表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

712/1484

712.盾の少女

「集める毒液は三種類。ビンに入れて収集する形になるのだが……」


 フローリス復活に燃える老人は、そう言って三つのビンを取り出した。

 毒液。

 群がる植物のようなもの。

 間欠泉のように噴き上がる痺れ蒸気。

 フローリスをむしばむ要素は、現状この三つだ。


「何はともあれ、最初に片付けるべきは【劇毒】を引き起こす毒だまりってことね」


 強烈な状態異常を引き起こす毒を片付けることで、街の復活に近づく。

 さっそく三人は、毒溜まりを避けつつ街を散策。

 毒液を回収できるポイントへ向かう。


「あれが一つ目ね」


 たどり着いたのは大きな紫の毒だまり。

 その中心からは、毒液が時々高く吹き上がる。

 溜まりはやや薄いため、ビンの口で毒液をすくうことはできない。

 噴き上がったものを受け止める形で集めろということだろう。


「すごくシンプルだけど、かなり難しいクエストね」


 この毒だまりは当然、踏み込んだ瞬間【劇毒】を発症。

 その後は、すさまじい勢いでHPが減少してしまう。

 そして回復や毒消しアイテムを連発しながらでは、毒の回収はかなり難しいだろう。

 パーティ総出で、回復しながらリレーする形式などが正解だろうか。


「でもこれって……」

「はいっ! さっそく試してみたいと思いますっ! 【原始肉】!」


 そう言ってメイは付近を確認した後、【原始肉】を取り出し使用。


「がぶっ! ……こ、こんなに豪快にかじりつくの――っ!?」


 こっそり小さくかじるはずが、野性全開、全力のかぶりつき。

 こんがり焼いた骨付き肉を豪快に喰らうと、光がメイの身体を覆う。

 そのままそーっと、劇毒のたまりに踏み込むと――。


「わあ! なんともないよーっ!」


 そう言ってメイは、毒液を気にせずピョンピョンと飛び跳ねる。

 薄気味の悪い紫の毒液が起こす【劇毒】は、星屑でも屈指の極悪状態異常。

 しかし【原始肉】を食べたメイにはもう、【劇毒】は通じない。


「ここはおまかせくださーい!」


 そう言って手を振るメイ。

 時々吹き上がる毒液を待ってビンで受けるだけだが、指定の量まで溜まるのを待たなくてはならない。

 シンプルなのに、恐ろしくやっかいなこのクエスト。

 だが毒液を踏んでいても状態異常が発症しないのであれば、もう余裕だ。


「それじゃ私たちは、この付近を見て回りましょうか」

「そうしましょう」

「は、はいっ」


 三人は付近の様子見を開始。

 すると少し歩いた先に、緑の毒がポツポツ落ちる軒先を発見。

 どうやら屋根にたまった毒液が、もれてきているようだ。


「バラバラのリズムで落ちてきているようですね」


 それはビンを持って、十か所ほどの雨漏りポイントから落ちてくる毒液を溜めるという、地味なクエスト。


「身体に当たれば、高ダメージに加えて毒を受けるようです」


 見れば緑の毒液は、地面に当たる度にジュッと嫌な音を立てている。


「回避しながら溜めていけということですか……ここは私が」


 ツバメはビンを手に、落ちてくる毒液を受け止める。

 時に予想外の毒液がこぼれてきても、その【敏捷】の高さで一度距離を取れば問題なし。

 ここも時間さえかければ攻略できそうだ。

 残ったレンとまもりは、ここをツバメに任せて次のポイントの様子見へ動く。

 そこにあるのは、赤く茂った植物。

 いるだけで毒になるということはないが、レンとまもりが近づいていくと――。


「攻撃!!」


 赤色の植物型モンスターである赤毒草は、全身がそのまま武器になる。

 伸ばすツルは刺突と斬り払い、さらに妖しい花が無数の種子を飛ばす。


「触れるだけで【劇毒】、そんなところかしら!?」


 レンの予想は正解だ。

 ツルが描く鈍赤の軌跡は【劇毒】を起こし、飛ばす10センチほどの大きさの種子は、炸裂によって広がる粉末で【痺れ】を誘発。

 あらゆる形で【劇毒】を仕掛けてくるこの場において、【痺れ】は致命的だ。


「ッ!!」


 先行くレンの回避は器用だが、ここで最悪の展開。


「成長した!?」


 赤毒草は地面の毒を吸い急成長、その大きさを大幅アップ。

 当然もともと多かった手数はさらに増え、下手なボスよりもやっかいなものとなる。


「ッ!!」


 刺突を連射する劇毒ツルはどうにか回避できたが、そこに飛んできた痺れ種子は視界の外、頭上から。

 炸裂し、痺れゲージが一瞬で急上昇する。


「……マズっ」


 立ったまま硬直。

 もはや回避は不可能だ。

 赤毒草はレンに狙いをつけ、一斉に攻撃を開始する。

 最悪リスポーンを覚悟したレンの前に迫る、無数の劇毒ツル。


「し、ししし、失礼しますっ!」


 そこに飛び込んで来たのは、まもりだった。

 迫るツルを前に、レンをかばうように盾を構える。


「ありがとう! でもこの数は厳しいわ、無理はしないでっ!」

「は、はい! 【クイックガード】【地壁の盾】!」


 右手に持った中盾で右から来る三本のツルを弾き、そのまま左から回り込むように来たツルの四連射をガード。


「【地壁の盾】! 盾! 盾っ!」


 正面から来た刺突ツルの三連発を受け止め、最後に来た斬り払いを弾き上げる。

 物理系攻撃に対する盾防御スキルを、防御を高速化するスキルとの連携で見事に完全防御。しかし。

 花から放たれるのは種子ではなく、毒液そのもの。

 連射された四筋の赤い毒液は、普通の盾に当たれば霧のように広がり、プレイヤー【劇毒】に追い込んでしまう。


「【天雲の盾】!」

「左手にも……盾ッ!?」


 まさかの状況の驚くレン。

 まもりの左手に現れた新たな盾がスキルを発動し、毒液をかき消した。

 続く怒涛の毒液乱射も、魔法や風のような無形攻撃を弾く防御スキルで、一つも外すことなく完全防御。


「次は両方連続でくるわ!」

「【クイックガード】【地壁の盾】【天雲の盾】!」


 盾を左右に持つことで、最短で最速の防御スキルを使用。

 ツルを集めて螺旋化した【回転刺突】を右の盾で弾き、直後に足元から天へ向かうレーザーのように放たれた毒液を左の盾でかき消す。

【劇毒】を持つことで実はボス級の攻撃力を持つ赤毒草の連携を、両手盾という奇策で見事に切り抜ける。


「助かったわ! ここで一気にいくっ! 【連続魔法】【誘導弾】【フレアアロー】! 【誘導弾】【フレアストライク】! 【誘導弾】【フレアバースト】!」


 まもりの防御で生まれた隙。

 レンは痺れの残る手をどうにか伸ばし、炎魔法の連続で毒液植物を焼き尽くす。

 全てに【誘導弾】をつけたことで、照準のズレはどうにか修正した。


「……一体どうなってるの、その盾の使い方」

「すすすすみませんっ! 私みたいなザコザコのザコが出しゃばってしまってーっ!」


 あまりに完璧な防御に驚きっぱなしのレンが問いかけると、まもりは大慌てで盾の後ろに隠れて、ペコペコ頭を下げる。


「両手に、盾ですか……」

「すごーい!」


 そしてその変わった戦い方には、毒の収集を終えてやって来たメイたちも驚かせたのだった。

誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆新作よろしくお願いいたしますっ!◆◆◆

【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] 論理クイズいきますね 幼女とイースターエッグの箱 以下のように3×4の箱が並んでいる。 この12の箱のうち、ランダムに選ばれたどれか2つの箱にイースターエッグが1つずつ入っている。 残り…
[一言] 物理アタッカー(力・技)・魔法アタッカーな前のめりパーティに唯一欠けてるガーディアンかー 臨時メンバーなんだろうなぁという予想はあるけど、 何なら固定パーティに勧誘してもいい位の逸材では?w…
[一言] 両手盾って、大盾じゃ無い限り、下部を鋭利な縁にするとか 伸縮性の剣を仕込んだりして殺傷能力を持たせたうえで 舞踊系のスキルとあわせたら近接攻撃出来るのでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ