811.反転攻勢
怒涛の反撃から、一気に赤熱角の破壊に成功したメイたち。
豪華なオーケストラが演奏を激しくする中、HPが半分近くまで減ったルーデウスが立ち上がる。
全身を濃紫色の結晶に包んだ巨体は角を失い、確かな怒りを見せていた。
「……処刑だ。ルティアの前座として、思い上がった賊を無様に無惨に容赦なく処刑してやろう!」
「「ッ!!」」
爆発的な踏み出し。
前に立つメイとツバメを、一瞬で射程に入れる。
放つは結晶の集結によって、巨大化した拳の叩きつけ。
これをメイとツバメが左右に分かれ、斜め後方に跳んでかわすと、続けて突き出される左手。
「【爆炎樹晶】!」
触れれば斬れる結晶の枝が、高速で広がっていく。
しかし赤熱の角がなくなったため、爆発炎上はなし。
二人はこれを下がりつつ避ける。
砕け落ちる結晶枝。
ルーデウスは続けざまに飛びかかり、メイに拳を叩きつけにいく。
「【アクロバット】!」
粉砕を見越しての、大きなバク転。
地を叩くことで割れ砕けた結晶が、勢いよく広がる。
「【アクロバット】からの【アクロバット】!」
メイは続く二連のバク転で、これをギリギリ回避する。
「【跳躍】【回天】!」
ここでツバメが上方から【村雨】で攻撃。
あえてルーデウスはこれを防御して、尾による反撃に入る。
「【岩晶剛槌】!」
「なっ!?」
結晶の再構成によって、巨大なメイスのような結晶塊を付けた尾が目前に迫る。
ツバメは必死に避けにかかるが、肩を思い切り弾かれた。
「ああああっ!」
そのまま地面に突き刺さり、炸裂する尾。
その威力は高く、ツバメは地をバウンドして転がる。
「【フレアストライク】!」
追撃を止めるために放った魔法攻撃を回避したルーデウスは、狙いをレンに変更。
「【フリーズストライク】! 【フレアバースト】! 【フリーズバースト】!」
続けざまに放たれる氷砲弾と炎砲弾を左右の大きなステップでかわしながら前進し、氷嵐を跳び越える。
「ッ!!」
跳躍からの叩きつけは、どうにか後方跳躍で回避。
レンは炸裂に備えて防御するが、地面につけた手から広がったのは直径4メートルほどの結晶地帯。
「マズっ!!」
「【大剣紫峰】!」
「きゃあっ!」
水晶製の鱗のような刃が足元から高々と突き立ち、レンは2割強ものHPをもっていかれた。
「【暴風結晶】!」
「【かばう】!」
大きく弾かれたレンに向けられた手、走り出すエフェクト。
まもりが慌てて立ち塞がる。
放たれたのは、濃紫の結晶片を多分に含んだ暴風だ。
「【コンティニューガード】【地壁の盾】!」
これをまもりは、防御継続時間を伸ばすことで対応。
凄まじい擦過音が響き渡る中、見事にこの恐ろしい一撃を防御する。
しかし、終わらない。
「【竜巻結晶】!」
続けざまに放たれた、紫の魔力光弾。
「【コンティニューガード】【地壁の盾】!」
まもりはこれにも防御時間継続で対応する。しかし。
炸裂した魔力光は、結晶片を含んだ竜巻となってまもりを飲み込んだ。
その勢いは【コンティニューガード】が切れても終わらない。
通常の防御になった途端、冗談のような速度でHPを減らしていく。
「……防御し続けるなら、どこまでも削るってこと!?」
「【バンビステップ】!」
「【加速】!」
まもり救出のためメイとツバメが走り出し、レンも杖をルーデウスに向ける。
吹き荒れる竜巻を止めるため、先手を打つのはツバメ。
「【掌握結晶】」
「竜巻を出したまま、別のスキルも使えるのですか!?」
正面から迫るツバメは、虚を突かれる形になった。
結晶のアームがツバメをつかみ上げると、足元は結晶の床へと変わる。
「くっ!! ああああっ!!」
そのまま全力で叩きつけで、派手に割れ砕ける結晶床。
ツバメのHPは、残り3割を切った。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
放ったレンの魔法は、首を傾げたルーデウスの頬をかすめた。
これでようやく竜巻が止まり、まもりのHPは5割を割るところまで減少。さらに。
「【命ずる】! 砕け散れ【極大結晶】!」
「「「「ッ!!」」」」
天に生まれた魔法陣から隕石のように落下してきた、濃紫色の結晶塊。
地面スレスレで止まったひし形の巨大結晶に、凄まじい勢いでヒビが入っていく。
そして、粉砕。
弾丸のような速度で、全方位へと広がった。
「「ッ!!」」
予期せぬ範囲攻撃に、結晶片の嵐を受けるレンとメイ。
ショットガンを高速連射したかのような攻撃にレンのHPは4割を切り、メイも5割ほどになってしまった。
「……どうした、さっきまでの威勢は?」
全身に濃紫色の結晶をまとった、悪魔とミノタウロスの合成獣のごときルーデウスが笑う。
「所詮、賊の力などその程度のもの。新たな神となる我が前に立ち塞がった愚かさは大罪だ。その償いは、惨たらしい死をもってのみ行われる」
「結晶の範囲攻撃、エグすぎだろ……」
「これはさすがに……」
大きくHPを減らしたメイたちに、驚く掲示板組。
ルーデウスは四人パーティで戦えるような相手では、なかったのかもしれない。
観客たちの間に、そんな空気が漂い始める。
「レンちゃん」
「そうね、これだけ強いんだったらもう……出し惜しみは要らないわ」
「準備も万全です」
「は、はひっ」
「皆で戦闘中に種まきをするというのは、おかしな感じでしたね」
「おかげで結構もらっちゃったわ」
「「「…………え?」」」
そんな四人の言葉に、にわかに驚き出す観客たち。
一方掲示板組は「くるぞ……!」と、息を飲む。
「それではいきますっ!」
先頭に立ったメイが、元気に右手を突き上げた。
それは反転攻勢への合図。
集まる視線の中、思いっきり息を吸って準備完了。
「みんな一緒に……大きくなーれ!」
メイの号令に合わせて、まき終わっていた【豊樹の種】と【草原の種】が一斉に伸びていく。
「お、おお」
「「「おおおおおお――――っ!!」」」
四人全員で所持し、隙を見てまいていた種は、コンサート会場を深い森の遺跡のように変えていく。
隣りの木々にもその効果が波及し、これまでメイたちが進んできた中庭に、城内に、木々が容赦なく生えていく。
「いきます【疾風迅雷】【加速】!」
反撃の始まり。
生まれた密林の中、意外にも最初に走り出したのはツバメ。
【加速】の連続使用で、樹木の間を鋭角に駆け抜けていく。
「【電光石火】!」
そしてルーデウスとの間に『直線の道』が見えた瞬間、一気に接近。
斬り抜けをその腹部に叩き込む。
「【反転】【疾風迅雷】【加速】」
ここで振り返り、再攻撃ではなく再び木の隙間を駆けていく。
ルーデウスはその尾を振り回すが、密に生える木々に引っかかり思うように戦うことができない。
炸裂する結晶も、木々に阻まれ範囲は大幅減だ。
「【跳躍】」
その隙を見てツバメが跳び、再び【村雨】で斬りかかる。
防御でこれをしのいだルーデウス。
ツバメは伸びた草むらの中に、潜り込むように低い姿勢で着地する。
「そこだ!」
ルーデウスは、草むらから立ち上がったツバメを腕の叩きつけで潰しにいく。
しかしそれは【残像】
次の瞬間、視界の左側に見えたツバメ。
右手を結晶の刃に変えて斬る。
しかしそれは【分身】
さらに奥の木の陰から迫るツバメを、尾で弾き飛ばす。
だがそれも【分身】だ。
「「【跳躍】」」
聞こえた声に顔を上げるルーデウス。
そこには左右から同時に迫る、双子のごときアサシン。
ルーデウスは先行してくる左のアサシンに伸びる手刀を突き刺すが、それも【分身】だ。
「1/2を外しましたね――――【回天】!」
空中回転斬りに胸元を斬られ、のけ反るルーデウス。
「姿を消すのは、得意なのです」
森の中に消えるアサシンを前に、圧倒的な優位を取られた。
「貴様ァァァァ……ッ!!」
一方的な攻撃を受け、ルーデウスは怒りのままツバメを追う。
「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】」
しかしその巨体は邪魔となり、思ったような追跡ができない。
「――――そんな雑な走り方、してていいの?」
木々を押し倒しながら進む姿に、戦闘の最中とは思えない軽い問いかけをしたのはレン。
密林の中、枝の上に座ったままでいる一人の黒魔導士をルーデウスは逃さない。
すぐさま、木々にぶつかりながら突き進む。
するとレンは右手を伸ばし、指を鳴らした。
直後、木々に刻まれたルーンが続々発動。
接近するルーデウスを、生まれる氷の剣山が次々に切り刻んでいく。
しかし、それでもルーデウスは止まらない。
木々と共に氷剣山を折り、砕き、HPを減らしながらも狂ったようにレンのもとに駆け込んでいく。
そして、結晶の右手を振り上げたところで――――。
「解放」
草むらに隠されていた【設置魔法】【フレアバースト】が爆炎を吹き上げた。
「ほらね? 言ったでしょう?」
燃え上がるルーデウスを見て、クスクスと笑うレン。
ツバメとは正反対に、一歩も動くことなく敵を翻弄してみせた。
「最高です使徒長ぉぉぉぉ――っ!!」
「すげえ……今度はアサシンちゃんと使徒長ちゃんまで、密林の戦い方を編み出してる……!」
ヤマトの時には見られなかったレンとツバメの動きに、感嘆する掲示板組。
「でも、本番はここからよ」
密林の魔女はそのまま、木々の中へと消えていく。
こうなれば後に続くのは当然、この密林の王たるメイ。
ちょっと人目を気にしながら木陰で食べる、【敏捷】上げの果実。
【蓄食】で一気に10個を平らげたメイは、「よしっ」と気合を入れ直して笑う。
それから伸びをして、ピョンピョンと準備運動。
両手をグッと、強く握った。
「それでは、全身全霊全力全開でいきますっ!」
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