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756.魔法球体を破壊せよ!

「雨宿りしてる……」

「やっぱメイちゃんたちってすげーな」


 クエストのラストに待ち構える大ボス戦の最中に、四人並んで雨宿り。

 しかも笑顔が見えるというのは、なかなかない光景だ。

 その型破りな姿に、遠巻きに見学している観戦者たちは唖然とするほかない。


「さて、二つ目の部位破壊を狙いましょうか。位置的には左隣の、魔法を使ってくるやつね」

「りょうかいですっ!」

「がんばりましょう」

「は、はひっ」


 気合を入れ直す四人。

 三つの球体から『回復』を担っていた部位を潰したことで、回復はなくなった。

 しかし回復部が潰されると、残る二つは攻勢を一気に強める。


「「「「ッ!?」」」」


 地面はもちろん空中にも、容赦ない魔法陣の乱舞。

【麻痺】【劇毒】の液体を豪快に吹き上げる、ラッシュが始まる。


「テーマパークのアトラクション級の飛沫ね……っ!」

「【かばう】!」


 慌ててレンの壁になるまもり。

 さらに、迫る黒の触手がツバメをかすめていく。

 状態異常液の『溜まり』によって足場が減り、踏める場所が限定されているのが難しい。

 触手による攻撃の回避はドンドンその難度を上げていく。


「ッ!!」


 降り下ろされた触手が、溜まりを打って大きく飛沫を上げた。


「【跳躍】!」


 これも見事にかわしたツバメだがその着地際、触手に足をつかまれる。


「マズいです……!!」


 触手は一気に、ツバメを引きずり始める。


「うわわわ! 待ってーっ!」


 飛び石状態の足場には、【バンビステップ】が有効だ。

 引っぱられていくツバメをつかまえて、始まる綱引き。

 ここはよほど【腕力】があるプレイヤーでなければ止められない状況だ。

 そんな中メイは、触手と拮抗……どころかツバメを取り返し出す。

 しかしこのチャンスを、魔法タイプの球体が狙う。

 メイたちを狙って生み出した魔法陣が、足元に大きく広がっていく。

 その輝きの増し方は、高火力の一撃で間違いない。


「メイさん、私に構わずやつを倒してください……っ!」


 引きずられた際に『麻痺』にかかったツバメがつぶやく。


「ええっ!? そんなのダメだよーっ!」

「【低空高速飛行】【旋回飛行】! 高速【誘導弾】【フレアストライク】!」


 この窮地を救いに動いたのはレン。

 旋回から放つ炎砲弾は魔法型球体に直撃し、魔法の発動を遅延させることに成功。

 ここで兵器本体が反応した。

 すぐさま、触手攻撃が恐ろしい勢いで迫る。

 しかしレンは慌てない。


「【かばう】【地壁の盾】【天雲の盾】!」


 期待した通り、飛び込んできたまもりが触手と飛沫を防御してくれた。


「助かったわ! 【誘導弾】【連続魔法】【フレアアロー】!」


 まもりの頭を超える炎矢で、今度は本体を狙い撃つ。

 着弾すると、狙い通り触手の力が緩んだ。


「【バンビステップ】!」


 この隙にメイは、痺れツバメを抱えて離脱する。


「ああああありがとうごごごございますすす」

「ツバメちゃん! 言葉は痺れないはずだよ!」

「形状も自在、放出後は残って『溜まり』になる。状態異常攻撃が『水』の形で放出されるのは、かなりやっかいだわ。何とか崩しにいきたいところだけど……この触手と状態異常魔法の連携には、思い切ってオトリを使うくらいの覚悟が必要なんでしょうね」

「わ、私に行かせてください……っ」


 声をあげたのは、まもりだった。


「な、なんとか、時間を作れればと思います」

「分かったわ。メイ、お願い」

「りょうかいですっ」


 敬礼で応えて、メイはまもりの両手をつかむ。


「【ゴリラアーム】」


 スキルを発動し、ちょっと恥ずかしそうにしているまもりを、そのまま敵の目の前へ投擲する。


「せーの! それええええーっ!」

「ひゃ、ひゃああああっ!」


 投じられたまもりは、それでもしっかり地面を転がりながら姿勢を立て直し、『兵器』の前に立ち塞がる。

 デコイのような形でやってきたまもりに、さっそく触手と魔法が一斉に襲い掛かる。


「【クイックガード】【地壁の盾】! 盾! 【天雲の盾】 盾! もう一度【地壁の盾】! 盾! 盾っ!」


 本体から迫る触手と、魔法陣から放たれる毒水弾。

 狙いが一人に集約したことで勢いは大きく増したが、同時に攻撃自体は整然としたものとなる。

 触手攻撃の直後、目の前に現れた魔法陣から放たれるのは毒水砲。


「【コンティニューガード】【天雲の盾】!」


 盾にぶつかり、弾け飛ぶ大量の飛沫。

 まもりはこの一連の攻撃を、全て防御してみせた。


「すっげえ……っ」


 感嘆するほかない観戦者たち。

 直後、盾を持つまもりの後ろから三人が駆け込んでくる。


「【天雲の盾】!」


 レンの手が背中に触れた瞬間、発動する防御スキル。


「【コンセントレイト】【ペネトレーション】【フレアバースト】!」


 溜めによって火力を上げた上級魔法が、爆炎を吹き上げる。


「【スライディング】」


 続くのは【麻痺治し】で回復したツバメ。

 まもりの足元から滑り出てくると、そのまま剣を構える。


「【八連剣舞】!」


 左右四発ずつの剣撃で、魔法型を切り刻む。


「【ラビットジャンプ】!」


 さらに、まもりを跳び越える形で現れたのはメイ。


「ジャンピング【ソードバッシュ】だーっ!」


 大きく姿勢を崩している魔法型球体を狙い、放つ衝撃波。

『兵器』本体は触手で壁を作り防御壁を展開するが、容赦なく消し飛ばされる。

 魔法型の球体は大きくHPゲージを減らしたが、防御のかいありギリギリの生存に成功。

 これにより魔法型は『全開モード』に。

 球体を中心に足元に広がる大型の魔法陣は、内側から外側へと五段階で広がる形。


「「「「っ!!」」」」


 手前から外側へ噴水のように高々と、状態異常液を吹き上げていく。


「さがりましょう!」


 四人は大慌てで後退。

 それこそ大きな公園で、アトラクションとして行われる噴き上げのような、怒涛の五連続吹き上げ。

 速い判断で距離を取ったことが功を奏し、直撃は避けられた。

 しかし昇った水は、当然降ってくる。

 広範囲に散らばった霧雨のような毒水は、即座に【毒】を発生させはしないが――。


「炎が……きます!」


 本体が放った炎が、毒の雨に引火し爆発。


「て、【天雲の盾】!」

「きゃああああっ!」


 その衝撃はすさまじく、ダメージこそなかったもののレンとまもりは大きく体勢を崩した。

 予想以上の高火力。

 下がったメイたちとの距離は離れ、その間には炎が燃え盛っている状況。

 そんな中でも、魔法球体は新たな魔法陣を展開し始める。


「ここはわたしがいきますっ! 【原始肉】!」


 ここでメイは、手にした大きな骨付き肉に豪快にかじりつく。


「【蓄食】!」


 そこからさらに、バナナを取り出しまとめて10本一気に使用。


「「「腹ペコ野生児ちゃん」」」


 右手に巨大肉、次いで左手にバナナ。

 そんなメイを見た掲示板組が、思わずつぶやいた。


「【バンビステップ】!」


 完食の満腹メイちゃんが走り出す。

 魔法陣から次々に発射される、色とりどりの毒液の中を突き進む。

 激しく舞い散る状態異常の飛沫を、メイは全て無視して駆け抜けていく。


「「「あれは!!」」」


 しかし頭上に生まれた大型の魔法陣。

 現れたのはなんと直径20メートルに迫る、現実で言えばガスタンクほどの巨大水球。

 目を奪われるほどの大きさの水塊は、そのまま落下して炸裂。

 弾け飛んだ無数の水弾が、豪雨の時のような水音を響かせる。


「おい! メイちゃんは大丈夫なのか!?」


 しかしメイは止まらない。


「毒なんて、効きませんっ! 【ラビットジャンプ】!」


 猛烈な毒飛沫の中を駆け抜けて、本体が炎を放つのと同時に跳躍。

 引火によって生まれた壮絶な爆炎を跳び越えて宙をいくメイは、そのまま剣を掲げる。


「【アクロバット】からの――――【フルスイング】だあああーっ!」


 叩き込む驚異的な一撃。

 大技直後で隙を見せている魔法型球体をなんと、真っ二つに叩き割ってみせた。


「二つ目、撃破っ!」


 思わず拳を上げるレン。


「さすがぽよーっ!」

「お見事ですっ!」


 状態異常乱舞は本来、崩れた前衛を後衛が全力で回復役をしている間に、別の前衛隊が攻めるという難しい戦い方が求められる。

 しかしこの圧倒的な不利を、メイは一人で覆したのだった。

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【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
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