742.護衛ミッションは過熱します!
「ツバメちゃん、レンちゃんは絶対に毒を解除してくれる! わたしたちも一緒にがんばりましょう!」
「は、ははははひっ!」
街の中を駆けるメイとまもり。
メイのそんな笑みに、まもりもがんばって応える。
「街の中心部付近。ポータルまではもう、そう遠くない」
続く医者はここまで、メイとまもりの完璧な護衛で擦り傷の一つもなしだ。
この医者が捕えられ、逃げられてしまったら終わりという緊張感のあるミッション。
三人はいよいよ、街の中心部へと差し掛かる。
「喰らえ!」
現れたのは、医者を権力闘争の武器として利用しようとしている一団の男。
放ったボーガンの先には、奇妙な輝きを灯す矢じり。
「それっ!」
しかしそれをメイが斬り払うと、突然魔法が発動し付近一帯に橙の液体が飛び散った。
「ええっ!?」
二段階攻撃の意外な効用には、まだちょっと驚くメイ。
レンがいたら「いやらしい攻撃」と眉をひそめたであろう、範囲状態異常攻撃。
その内容は【視野狭窄】という視認範囲の縮小だが、【原始肉】を食べたメイにその効果は及ばない。
「【アクロバット】!」
視野狭窄で苦しむところに飛んでくるはずの投擲型の転移宝珠を、軽々かわす。
「うわっと!」
さらにその直後を狙う形で医者に向けて投じられた、約2メートルの球形範囲を封じる【封印珠】を左手で払い飛ばした。
「メイちゃんだ!」
そして豪快にして柔軟な動きを見せるメイに、通りがかりのプレイヤーたちが気づいた。
やはりこのミッションの難しさは、状態異常に『強制的な瞬間移動』という一発アウトの組み合わせだ。
この連携の成功率を上げるため、新たに近接型で普通に戦いを仕掛けてくる者たちが登場。
「まもりちゃんっ! おねがいしますっ!」
「は、はひっ!」
一発即敗北につながる攻撃をメイが引き付けている間に、迫る特攻チーム。
その数は六人。
「一人であの人数を? さすがに厳しくないか?」
背中に防衛対象を置いた状態で相手をするなんて不可能だと、観戦者たちが耳を疑った次の瞬間。
六人の二刀流剣士たちは、一斉攻撃に入る。
「「「【飛刀二閃】!」」」
「ひゃっ!」
六人が同時に放つ、二連続の空刃に思わず身が硬くなる。しかし。
「【クイックガード】【天雲の盾】! 盾、盾、盾っ! 次はこっち、盾盾盾盾っ!」
先行する四つの空刃を右の盾で弾き、つづく四連の空刃は左の盾で防御。
「【コンティニューガード】【天雲の盾】!」
残る四つの空刃は同一方向からの攻撃であること見極め、即座に防御スキルの継続時間増加で見事に防御。
十二連続攻撃を、なんと二枚の盾で完全防御してみせた。
「……な、なんだあの子!?」
「盾二枚をあんな上手に使えるものなのか!?」
その異質さに、唖然とする観戦者たち。
だが進むメイたちを前に、敵の増援は止まらない。
もともと10人以上のトップ級が参加することを計算して作られたミッションに、容赦などない。
「さすがに二人でこの人数はキツいだろ! しかも防衛クエストだぞ!?」
「メイちゃんすごいって聞くけど、明らかに敵が強い! これはさすがに……!」
観戦者たちは、思わず息を飲む。
いくつもの敵グループと同時に、単体で忍者のように身軽な者が一人。
どう考えてもこの身軽な個体が自在に動いて翻弄、その隙にグループが詰めてくるという構成だろう。
厳しすぎる状況にどう対応するか、その動向を見まもる観戦者たち。
しかしメイは、慌てる様子もない。
「バンビステップ! それっ! それそれそれっ! オマケにもう一つ、そーれっ!」
ここでメイは敵グループに向けて【豊樹の種】を投擲。
そのまま右手を高く突き上げる。
「大きくなーれっ!」
「なにっ!?」
家一軒を飲み込むような繁殖力を見せる【豊樹の種】が一気に伸び、五つの敵グループを飲み込んだ。
こうなれば、心おきなく忍者を追うことができる。
「【装備変更】【バンビステップ】!」
ここでメイは、頭装備を【鹿角】に替えて後を追う。
「【ハイジャンプ】【無限多方投擲】!」
忍者型は後方へ高く下がる形で跳び、その場から二十本の【痺れ短刀】をまく。
「【無限多方投擲】! 【無限多方投擲】【無限多方投擲】ッ!」
なんとそこから三連発。
計六十本の短刀の範囲投擲攻撃。
しかし【鹿角】メイの【バンビステップ】は速く、柔軟。
「すげえ……っ! これが野生の力かっ!」
踊るようなステップで、これを難なくかわして前進する。
「くっ! 【影分身】!」
すると忍者型は、早くも奥義を発動。
【影分身】は二体だけだが、『実体』を持つ分身を生み出す強スキル。
短い時間で消えてしまう上に単純な攻撃やスキルしか使えないが、間違いなく強力な攻撃だ。
しかし、実体を持つことがアダとなる。
左右上方から挟むように短刀を振り下ろしに来た忍者の攻撃を、メイは二歩の歩みでかわす。
「【ゴリラアーム】」
「ッ!?」
そしてそのまま、分身体の一体をつかんだ。
「せええええーの! それっ! それええええ――――っ!!」
豪快な振り回しに巻き込まれた分身体その2が消える
続けて投じられた分身体その1を喰らった忍者本体は、そのまま砂煙をあげながら建物壁に激突して、衝突ダメージを受けた。
「「「うおおおおおお――――っ!!」」」
「なんだあれ! すっげえ!!」
たった一人で数十人の敵グループを無力化し、中ボス級の忍者も圧倒。
街で荒ぶる野生少女の力に、観戦者が唖然とする。
「メイさん……っ!」
そんな中、まもりが気づく。
上空から大鷲につかまってきたアサシン型の男が、空中からメイを狙っていることに。
「ッ!?」
それだけではない。
同時に医者に向けて迫ってくる、敵フード剣士の姿も確認。
「【アサシネイト】」
それは空中から迫る暗殺スキル。
メイに迫るアサシン、そして医者に迫る剣士。
まもりはわずかに悩むが――――決断。
スキルを発動する。
「【かばう】! 【地壁の盾】!」
大きな一歩で跳んで、メイの頭上から落ちてきたアサシンの一撃を盾で抑える。
「【ローリングシールド】!」
そして盾を振り払うことで敵アサシンを弾き飛ばし、すぐさまスキルを発動。
「【かばう】! 【天雲の盾】!」
「【フレイムバスター】!」
すぐさま跳んで、左の盾で敵フード剣士の一撃から医者を守る。
「【ローリングシールド】!」
そして敵剣士を弾き飛ばしたところで、アサシンを連れてきた大鷲がメイを狙っていることに気づく。
「【かばう】【シールドバッシュ】!」
再び跳躍、大鷲を盾の振り降ろしで地面に叩きつけるとすぐさま振りかえる。
「【シールドストライク】!」
「ぐああああっ!」
最後は盾の投擲を選択。
まもりが離れていた隙を突いて医者を狙いにきた魔法剣士が、攻撃に入る前に盾を叩き込んだ。
「ありがとう、まもりちゃんっ!」
【かばう】から【かばう】という連続移動防御。
かつて見たこともないようなアグレッシブな防御スタイルで、見事に全ての問題を片付けたまもり。
メイは忍者とアサシンを剣で倒し、医者のもとへ戻る。
「「ッ!!」」
そして二人は気づく。
空き建築の四階屋上に立つ魔導士が持つ、大仰な杖。
遠距離攻撃タイプの魔導士は、スナイパーというより砲台のようなたたずまい。
「【爆裂光弾・麻痺】」
放たれる一撃は恐ろしく速く、そして大きな光の砲弾。
炸裂すれば、付近一帯に麻痺毒の煙と高いダメージを与える大技だ。
「あ、あわわわわっ!」
その光景と最悪の状況に、慌てているのにしっかり盾を持って前に出るまもり。
「【不動】【コンティニューガード】【天雲の盾】!」
盾に直撃し広がる猛烈な光は、広範囲を『麻痺』に陥れる最悪の一撃。
「「「ッ!!」」」
これには観戦者たちも思わずのけ反り、前のめりだったプレイヤーの一部は麻痺に巻き込まれる。
しかし、まもりはメイと医者を守り抜いた。
煙が晴れる。
メイの目に映ったのは、次弾【転移魔術砲】の準備をする魔導士型の姿。
「【裸足の女神】!」
猛スピードで走り出し、廃ビル四階に目を向ける。
「【ターザンロープ】!」
ロープを建物上部の出っ張りに引っ掛け、強く引いて跳び上がる。
左で口を塞ぎ、「あーああー!」をギリギリで止めた後、高く剣を掲げる。
「【アクロバット】からの――――【フルスイング】だああああ――――ッ!!」
巻き起こる強烈なエフェクトが廃ビルを二つに裂き、遅れて深い溝が生まれ、崩れ落ちていく。
巻き込まれた魔導士は、一撃で敗北。
見事な着地を見せたメイは、再びまもりたちのもとへ。
「まもりちゃーん!」
「は、はははははひいっ!」
思いっきり抱き着いた後、両手を上げたメイに、まもりは恐る恐るもハイタッチ。
超難関の護衛ミッションを見事に乗り越えた三人は、そのままポータルへと駆け込んで行った。
「……すっげえ」
「どう考えても、二人でどうにかできるクエストじゃないですよね……」
「盾の子はおかしいし、メイちゃんは格が違うし、うっかり見惚れて麻痺するし……」
【豊樹の種】によって生えた沢山の樹木、崩壊した廃ビル。
見る角度次第で木々に飲み込まれた廃墟のようにも見える街中で、観戦者たちは麻痺状態のまま驚きの声をあげたのだった。
誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!
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