710.新たな街へ向かいます!
朝が来れば、ラフテリアに眩しい太陽が昇ってくる。
祭が終わっても陽光に青い海が輝けば、それはもういつもの賑やかな港町。
「ツバメちゃーん!」
ログインするのと同時に見えたツバメに、声をかける。
「メイさんっ」
するとツバメもすぐに、メイのもとに駆け寄ってきた。
「よいしょっと」
そこにレンも、【浮遊】で降りてきた。
今日もいつも通り、待ち合わせ時間より早い集合だ。
「広報誌、もらってきたわよ」
「やったー!」
「さっそく見てみましょう」
「表紙はダブルメイさんですね!」
フェス特集号の広報誌は、メイと観客と空を行くクジラ。
飛沫がまぶしい海クエストの見開きからスタート。
港町での開催だけあって、どのページも鮮やかで楽しそうだ。
「あっ、新職業のシーンもあるね!」
メイたちが紹介した新職業『シャーマン』は、すでにラフテリア内で普通にすれ違うほどの人気だ。
メイちゃんカフェの動物たちと戯れる少女三人は、運よく猫耳レプリカを当てた子を中心にメイたちのパーティを模した格好をしている。
「ツバメたちのコンビネーションもあるわね」
ツバメとスワローが並ぶページは、一転クールでカッコいい。
今頃なーにゃは狂喜乱舞して、そのページを切り取りラミネート加工しているだろう。
「あ、スライムさんです」
「……これ、誰かを運んでない?」
メイちゃんカフェに迷子ちゃんを護送する途中の一団に、思わず目を奪われるレン。
その奇妙な光景には、掲示板組も笑っているだろう。
「楽しかったなぁ」
「はい、とても楽しかったです」
思い出して浸る、メイとツバメ。
すごく賑やかな構成の広報誌には、新たなワールドレコードについても載っている。
今回のフェス成功に、メイたちは多大な効果を与えたと言っていいだろう。
「それより今回の動画よ!」
そんな中、レンが思い出したかのように声をあげた。
「案の定リズや刹那との連携がしっかり切り取られてたんだけど、運営がどこで聞きつけたのか『原初の三使徒』って名前までしっかり載せてたのよ……っ!」
「あ、原初の三使徒だ」
「やめてーっ!」
いきなり通行中のプレイヤーに指差しで呼ばれて、頭を抱える。
星屑世界に中二病プレイヤーを増やした三人の動画は、編集によって凄まじい格好良さになっている。
そのため再生数も、大変な勢いになっているようだ。
さらに今回はメイが銀色メイを呼び出したことで、禁忌目録にも注目が集まっている。
そうなればもちろん。
「見ろ、隣にいるのは野生児姉妹の……」
「野生児姉妹!?」
ダブルメイの活躍によって聞こえた言葉に、即座に反応。
「ややや野生児ではございません! 見てください、例えばここっ!」
メイは慌ててサバイバルレースのページを開くも、そこにはターザンロープを使うメイ。
「例えばここっ!」
続けてページを開くも、レイド到着と同時にバナナを頬張るメイ。
「そ、それならここっ!」
開いたページは、ケツァールと共に【野生回帰】状態で空へ登る瞬間。
「どこもかしこも野生だーっ!」
運悪く全て野性味満載のページで、メイも一緒になって頭を抱えるのだった。
「星屑フェスでのご活躍、お見事でした。そして開催中もお手伝いいただき、ありがとうございます」
そんな三人が向かったのは、港前に作られた特設広場。
そう言って丁寧に頭を下げる銀髪のミステリアスな少女は、チュートリアルAIの【HMX-18b・ベータ】だ。
「あっ、ベータさん衣装が変わってる! かわいいーっ!」
白のピタッとしたキャンペーンガール風衣裳に、鮮やかな青のスカーフ。
ベータも海の街のお祭りに、ふさわしい姿になっている。
「今回皆さまの取得ポイントは、お仕事をこなしながらにしてトップクラスでございました。こちらが報酬となります」
すでにメイはMVP商品をもらっているため、現れたのはレンとツバメ用の宝箱。
「宝箱ガチャの時と同じ箱を使われると、ハズレも入ってそうなんだけど……」
「…………」
その言葉を聞いた瞬間、ツバメの表情が死ぬ。
「ふふ、さすがに大丈夫よね。さっそく開けてみましょう」
「そうですね」
「何が入ってるのかなーっ」
気を取り直して三人は、目の前に並んだ宝箱を開く。
『毒消し草』
『ただの草』
「ええええええええ――――っ!!」
まさかの本当にハズレを引くという事態に、思わず驚愕するメイ。
「「…………」」
レンとツバメに至っては、まさかのハズれぶりに言葉を失っている。
するとベータは、パチンと指を鳴らした。
するとあらためて、二人の前に宝箱が現れた。
「というアトラクションから、本物の報酬でございます」
「や、やってくれるわね!」
「これは驚かされたました」
「運営側のちょっとしたイタズラ心でございますね。皆さんのおかげでとても楽しいフェスになったと、再度お礼を申し上げるよう伝言も承っております」
フェス参加への感謝は封書でも届いていたが、ここでは少し遊び心を込めてということのようだ。
思わずクスクス笑ってしまう三人。
「それじゃ、本命の方を開けてみましょうか」
「はいっ」
「今度こそだねっ!」
【超高速魔法】:一発のみだが、攻撃魔法を目にも止まらぬ速さで飛ばすことができる。魔法の範囲が狭い物ほど高速化する。
まずはレンから中身を確認。
「魔法速度をさらに上げるスキルね。高速化と違って【連続魔法】との組み合わせはできないみたいだけど……初級魔法を溜めて【ペネトレーション】と一緒に使ったり、【誘導弾】【魔砲術】と一緒に使ったら面白いかも」
さっそくその効果を読んで、使い道を考え出す。
「では、次は私ですね」
【反転】:移動、移動攻撃スキル後に高速で振り返る。反転からのスキル使用も可能。
「ツバメの場合、リキャストが短い【電光石火】で行って【電光石火】で戻ることもできそうね」
「行って戻る斬撃……面白そうです」
「そう言えば、メイがもらった報酬はどんな効果なの?」
「ちょっと待ってね、みんなで一緒に見ようと思ってまだ確認してないんだ」
そう言ってメイは、報酬として皆の前で授与された賞品を取り出してみる。
【原始肉】:前もって食べることで、一定時間状態異常の効かない強靭な身体となる。
「方向としては【蓄食】や【世界樹の実】に近い感じでしょうか」
「でも、これもいい物に違いないわ。所持限界数が少ないから、その都度専用の肉を買って焼くのが少し手間って感じかしら」
その効能を真面目に考察するレンとツバメ。
一方メイは、骨の部分だけでも野球のバットより大きな肉を持つ手を震わせる。
「フルーツを丸かじりするだけでも野生っぽいのに、こんな大きな骨付き肉を食べ始めたらもう完全に原始人だよーっ」
そしてその武骨な丸焼き感に、あらためて悲鳴を上げたのだった。
◆
「次はどこに行こっか!」
フェスの報酬を得たメイたちは、新たな行き先の話を始める。
「これまでいったことのない場所で、星屑の有名どころってなると……フローリスとかかしら」
「フローリス?」
「星屑で一番綺麗な街なんて呼ばれてる、花の都ね」
「一番綺麗な街……どんなところなんだろう……!」
さっそく尻尾をブンブンさせて、メイは期待に胸をはずませる。
「いいですね。まずは観光という形でも、花の都を見てみたいです」
「とにかく一度行ってみましょうか」
こうして三人は、新たな行き先をフローリスに決定。
ポータルへ向かい、一度の乗り継ぎを経て花の都へ。
「一番綺麗な街かぁ……ワクワクしちゃうなぁ」
「本当ですね。ラフテリアとはまた違う、風に揺れる花の街……想像するだけで気分が高ぶります」
「うんっ」
「なんだか、お花見にいくような期待感があるわねぇ」
三人は笑いながら、ポータル移動を完了。
フローリスに到着すると、転移の光がゆっくりと消えていく。
「花の都に、到着ですっ!」
期待と共に、駆け出すメイ。
「え、ええっ?」
思わず足を止める。
目の前に現れたのは毒溜まり、謎の煙、色の悪い植物。
「ええええええええ――――っ!?」
そして花の都の凄惨な光景に、思わず悲鳴をあげたのだった。
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