773.強風ウォールバトル
帝国の高い城壁の改修クエスト。
そこに現れたのは、深緑の魔物『緑鉱鳥』
鷲に似た外見の大型モンスターは、吹きすさぶ風を切るようにして飛来。
そのままかぎ爪での攻撃に入る。
「きゃああああああ――――っ!!」
回避の際にかすめた爪に弾かれ、一人のプレイヤーがそのまま落下する。
「【加速】っ!」
これをツバメがギリギリでつかみ、引き上げる。
「【フリーズストライク】!」
そしてレンが即座の牽制で、そのための時間を稼いでみせた。
「おい兵長さん! なんとかならないのかよ!」
「耐え抜け! 以上だ!」
自分は安全な見張り部屋の中にいる兵士長、冷徹過ぎる命令をくだす。
緑鉱鳥は羽ばたきながら、壁上の道に滞空。
「いくぞ!」
動き出したのは、ちょうど先頭にいた掲示板組だ。
「【ソードピアス】!」
放つのは、剣による高速の前進突き。
しかし緑鉱鳥は一度大きく羽ばたき、風を起こす。
大きな減速を受けた刺突は、届くことなく終わる。
「それならっ! 【ライトニングスロー】!」
続く槍の投擲も、風に軌道が曲がり大きく外れた。
「まだまだ【クリムゾンフレイム】!」
「それはちょっと待って!」
レンは叫ぶ。
しかし予想通り、放った炎が強風にあおられ掲示板組の方へ。
「「「熱っつい! 熱っつい!」」」
見事なリアクションで熱さを再現しつつ、各自2割ほどHPを減らされた。
ここで緑鉱鳥は攻勢に出る。
甲高い鳴き声と共に発せられたのは、直進する空刃。
「せーのっ! それっ!」
「「「せーのっ! それっ!」」」
足場の上を水平に飛んでくる空刃を、タイミングを合わせて跳躍回避に成功。
しかし着地時に吹いた強い風に、思わずバランスを崩す。
すると緑鉱鳥は特攻を選択。
大きく水平方向に一回転して、その広い翼でプレイヤーを打ち払いにきた。
「今度はしゃがみですっ!」
しかしメイの判断は早い。
攻撃の『範囲』を即座に見切って提言。
見事全員に回避を決めさせる。
「【投擲】!」
風が止んだ隙を突いて、ツバメが【雷ブレード】を放つ。
だが反撃までは許さない。
これも強風によって、明後日の方向へと流れていった。
「風が吹き続けてる状況が戦いづらいことは確かね……でも!」
緑鉱鳥は、こちらが風と攻撃で体勢を整えられずにいるのを突いて、今度はそのかぎ爪で攻撃にくる。
「その選択は失敗だわ!」
「【かばう】【不動】【地壁の盾】!」
ガーン! と派手な音を立てて、巨鳥のかぎ爪がまもりの盾に直撃。
【不動】を使ったのは大正解。
この一撃はもちろん、プレイヤーを壁から落とすための攻撃だ。
防御しても大きく相手を動かし、落下死を狙ってくる。
「この距離、風の影響のない魔法なら外れないでしょう! 【悪魔の腕】!」
足元に生まれた魔法陣から伸び出した悪魔の巨碗が、緑鉱鳥の足をつかんで地面に叩きつける。
「使徒長に続きます! 【フロストエッジ】!」
続く黒少女の後押しで、そのHPは3割ほど減少した。
すると空中で体勢を立て直した緑鉱鳥は、両翼を展開。
「羽攻撃……っ!」
飛ばした無数の『斬れる羽』が、吹き荒れる暴風に乗り高速で飛来する。
風によって飛び散る範囲攻撃は、対処が難しい。
「壁になるぽよっ! 【可変】【材質変化】っ!」
しかしこの攻撃を前に、スライムが形状と材質を変更。
「メイ! 押さえてっ!」
「りょうかいですっ!」
風は当然向かい風。
材質を変更したとはいえ、広がってしまえばその強烈な風力に飛ばされてしまう。
ここでメイは、スライム壁を背後から支えて安定。
見事に、羽攻撃を退けることに成功した。
「スライムちゃん! ないすーっ!」
「お二人とも、お見事ですっ!」
「スライムちゃんとメイちゃんのコンビネーション、いいじゃねえか!」
思わず上がる歓声。
「このままいくぽよっ! メイさん、このままあの鳥に叩きつけて欲しいぽよっ! 【可変】!」
「りょうかいですっ!」
メイは言われるまま、スライムをつかむ。
するとスライムはその形状を、伸ばした水あめのように変更。
「いきますっ!」
「いくぽよっ!」
「スライムちゃん【フルスイング】だああああーっ!」
「ぽよーっ!!」
スライムはムチのように大きくしなりつつ突き進む。
そしてその先端部分の『溜まり』は、程よい『重り』になる。
全力で降り下ろした一撃は、巨鳥に見事命中。
その威力はすさまじく、弾き飛ばされた巨鳥は監視室の角に激突。
そのまま城壁の上部に弾かれ、落下していく。
「「「すっげえ!」」」
「お二人とも、お見事です」
「スライムちゃんありがとーっ」
「いえいえぽよーっ!」
こうして巨鳥の打倒に成功した帝国兵組。しかし。
「「「ッ!?」」」
稀にある、モンスターの『死に際の一撃』
その大きな羽ばたきは、これまでで一番の強烈な風が吹かせた。
大慌てでその場に伏せる、掲示板組。
「っ!」
そんな中、伏せが間に合わず直撃を受けたのはツバメ。
あえなく吹き飛ばされて、そのまま落下していく。
「ツバメちゃん!」
全力で駆けたメイは、落ちるツバメの腕をつかむがそこはすでに空中。
壁に手は届かず、その勢いも止まらない。
「ま、まってくださいっ!」
「ストップ!」
落ちかけているメイの足をまもりがつかみ、さらにその身体をレンが後ろから抱きしめる。
しかし、風はもう一度強く吹いた。
「きゃ……きゃああああああああ――――っ!!」
そのままメイたちは、城壁の外側へと落ちていく。
「メイちゃん!」
「メイちゃーん!!」
「た、大変ぽよ――っ!!」
◆
城壁の外は森。
「せーのっ! それっ【ターザンロープ】!」
メイはツバメを抱えたまま、ロープを木に結んで地面に着地。
「あ、ありがとうございます」
割としっかり抱きかかえたメイに、ツバメは頬を赤くしながら告げる。
「いえいえー」
そしてまもりはレンの両手を両手でつかみ、【浮遊】落下によってパラシュートのような速度で着地。
四人は無事、城壁の外に着地した。
「さて、これでどうにか帝国兵の制服は手に入ったわね」
「や、やっぱり兵士長さんの『落ちても探しにいかない』は、ヒントだったんですね」
特に追手の気配もなく、まもりも感心したように言う。
「兵士は使い捨てだから、外へ落ちたら探しに来ずそのまま除隊。それを利用して制服を持ち出すって感じね」
兵務から離脱することで成功となる、意外な形式のクエスト。
いくつかの『脱走チャンス』があるが、四人は最初の任務ですぐさまそれを成功させた。
見事【帝国兵の制服】を手に入れ、レジスタンスの元へ戻ることにする。
もちろんメイたちが、同じクエストを受けながら特別な仕事を請け負っていることは、誰も知らない。
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