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755.動き出す兵器

「あとは池にある『兵器』の処遇だけね」

「最後の戦いになりそうです」

「が、がんばりますっ! フローリス復活のために……っ!」

「綺麗な街を、取り戻しましょう!」


 メイたちがたどり着いたのは、フローリスを崩壊に追い込んだ『兵器』の置かれた池。

 浅黒いピンクの毒液の上。

 石灰石のような素材でできた『兵器』はじわじわと黒色に変わり、無数に刻まれた深い紋様の隙間に赤い光が瞬く。

 すると伸びた触手が、新たに二つの球体を池から引き揚げ左右に侍らせた。


「三つで一体ってこと?」

「そのようですね」


 それは、自衛モードへの変化。

 外殻と触手。

 これまでにない、人工物と植物が融合したかのような姿の大ボスは、有機物と無機物が織り交ざった独特の気持ち悪さを持つ。


「今までの毒液散布は『全開』ではなかったのね」

「これは……一気に禍々しくなりました」


 その趣味の悪さに、思わず息をつくツバメ。


「素晴らしい……やはりこれは、我らが持ち帰り利用するべきだ」


 一方、満身創痍の足取りでやってきた黒仮面のリーダーは歓喜の声をあげる。


「こんな死に体の街に遠慮など要らぬ。この土地が100年、いや永遠に毒に沈んでも構わん! どこまで破壊できるのか、その力を見せてみろ! こいつらは皆、お前の力を示すための生贄だ!」


 黒仮面のリーダーはそう言って、笑い出した。


「そんなこと、させませんっ!」


 メイはビルダ老人やエンリケも含め、皆で直した街をあらためて眺めて宣言する。


「この街はわたしたちが守りますっ」


 盾に隠れながら、まもりが続く。


「……フ、フローリスは、本当に綺麗な街なんです……だ、だから……この戦いが終わったら……綺麗になった街を、皆さんに見てもらいたいです……っ!」

「それフラグっぽいって、言いたいところだけど」

「賛成です」

「絶対に勝って、一緒に見て回りましょうっ!」


「おー!」と拳を突き上げるメイ。


「その時は、お茶の用意も必要ね」

「いいですね」


 レンとツバメも、すっかり乗り気だ。


「そのためには絶対にまもりの力が必要になるわ。そのケタ違いの防御力がね」

「間違いありませんね」

「よろしくおねがいしますっ」

「ここここちらこそ、よ、よろしくおねがいしますっ!」


 三人がそう言って笑うと、まもりも今までにないくらい大きくうなずいた。


「やれ。愚か者共に、お前の恐るべき力を見せてやるんだ。そしてその骸を、この街を、毒に沈めるんだ!」


 動き出す『兵器』

 星屑史上初めての、崩壊マップ復活をかけた戦いが始まった。


「【バンビステップ】」

「【加速】」


 足の速い二人が、先行して『兵器』へと向かう。


「「っ!!」」


 地面から次々に突きあがる黒の触手を、メイとツバメは得意の走力で隙間を抜けていく。

 すると『兵器』の表面に円形の穴が開き、紫の水砲弾を発射。

 喰らえば【劇毒】に陥る連射に対し、まずは左右の動きで回避に集中。

 重い水砲弾を避けることは、二人にはそう難しくないが――。


「ツバメちゃん!」


 輝きを灯す左隣の球体。

 メイの目は、頭上に現れた魔法陣に向かう。

 直後、魔法陣から顔を見せたのは巨大な【麻痺水塊】


「【裸足の女神】!」

「【加速】【リブースト】!」


 二人は目配せ一つでクロスして走り出し、水塊の直撃を回避。

 跳び跳ねる飛沫からも、身を守ることに成功した。


「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】!」


 触手の強烈な払いが、足元を駆け抜けていく。

 着地と同時に、再び目配せ。


「【加速】」


 先行したツバメに向けて、放たれる触手は前方から。

 これをツバメは引き寄せてから再び【跳躍】


「【投擲】!」


【雷ブレード】を触手に投じ、駆ける電流でわずかに動きを止める。


「いきますっ!」


 メイはレンたちが作ってきた【浄化剤】を取り、投じる。

 すると池を埋めていたピンクの毒が見る見る消えていき、池が干上がる。

 これで接近からの攻撃も可能になった。

 ここで『兵器』は、紫の劇毒液弾を大量に撃ち上げる。

 天から降る、ハンドボール大の劇毒液球。

 二人は視界を上げ、これをしっかり回避。

 縦軌道の攻撃でも上手に避けられるのは、これまでの経験のたまものだ。

 そして再び迫る触手の払いをしゃがんでかわしたところで、そのまま縦の軌道の降り下ろし。


「「ッ!!」」


 ここで気づく。

 すでに付近には毒だまりがいくつも出来ており、触手によって紫の水しぶきが大きく弾け散る。

 まさかの攻勢に、慌てて飛沫から距離を取るメイとツバメ。


「……炎?」


 本体に刻まれた紋様が赤く輝き出すと、兵器は突然燃え上がった。

 直後、火山から吹き出したかのような火炎弾がいくつも飛んでくる。

 これは回避するだけならそう難しくないが――。


「うわわわわっ!」

「……っ!」


 毒液は炎に触れると、大きく燃え上がる。

 続々と引火していく毒液の炎が、視界を赤く染めていく。

 メイとツバメは炎に囲まれ、退路を失ったところに左隣の球体が狙いを付ける。

 放たれる豪炎弾の魔法は、駆けた直後の地面に炎の道を残すほどの火力だ。


「まもり、お願いっ!」

「は、ははははひっ! 【かばう】っ!」


 大きく速い一歩でメイのところまで跳躍したまもりは右の盾を構え、前衛二人はその背後に回る。


「【天雲の盾】っ!」


 豪炎球は見事に割れ砕け、無数の火の粉を散らして消える。


「ありがとうまもりちゃん! 【バンビステップ】!」

「助かりました! 【加速】【リブースト】!」


 まもりの背後を出た二人は走り出し、そのまま『兵器』のもとへ。


「【装備変更】【バンビステップ】!」


 迎撃にくる触手を、軽やかなステップでかわしつつ接近。

 触手の多くが先頭のメイを狙うことで、ツバメの回避に余裕が生まれる。

 メイは右から、ツバメは左から。

 二人はそのまま距離を詰めていく。


「【跳躍】」


 地面から突きあがる触手をかわしてジャンプ。

 飛ばしたところを落とすために放たれる直線軌道の触手を、しっかり引き付ける。


「【エアリアル】【アクアエッジ】【四連剣舞】!」


 空中から放つ四連撃が、『兵器』の中央にある本体に斬撃を刻む。

 そしてこの隙に、回り込むような軌道で駆けてきたメイは剣を振り上げ追撃。


「【アクロバット】!」

「まだまだ! 【フリーズストライク】!」


 続く氷砲弾が炸裂。

 シンプルなコンビネーションで、兵器本体はひび割れHPを減らした。しかし。


「え、ええええええ――――っ!?」


 右奥の球体が光り、減った分のHPがそのまま回復した。

 驚きに思わず声をあげたメイ。

 さらに左奥の球体の溝に光が灯り、中空に生まれる紫の魔法陣。


「劇毒の局地雨……っ!?」


 最初はポツポツと、わずかな粒が。

 だが数秒後には降り出すであろう回避不能の状態異常攻撃に、レンも思わず叫ぶ。


「ここはおまかせくださいっ!」


 最悪の事態を前に、動き出すメイ。

 ツバメと共にまもりとレンのところまで戻ると、ヤマトの頃に買っていた種を取り出し植える。


「大きくなーれ!」


【密林の巫女】を発動すると、一気に大きな木が育つ。


「こちらにどうぞーっ!」


 さっそく四人は、木の下に転がり込む。


「木を生やして雨宿り……これまでもこれからも現れない、まさかの対処法でしょうね」

「メイさんならではですね」

「お、おどろきました」

「てへへ」


 大ボスとの戦いの最中に木を生やし、四人仲良く肩を並べて雨宿り。

 距離を取ったこともあってか、『兵器』は劇毒雨の降る中、様子を見守っている。


「……広葉樹でよかったですね」

「これで針葉樹だったら葉の隙間を抜けてくる雨に『メイーっ!』て叫んで、駆け回ってたんでしょうね」

「た、確かにっ! 木の種類は偶然だったかもっ!」


 この地獄のような状況下。

 それでも楽しそうなメイたちに、まもりも笑ってしまう。


「さて、狙いはあの右隣の球体ね。部位破壊が必要な戦いみたいだし」

「ぶいはかい?」

「まずあの回復担当を叩かないと、何度でも回復されちゃうのよ」

「なるほどー」

「でも部位破壊するには本体と左を引き付けておかないと、回復発動前に攻め切れない。これがやっかいなところね」


 最初の狙いは、右の回復球体を止めること。


「メイとツバメは先行して、ツバメは魔法が来そうになったら合図をお願い。まもりはここで防御を任せるわ」


 レンの言葉に、うなずく三人。

 そして、紫の大雨が止む。


「【装備変更】【バンビステップ】!」

「【疾風迅雷】【加速】!」


 先行して走り出すメイとツバメ。

 一斉に迫る触手の刺突を、メイは【鹿角】装備で軽やかに回避して引き付ける。

 避けることだけに集中するメイに、隙などない。


「高速【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」


 敵の攻撃がメイに集中している間に、レンは魔法の連射で回復球体を勢いよく削っていく。


「魔法来ます!」


 ここでツバメの声が響く。

 ツバメの担当は魔法球体の引きつけと、合図だ。


「【加速】【リブースト】!」


 魔法球体の放つ、炎の連弾を置き去りにして【跳躍】


「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」

「高速【フリーズブラスト】!」


 ここでレンは魔法攻撃を急遽、左側の球体に変更。

 弾ける水滴を、氷嵐によって凍結させる。

 これによって敵の、範囲攻撃魔法の発動を強制的に停止させる。


「【コンセントレイト】」


 ここで追撃は行わない。

 あくまで最初の狙いは、右の回復球体だ。

 魔力を溜めて、再び照準を右へ。

 すると一撃の火力を増加させ始めた魔導士に向け、本体が後衛への攻撃を放ってきた。

 五本の触手が、一斉にレンを狙いに飛ぶ。


「【クイックガード】!」


 しかしレンへの攻撃は、まもりが許さない。


「【地壁の盾】! 盾盾盾盾っ!」


 見事な連続ガードで、迫る触手の全てを難なく弾き返す。

 まもりの立ち位置は、レンの正面。

 本来であれば敵との射線を阻んでしまう形だ。しかし。


「一方的な攻撃で悪いけど、容赦はなしよ! 高速【誘導弾】【フレアバースト】!」


 兵器の攻撃は、全弾見事に盾防御。

 一方こちらの爆炎はまもりの頭上を越えていき、誘導による縦の軌道変化で直撃。

 全力の溜め魔法が、豪快な火の粉を巻き上げ炸裂した。


「一つ目破壊! これで回復はなくなったわ!」


 消える紋様の輝き。

 最初の関門である回復球体を、一方的な戦いで打ち破ったのだった。

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◆◆◆新作よろしくお願いいたしますっ!◆◆◆

【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] 論理クイズの第10のヒント 幼女たちは、確実だがかなり地道な戦略を取る。
[一言] 論理クイズは考え方はあってるけど、ここはオンとオフの二つのグループで良いです
[一言] 掲示板組完全に空気に。
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