。


「まもり!」

「はひっ! 【天雲の盾】!」


 しかしここでかけられたレンの声に、すぐにその意図を察する。

 まもりは盾を、迫る魚群ではなくレンに向けた。


「【フレアバースト】!」


 まもりを狙って放つ炎は当然、まもりを狙って進行中の魚群に向けられる。

 慌てて爆炎の軌道から離れるが、さすがに群体全てが回避することはできない。

 炎を喰らった魚群は、さらに数百匹ほど数を削られた。


「今度はなに……?」


 見事な攻撃で早くも数を減らされた魚群は展開し、メイとまもりを取り囲む。

 そして群体から個体での攻撃に変更し、一斉に『渦』を描くように泳ぎ出した。

 狙いはもちろん、中心にいるメイとまもりへの突撃だ。

 二人に全方位対応の攻撃や防御はない。

 魚刃の渦は、あっという間に狭まっていく。


「あ、あの……メイさん」


 そんな中、一つの攻略法を思いついたのはまもり。


「ええっ!? 大丈夫?」

「た、たぶん……」


 そう言って、おずおずと両手を出してきた。


「りょうかいですっ!」


 メイはまもりの両手をつかみ、「いきますっ」と気合を入れる。

 そしてそのまま、その場で回転。


「いきますっ! 【大旋風】!」

「「ッ!?」」


 まさかの事態に、驚愕するレンとツバメ。

 なんとメイはまもりをつかんだまま、高速回転を開始。

 その速度をドンドン上げ、コマのようになったところで、接近する魚たちと接触。

 そのまま魚の渦を、弾き飛ばし始める。


「それそれそれそれーっ!」


 魚たちは個々のHPが低く、次々に弾き飛ばされ消えていく。

 そのまま回転を続けたメイはやがて、まもりで竜巻を生み出し魚群を巻き込んでいく。


「……と、とんでもない攻撃ね」

「まさか、まもりさんで魚たちを弾き返すとは……」


 そして二人が回転を終えた時、そこにはもう魚の姿はなかった。

 これには唖然とする、レンとツバメ。


「さすがに目が回るかもぉ……っ」

「はひぃっ」


 二人して支え合うメイとまもり。

 すでに異変は始まっていた。

 魚群との戦いの間に、サンゴは大きく増殖。

 付近一帯を、半球型に覆い尽くしていた。


「【フレアバースト】!」


 レンは先行して爆炎を叩き込み、サンゴの網に穴を穿つ。

 しかし即座に再生し、サンゴは増殖を続ける。


「【瞬剣殺】!」


 ツバメも上方から迫るサンゴを斬り飛ばすが、再生増殖の速度の方が明らかに早い。さらに。


「【フリーズブラスト】! 【フレアバースト】! 核が見えない……とにかく広範囲の攻撃で、何とかしろっていうこと?」


 穴を開けても開けても再生し、その範囲を広げるヤドリサンゴ。


「メイ! 一緒にお願い!」

「りょうかいですっ! 【ソードバッシュ】!」

「【フリーズブラスト】!」

「【ソードバッシュ】!」

「【フレアバースト】!」


 範囲攻撃を交互に連続するメイとレン。

【ヘクセンナハト】を使ってもなお、サンゴの増殖が少し早い。


「全然減らないよーっ!」

「勢いが強すぎる……!」


 いよいよ付近一帯を包み出す、ヤドリサンゴの触手。

 その節々に見えるのは、状態異常の粉を含んだ実だろう。

 空間を侵食する形の兵器の恐ろしさに、四人は完全に押され出す。


「ッ!!」


 そんな中、回り込むようにして迫っていた触手にまもりがつかまりそうになる。


「【アクアエッジ】!」


 ツバメは水刃の二刀流で、すぐさま救出。


「ツバメさん、上ですっ!」


 そして頭上から伸びてきていた触手にも、慌てて攻撃を仕掛ける。


「【アクアエッジ】【八連剣舞】!」

「援護するわ! 【フリーズストライク】!」


 いよいよ押され出したツバメとまもり。

 援護のため、とっさに水刃に合わせた氷砲弾。

 すると大きく広がったサンゴの一部が、明らかに広い範囲で白く凍結した。

 この光景を見て、レンが気づく。


「凍結範囲が広い……! 範囲攻撃で押すより、弱点を突くことが攻略の鍵になるんだわ! メイっ!」


 レンの目配せに大きくうなずき、メイは右手を突き上げる。


「りょうかいですっ! ――――それではどうぞ、お越しくださーい!」


 空中に生まれた魔法陣。

 着地した巨象にメイたちは少し飛び上がり、サンゴや魚も揺れに一瞬動きが止まる。

 現れた象は、その鼻から大量の水を吹き上げ雨を降らす。


「さあ、これならどう!?」


 レンは【ヘクセンナハト】を構え、迫るヤドリサンゴの網に向ける。


「【フリーズブラスト】――――ッ!」


 放つ氷嵐の魔法は大きく範囲を広げ、水に濡れたサンゴをあっと言う間に真っ白く凍結させていく。

 その勢いはすさまじく、付近一帯が白く染まるかのような感覚を覚えるほど。

 そして、氷のオブジェができあがった。


「それではメイ先生、よろしくお願いいたします」

「うむ!」


 スッと下がるレンの笑みに、メイは応えるように前に出る。

 そして手にした剣を構えた。


「【ソードバッシュ】!」


 振り下ろすのと同時に巻き起こる衝撃波が、氷像と化したサンゴを粉々に破壊。

 舞い散る氷片の中、メイとレンはハイタッチ。

 海洋兵器区画のボスと化していた恐ろしい魔物を、見事な連携で打ち倒したのだった。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆新作よろしくお願いいたしますっ!◆◆◆

【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] 牧場編の掲示板の反応の語尾ポヨのキャラはスライムちゃんですね、他の掲示板組は特徴を出しにくいからいれるの少し難しいのよね、馬名は、レンのはダークナイトメアと最初考えたのですがどうせなら9文字…
[良い点] 様式美さんが危うく致命傷になるところだったw [気になる点] まもりちゃんのHPと耐久あっての合体攻撃だったな… [一言] レンちゃん「それではよろしくお願いします! …一回やってみたかっ…
[一言] 五月アナの動物伝説は予定を変えて、牧場編の後日談で星屑のフロンティアとあるゲームのコラボニュースの話にしようかと。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ