891.兵器サンゴ
「行きましょう……っ!」
海洋兵器である魚群から、イルカを助けたメイたち。
やはりこの大きなサンゴの森そのものが、危険な兵器の集まりのようだ。
フラフラのイルカを抱えて、人魚はこの空間を出るため急ぐ。
だが戦いに気づいた付近のサンゴには、すでに変化が現れていた。
鮮やかな赤紫色のサンゴは、メイたちを逃さないとばかりにその枝のような触手を伸ばし始める。
思わず目を奪われるような光景も、それが攻撃のための触手のようなものだと分かれば、話は別だ。
「今度は植物型ね! 【フレアストライク】!」
レンが放つ炎砲弾は迫る触手を焼き飛ばすが、ちぎれた先から瞬く間に再生。
サンゴはその身をすさまじい速度で増殖させて迫る。
高速で伸びてくるという少し変わった攻撃法に、ツバメはいつも以上に注意して短剣を振る。
しかしその増殖は早く、気が付けば前後左右にまで網の目状の触手が伸びていた。
「【瞬剣殺】!」
ここで空刃を巻き起こして、迫る触手を斬り飛ばす。
だがこのサンゴは、増殖の速度を自在に変えてくる。
「ッ!?」
右上方のサンゴが、急速成長。
ツバメの肩を斬りつけると、そこから大きな『手』のような形に成長。
その一つが、ツバメの肩口に張り付いた。
すると別方向から伸びていた触手が一気に広がり、実のようなふくらみを作り出す。
「【投擲】!」
ツバメは慌てて『実』になる部分に【ブレード】を飛ばす。
「爆発ではなく、状態異常ですか……っ!」
すると破裂して舞った粉末が、ツバメを【酔い】に追い込んだ。
驚くほどの速度で広がっていく赤紫のサンゴは、まもりにも伸びていく。
「【シールドバッシュ】! 【シールドバッシュ】! 【シールドバッシュ】!」
この攻撃を一番恐れているのはまもり。
斬撃や刺突なら問題はないが、絡みにこられたら防御が成立しない可能性が高い。
そのため連射の利く範囲攻撃で、迫る触手をとにかく叩いて壊す。
「っ!」
見えたのは、上方から迫る四本の触手が膨らみへと変わる姿。
始まる状態異常攻撃に、あわあわしてしまう。
「そ、そうです! 【かばう】!」
まもりは触手に狙われている『泥酔ツバメ』に向けて跳躍し、状態異常の実から距離を取る。
「【ローリングシールド】!」
さらに着地から振る盾の回転撃で、回避を成功させつつツバメも守ってみせた。
「思った以上にやっかいね……! メイ、風の支援をお願い!」
そう言ってレンが杖を構えると、メイは「りょうかいですっ」と敬礼ポーズ。
「いーちゃん、お願いっ!」
するとメイの言葉に応えて現れたいーちゃんが、シャドーボクシングしながら肩に登場。
まもりがツバメを抱えて走るという、めずらしい光景を見届けてから攻撃を開始する。
「【フレアバースト】!」
「いーちゃんっ!」
レンが放つ爆炎を、いーちゃんの炎が後押し。
駆け抜ける爆炎が、一気にサンゴを焼く。
「もう一回! 【フリーズブラスト】!」
「いーちゃんっ!」
続く氷嵐は、氷刃を含んだ暴風となってサンゴを千々に切り刻む。
「す、すごいです……」
荒れ狂う炎から、容赦ない氷嵐という攻撃に、サンゴは焼かれ刻まれ吹き飛んだ。しかし。
「再生していきましゅ!」
酔っているためか、ツバメが怪しい呂律で叫ぶ。
サンゴは、これまでを大きく超える速度で再生増幅を開始。
「【ソードバッシュ】!」
それを見たメイが、放つ衝撃波の一撃。
すでに巨木を思わせるほどまで増殖していたサンゴを、わずか一撃で粉々にする。
「……これでもダメなの?」
だが広い範囲に伸びたサンゴの範囲全てを網羅することはできず、また残った箇所から驚異的な速度の再生が始まる。
「再生が早まってる上に、範囲が広がってるわ……!」
「戦わないで、逃げた方が良かったのかな……?」
広がるサンゴの網が四人を包囲し始め、その不気味さに慌てるメイ。
「……放置したらどこまでも増殖して追ってくる可能性もありそうだし、見回りイルカが危険じゃない?」
レンは、メイにこの選択自体はおかしくないと告げる。
「ど、どうしましょう……っ」
「メイのステータス上げ攻撃に賭ける……? それとも二人で範囲攻撃をひたすら連射する?」
とはいえ、最悪この場は逃走を選ぶこともあり。
悩むレン。
「でも、そもそもイルカが外部への進出を抑えられているんだから、サンゴだって勝てない敵ではないはず」
人魚が抱えて守るイルカは一頭。
事前に出会った個体を合わせても二頭だ。
何か、抑え方があるのではないか。
「あ、あの、レンさんっ。もしかすると、核があるパターンかも……っ」
そんな中、聞こえてきたのはまもりのそんな声。
「それだわ! そういうことなら、核を見つけるだけよ! まもりとツバメは『目』を貸して! メイは攻撃の補助をお願い! 【フレアバースト】!」
「いーちゃんっ!」
再びレンは爆炎を放ち、いーちゃんの暴風で火力を向上。
サンゴの4割以上を焼き尽くす。
「【フリーズブラスト】!」
「いーちゃんっ!」
続けて放つ荒ぶる氷嵐で、回復を始めたサンゴをさらに粉砕。
「まだまだっ! 【フレアバースト】!」
「いーちゃんっ!」
そして三度目の爆炎。
やはり再生増殖の速度は早く、2割ほどのサンゴが残ってしまう。
これではいたずらにMPが減っていくだけだ。
嫌らしい戦い方をする赤紫サンゴはやはり、静かな強敵だ。しかし。
「見つけました!」
「見つけましゅた!」
まもりとツバメが核を発見。
サンゴには離れた位置に二つの核があり、そのどちらかが残れば再生増殖を始める形になっていることに気づく。
「【フリーズブラスト】!」
「いーちゃんっ!」
氷嵐がサンゴを大きく削り取ったのを見て、まもりとツバメが同時に走り出す。
低い場所にある右側の核は本体と同色で、わずかに外皮が厚い。
まもりはここで【魔神の大剣】を手に取った。
「やああああーっ!」
放つ【魔神の大剣】の一撃は、20%のクリティカル必中に賭ける、イチかバチかの攻撃。
直後、暗光が弾けるようなエフェクトは『クリティカル』の演出。
ここでも1/5を引き当て、まもりは見事に核を斬り飛ばした。
「【加速】【跳躍】」
一方ツバメは【酔い】によって、ままならない感覚のまま疾走跳躍。
高い場所にある核に向け、必死に体勢を整え攻撃に入る。
勝負をつけるための一撃。
ツバメは武器を【村雨】に持ち替えた。
やはり普段よりも、【酔い】のせいでジャンプ軌道がブレている。
「【回天】!」
空中で一回転して放つ斬撃が、美しいエフェクトを描く。
ツバメはそのまま着地して、そのままヒザを突く。
「「「「…………」」」」
成功か、はたまた失敗か。
何とも言えない一撃にメイが、レンが、まもりが、いーちゃんが思わず息を飲む。
すると直後、赤紫サンゴは石灰のように白くなっていく。
そして粉砕、そのまま白粉を散らして消えた。
「ツバメちゃんないすーっ!」
「お、おみごとでしたっ!」
「あのフラフラ状態で、よく当てたわね!」
歓喜と共に駆けつけてくる三人。
ヒザを突いたままのツバメは、安堵の息と共に顔を上げる。
「上手くいって良かったです」
「私たちはこっちよ」
明後日の方向に笑顔を向けたツバメの相変わらずさに、思わず笑うレン。
こうして四人はツバメに肩を貸し、並んでサンゴの森を進むのだった。
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