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711.毒の街

「あ、あの、どうしてメイさんはここに……?」


 フローリスで出会ったメイたちに、少女は盾からそっと顔を出して問いかける。


「はいっ! すごくきれいな街があると聞いてやってきましたっ」

「ここ、フローリスであってるのよね?」

「聞いていた話と、だいぶ違うようですが……」

「……そ、それが、私がフェスから戻ってきたら、突然こんなことになっていて……」

「もしかして……大型クエストに失敗した?」

「その可能性が高そうですね」


 ツバメがうなずく。

 フェス中も、大型クエストを進めることはもちろん可能だ。


「どーいうこと?」

「王都や聖教都市は、クエストに成功したから守られた。でも、失敗したら街は崩壊しちゃうのよ」

「そういうことかぁ」

「ですが、こんなにひどい崩壊はなかなか……」


 ツバメは付近の惨状を見回しながらつぶやく。


「…………あれ? 誰かいるよ」


 メイの【遠視】が捉えたのは、頭からすっぽりと覆うような長い外套で、台車を引いた人物。


「行ってみましょう」


 レンがそう言って歩き出すと、少女は「自分も付いて行っていいのか」に迷う感じで後に続く。


「こんにちは!」


 メイが声をかけたのは、台車に山盛りの土を積んだ老人NPCだった。


「ほう、この街にまだ人がいたのか……もしや冒険者か」

「はいっ。メイですっ!」

「貴方は何を?」


 レンが問いかけると、老人は外套のフードをわずかに持ち上げてみせた。


「街の復活……じゃな」


 そう言って、毒に浸かった街を眺める。


「……花の都フローリスは、ワシがまだ子供の時に皆で作った街なんじゃ。魔物たちの南下によって住む場所をなくしたワシらは、力を合わせてこの場所に街を作った。元々は何もない枯れた土地でな。皆の力を合わせて、土壌から作っていったのじゃ。土が豊かになるにつれて花が綺麗に咲くようになっていき、やがて世界一美しい都になった。街を飾っていた花々はワシらの希望であり、誇りなんじゃ」


 老人は帆布で作った天幕で雨を防ぎ、その下に持ってきた新たな土を敷く。


「少しずつ汚染された土をどかし、新たな土に変え時折降る雨から守ることでいつかと思っていてな……そうしたら皆戻ってこられる。あの時はまだ幼く何もできなかったがな、今度はワシがフローリスを蘇らせる番じゃ。花の都はまた、世界一の美しい街になる!」


 そう言って今度は、新たな種をまく。

 持ち込んだ綺麗な水をやって、一仕事終了だ。


「こんなの、何年かかるのよ……」


 街の土壌はそのほとんどが状態異常の温床のような、毒々しい状態。

 毒を排し、新たな土をまいた箇所など、まだ湖に四畳半の部屋を作った程度だ。

 いつ浸食され尽くしてもおかしくない。


「あ、あの……」


 恐る恐る、少女がたずねる。


「ハウジング用の肥料を売っていた子について、何か知りませんでしょうか……」

「それはワシの孫じゃな。もう別の街に移動させたよ」


 まずは無事と分かり、少女は大きく安堵の息をつく。


「孫もこの街が大好きでな……孫のためにも、美しい街を取り戻したいのぉ」

「レンちゃん、ツバメちゃん……!」


 するとメイは大きく息をつき、耳と尻尾をピンと立てた。


「まあ、そうなるわね」

「はい」

「花の街を復活するお手伝い、させてくださいっ!」

「……よいのか? それは助かるのぉ!」


 メイがそう言うと、老人はうれしそうに笑う。


「こういうタイプのクエストは初めてだから、気合が入るわね」

「はい、ワクワクします」

「実際ワシのやり方では、どれだけかかるか分からないからのぉ。この街を侵している三つの毒は、時間の経過でどうにかなるものではない。分解するか、取り去ることが必要になるのじゃ」

「三つの毒ですか」

「その毒素の取り方は、専門家などに聞くべきなのじゃろうな」

「なるほど、クエスト達成のために一か所にとどまらない形なのね……これはなかなか変わっているわ」

「はい、初めて聞きました」


 どうやら今回のクエストは、フローリスを起点に世界から必要なものを探す形のようだ。


「そもそも、この街はどうしてこんなことになってしまったの?」

「き、気になります……っ」


 レンがたずねると、少女も興味深そうにうなずいた。


「ふむ、以前街外れの池で不思議な物体が見つかってのぉ。その『何か』が突然毒素を生み出し始めたんじゃ。そしてそれを利用しに来た者と争いになってな。だがその『何か』の生み出す毒はすさまじく、あっという間に街を飲み込んでしまったのじゃ。そして『何か』を求めてきた者たちは、そのすさまじさに諦め帰っていった」

「イメージとしては、爆弾が見つかって何者かと奪い合いになった。結果持っていかれてしまうことはなかったけど、ここで爆発してしまったという感じかしら」

「なるほどー」

「その『奪いに来た者』とは何者なのでしょうか」

「分からん。ただ全身を黒い衣装に身を包んだ者たちということしか……」

「…………」


 レン、ちょっと闇の使徒と暗夜教団を疑う。


「まあフェスの最中だし、さすがに違うだろうけど」

「とにかくまずはこの三つの毒を『収集』し、それぞれの対処法を見つけるという形じゃろうか。水や新たな土で薄めていくより断然早いじゃろう。ワシが思いつく限りでは、毒を喰う植物があるという話なら覚えておるが……そんなものを知る人物に当てがないのじゃ」

「そういう事でしたら、王都にいた植物学者さんに聞いてみるのはどうでしょうか」

「いいと思いますっ!」

「いいじゃない。それならまずは、毒素の収集から始めましょうか」


 この街の中だけで終わらないクエスト。

 さっそくメイたちは、心当たりから動き出してみることにした。


「……あ、あのっ」


 そんな三人に、少女は思い切って声をかける。


「私なんかでも、その、何かできることあれば……あ、ええと……NPCさんは私にも笑顔で声をかけてくれる子だったので、助けになれれば……」


 どうやら少女は、いつでも声をかけてくれるNPC少女に思い入れがあるようだ。


「分かります。NPCさんでも毎回声をかけてもらえたら、私も意識すると思います」


 プレイヤーはもちろん、NPCにもあまり声を掛けられずに来たツバメ、その言葉に深く共感する。


「それなら一緒にいきましょう!」

「……え、ええっ!?」


 自分はせいぜい雑用くらいだと思っていた少女は、メイにパーティ参加を誘われて驚愕する。


「一緒にいきましょうっ」

「あ!? ででででも、わわわ私なんかじゃ足手まといに……っ!!」


 笑顔のメイに腕を取られ、少女は慌てふためく。

 彼女にしてみれば、その真っ直ぐな笑みが見たくて思わずカフェの抽選に申し込んだほど。

 この距離ではもう、まぶしくて目が開けない。


「別に時間を縛られてるわけでもないし、移動も徒歩で行くから大丈夫よ」

「はい、それに戦闘能力のないお姫様でも守り抜くメイさんが一緒です。問題ありません」


 そう言って、歩き出す三人。


「あ……え、ええと、ふつつつか者ですが、よ、よよよろしくおねがいしますっ」


 少女はブンブンと頭を下げ、メイたちと共に歩き出す。


「わ、私、結木まもりと申します……っ」

「ゆうきまもりちゃんだね! メイですっ、よろしくお願いしますっ!」


 こうしてメイたちは盾の少女まもりと共に、星屑で一番美しい街と呼ばれたフローリスの復活に向けて動き出すのだった。

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◆◆◆新作よろしくお願いいたしますっ!◆◆◆

【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] レンさんや、一応知り合いのその子ら疑う前に王都で怪しいことやってた奴らの事を思い出してあげよう…… 確かあいつらもそれっぽい服装してた気がするしw
[良い点] いや、アラバスタ編のトト爺さんみたいなお爺さんよ そこまで対処法知ってるなら、土を運ぶよりやれる事あるんじゃないですかねw 毒を吸う植物は植物学者さんですね。 「そういった植物もあるには…
[良い点] お姫様な盾少女にw [気になる点] ちょっと疑われた闇の使徒と暗夜教団「「さっきまで一緒にいただろう・・・!(憤慨)」」 [一言] ツバメちゃんに近いけどツバメちゃんより気配はあれど自信は…
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