739.お医者さんを探します!
「わたしたちもいきましょうっ」
「は、はひっ」
メイとまもりは毒素に倒れたビルダ老人を救うため、医者を探しに向かう。
情報が少ない中、ポータルを使ってたどり着いたのはブラッジヤという街。
どこか中東を思わせる石灰色のブロックを重ねた建物に、格子状の窓。
紅やオレンジのドアが、色どりを与えている。
トーマから得られた情報は、これだけだ。
「ちょっといいですかー?」
メイはさっそく、近くの木陰で集まっている鳥たちに話を聞きに行く。
近寄れば基本逃げる小鳥たちだが、まるで逃げようとしない。
「毒が得意なお医者さんを知ってますか?」
近くにいた鳥たちに聞いてみる。
皆一様に首を傾げる姿を見ると、心当たりはないようだ。
「もしかしたら、街の中にはいないのかな」
鳥たちと一緒に、メイも一緒に首を傾げる。
「あ、あの……酒場に行けば何か聞けるかも……」
鳥たちに囲まれるメイにうっかり癒されながら、まもりが提案する。
「その手があったね! 酒場に行ってみましょうっ」
さっそく、まもりの背中を押しながら酒場を目指す。
動物には話を聞くのに、定番の酒場情報収集を忘れている辺りは、何ともメイらしい。
「なんだかカッコいい雰囲気だねぇ」
「……ごくり」
ややダークな雰囲気を持つ酒場に、気圧されるまもり。
ドアを開くと、中も相応の渋い雰囲気。
歴戦の戦士や商売人の視線が集まり、思わず盾に隠れる。
一方メイは、酒場の雰囲気がめずらしく辺りを見回す。
「この中にお医者さんはいらっしゃいますかー?」
「飛行機の中でやるやつです……っ」
躊躇することもなく元気に手を上げて問うメイに、まもりは感嘆する。
しかし、該当者は現れない。
「…………」
まもりはいつも、後方にいて周りに気を使っているタイプだ。
メイの問いかけにピクリともしなかった一人の男の存在が、しっかり見えていた。
据え置き型のゲームもよく遊ぶまもりは、酒場での振る舞い方も一応知っている。
ここでもしっかりNPC見知りを発揮するまもりだが、盾に隠れながら思い切って店員に声をかけることにした。
「……あ、あの」
近くにいた商売人に向けどうにか声を出すが、少し遠くて届かない。
「も、申し訳ありません……っ」
「ああん?」
「ひっ!!」
強面な男の雰囲気に、思わずビビるまもり。
それでもフローリスのためにと、どうにか盾の陰に隠れながら商売人NPCの前に立ち、声をかけることに成功した。
全身を震わせながら、そーっと酒を男の前に置く。
「よ、よ、よろしければ、どうぞ」
「ふん……何が聞きたい」
おずおずジョッキを差し出すと、男は一口あおって問いかける。
「こ、この辺りに、毒に強いお医者さんがいると聞いたのですが……」
「ああ、いたな。あいつは最近引っ込んでるみたいでな。あまり見かけない」
「そ、そうなんですか」
「用があるなら街はずれの区画に行ってみるといい。住居までは知らんが、あいつはあの辺に住んでるはずだ」
「あ、ありがとうございますっ」
医者の情報を得たまもりは、盾をちょっと出口に引っ掛け身体をフラつかせながら、メイと共に逃げるように店を出る。
「まもりちゃんないすーっ! よく分かったね!」
「はははははひっ! ここここういう時はお酒をおごるのが定番みたいなんです……っ!」
「なるほどー!」
この辺りはゲームの常識がとにかく薄いメイ、素直にぴょんぴょんしながら喜ぶ。
一方、勇気を出して男に声をかけた結果メイに抱き着かれたまもりは、もう頭フラフラだ。
実は誰に話聞くかを、見定める必要があった医者探し。
しかし一歩引いていたまもりの目が、上手に働いた形になった。
「それではさっそくいきましょう!」
「は、はひっ」
進んだ先は、街はずれの区画にある路地裏。
どこかうらぶれた雰囲気のある路地を、二人は進んでいく。
「……あれはっ」
今度はメイの目が異変に気づく。
街外れ、その端の端に一人の男が座り込んでいる。
うなだれるような姿は、どこから見ても体調不良といった感じだ。
メイはさっそく、男のもとに駆けつける。
「どうしたんですかー?」
声をかけると、男はややうつろな目を上げた。
「ああ、遠方からの帰り際にモンスターにやられちまってな……どうやらただの毒消しじゃ効かねえみたいなんだ」
「毒……ですか」
続けて起きる毒問題に、まもりが眉をひそめる。
「……うっ」
一方の男は、いよいよ男は顔を青くしてうずくまり出した。
「なんだ、お前」
するとちょうど倒れた先にフラフラと歩いてきたのは、ベージュのコートを着た見知らぬ男。
倒れた男に、面倒そうに尋ねる。
「毒みたいですっ! 【毒消し草】じゃ効かないみたいで……!」
「……チッ」
男は面倒くさそうに舌打ちすると、胸ポケットに手を突っ込んだ。
「こいつを飲んでみろ」
そう言って取り出したのは、紙片に包んだ錠剤。
顔色の悪い男は、言われるまま錠剤をのみ込む。
するとすぐに顔色が戻り、容体が一時的な緩和を見せた。
「あとは水だけ飲んで寝ていろ。そのうちよくなる」
「あ、ああ。助かった。ありがとう」
そう言うと男は、まだ足をフラフラさせながらもしっかりした足取りで帰っていった。
「この人、間違いなさそうです……」
「うんっ」
現れた毒のプロにメイは目を輝かせると、男に元気よく頭を下げる。
「お願いしますっ! 助けてください! 何種類も毒素を吸って倒れちゃった人を助けたいんです!」
「なるほど……そいつは大変だな」
「一緒に来て、助けてくださいっ!」
「話は理解した――――断る」
「……え、ええええええーっ!?」
「ええええええええ――――っ!?」
医者からのまさかの断りに、メイとまもりは驚きの声を響かせる。
「薬はたまたま持ってただけだ。複合毒なんてやっかいな状態、俺にどうにかできるわけじゃない」
そう言って男は、手にした酒をあおったのだった。
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