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704.ぶつかり合い

 メイたちの到着から、変わり出した流れ。


「もうHPもMPもギリギリだな……!」

「ふん、今回は任せるぞ」


 時間もない中、アルトリッテとグラムがメイたちに後を託す。

 ここまできたらもう誰もが、この超大物を倒して終わりたい。

 怒涛の攻勢で、黙示録の獣のHPは4割強というところまで減少。

 しかし黙示録の獣は、このまま優位を取られっぱなしで終わるような相手ではない。


「ギャアアアアアアアアアア――――――ッ!!」


 煌々と輝く赤い目に、身体を震わせるほどの咆哮。

 7つの口を同時に開くと、放たれる無数の光弾。

 それは一か所に集まり、炸裂する。


「――くっ!」

「なになにこの威力ーっ!?」


 雨涙やココといった近接トップ組も、もはや防御で何とかするほかない。

 受けるダメージ。

 この一撃でプレイヤーたちの足を止めた獣は猛烈な勢いで走り出し、先頭のメイを狙う。

 前足による、猛烈な乱打。


「っ!!」


 一撃ごとに地面を揺らし、わずかに体勢を崩すこの攻撃。

 メイはやや長めのステップで接地を減らし、これを回避する。

 続くのは、揺れの回避に集中したところを狙う尾の振り払い。


「【ラビットジャンプ】!」


 メイはこれを後方への高い跳躍でかわすが、直後に4つの頭が計12発の大火炎弾を連射。


「【装備変更】【バンビステップ】!」


 対してメイは、頭を【鹿角】に変えて機動性を向上。

 迫る12連の火炎弾の隙間を、華麗にすり抜けていく。

 すると黙示録の獣は魔法陣を展開。

 500発に及ぶ、魔法弾の雨を降らせる。


「な、何よこの範囲っ!?」


 前衛組はもちろん、中距離の面々にも迫る容赦ない攻撃。


「きゃあっ!」


 レンを始め、回避力が高いわけではない者たちはこれを喰らってしまう。

 回避や被弾のために崩れたプレイヤー陣を前に、獣はさらにダメ押しをかけてくる。


「ちっ、【ソニックドライブ】!」

「【ペガサス】!」


 回避行動直後、ようやく硬直が解けてきた前衛組が嫌な気配に動き出す。

 直後、降り下ろされた獣の尾が地面を割り、付近一帯に大きなヒビを走らせた。

 メイはしっかり距離を測って回避したが、広範囲に渡って地面が沈下。

 足を取られた多くのプレイヤーに向けて、猛烈な勢いで水流が迫る。


「この水……みんな避けてーっ!」


 嫌な予感を覚えたローランが叫ぶ。

 その言葉に、濡れる足で慌てて走るトップ陣。


「まずいわぁん!」


 一瞬の輝き。

 直後、付近の水流を駆け抜けるまばゆいほどの雷光が輝いた。


「わああああああああ――――っ!!」

「「「きゃああああああああ――――っ!!」」」


 雷は水流だけでなく、噴き上がった飛沫にまで通電。

 中距離にいたアトラクナイアやキュービィたちにまで、そのHPを3割近く奪う一撃を炸裂させた。

 そして雷撃までは予想できなかったメイも、ほぼ直撃で3割強のHPを奪われる。

 足場を崩し、水流でダメージと大技への布石を打ち、雷光でダメージ。

 黙示録の獣が一体で成した三連続の連携は、レイド参加者たちの陣形を大きく崩した。


「か、感電までつくの……っ!? ここにきて本当に大暴れじゃない!」


 雷撃には、弱い感電効果まであり。

 動けない参加者たち。

 おとずれた最悪の危機にさすがに空気が沈みかけた、その瞬間。


「ここは、私が……!」


【サクリファイス】の使用で、もうHPはわずか。

 暴れ狂う獣に対し、ツバメが時間稼ぎに名乗りを上げた。


「いきます! 【ヴェノム・エンチャント】【疾風迅雷】!」


 雷撃へ続く連携を【跳躍】からの【エアリアル】を使うことで運良く回避していたツバメは、覚悟を決める。

 残りHPが少ないほど火力を増す【境界死線】に、『毒』を乗せて走り出す。

 即座に迫る、7つの頭。


「【加速】! 【加速】【加速】っ!」


 放たれた炎弾をすり抜け、左右からきた喰らいつきをかわし、左右の短剣ですれ違い際を斬りつける。

 そして急停止。


「【加速】【リブースト】!」


 不意に止まり、頭の一つを引き付けたところで超加速。

 その際もツバメは、短剣で斬撃を入れていく。

 しかしそこに真正面から喰らいつきにきた頭。

 誰もが敗北を確信するが――。


「【スライディング】!」


 あご下を滑り抜ける形で回避を決め、すれ違いの首元に斬撃を入れる。

 即座に起き上がり、迫りくる二つの頭を踊るようにかわして左右の短剣を走らせた。


「ッ!!」


 しかし2つの攻撃をかわした際、死角になった地点から飛び出してきた頭。

 回避するも肩を薄くかすめた牙が、HPの数値を1ケタにまで追い込んだ。

 だがツバメも、ダメージを受けバランスを崩しつつもしっかり斬撃を入れている。


「残り一撃……! ッ!? 【跳躍】!!」


 回り込むような軌道での喰らいつきに気づいたツバメは、体勢が整わぬまま慌てて後方へ跳躍。


「【エアリアル】!」


 続く一撃を二段ジャンプでかわすと、見えたのは正面から迫る頭。

 あとは落下するだけのツバメ。


「【アクアエッジ】! ……ッ!?」


 水刃による攻撃範囲伸長で8発目を入れようとするが、最後の頭はその場に停止。

 続く攻撃は【喰らいつき】ではなく、【炎弾】か【水弾】だ。


「【投擲】――――ッ!!」


 そう理解した瞬間、ツバメは即座に攻撃方法を変更。

 放った【ブレード】は突き進む。

 そして今まさに放たれたばかりの高速水弾と、空中で交差した。

 相手に先に届いたのは、【ブレード】だった。


「ッ!!」


 イチかバチか、首を傾げる。

 すると水砲弾は、ツバメの長い髪を濡らして通り過ぎていった。

 こうしてどうにか、8発の攻撃を決めてみせたツバメ。

 獣の体内で毒性が爆発、身体を大きく跳ねさせる。


「お願いします……っ!」


 着地と同時に尻もちをついたツバメが上げる声。


「おまかせくださいっ!」


 瀕死の中、稼いだ時間。

 感電から立ち直ったメイは、高く右手を突き上げていた。


「――――おいでくださいませ、狼さんっ!」


 魔法陣から吹き出す白煙。

 その中から現れた白狼が走り出し、そのまま黙示録の獣に食らいつく。

 口元に集まる冷気が、白光を上げて爆発。

 黙示録の獣の半身を凍らせて、凍結を奪い取る。

 もちろんメイは止まらない。


「続きましてクジラさん――――よろしくお願い申し上げますっ!」


 今度は足元に生まれた魔法陣。

 大量の水飛沫と共に飛び上がったクジラは宙を舞い、凍結状態の獣に突撃する。

 弾き飛ばされる黙示録の獣。


「…………いきます」


 ゆらりと立ち上がるアサシンに、息を飲むトップ勢。

 なんとツバメはまだ、止まらない。

 その言葉にメイが、迷わず召喚を続ける。


「――――それでは、よろしくお願いいたしますっ!」


 魔法陣から現れたのは、ハッピを着たお祭りグマ親子。

 手にした巨大な水風船をブンブン振り回しながらの猛烈ダッシュ。

 子グマはフランクフルトに水あめという完全装備で観戦。


「【加速】【リブースト】!」


 先行したツバメが【喰らいつき】からの【喰らいつき】をかわして、代わりに2本の【誘爆刃】を刺し、ターゲットを奪う。

 直後、跳躍したクマは空中で水風船を放り出すと、そのままグレートベアクローを叩き込んだ。


「【加速】【リブースト】」


 弾き飛ばされた獣を追い、最後の【誘爆刃】を刺すとツバメはここでついに足を止めた。


「続くわ!」


 この瞬間を待っていたのはレン。

【常闇の眼帯】を外し、【宵闇の包帯】を取り払う。

 こうして上級魔法の五連発を可能にすると、宝箱ガチャで手に入れた【エコーの宝珠】を使用。

 さらに【色炎のお守り】まで装備した状態で、杖を掲げる。


「【フレアバースト】――――っ!!」


 放たれる5連続の爆炎が、エコー効果によって10連となり、夜空を紫の炎で染め上げる。

 ここでさらに【誘爆刃】が炸裂。

 ドンドンドン! と、三つの爆炎が花火のように炸裂し、黙示録の獣は空中に派手な三つの爆発を残して吹き飛ばされた。

 紫と橙。

 大量の火の粉が舞い落ちる中、メイとツバメは帰りゆくクマ親子に手を振って見送る。


「…………ウソ、だろ」

「これでもまだ、2割も残ってんのかよ!」


 すでにHPが危うい金糸雀が、悲鳴をあげた。


「もう閉会式が始まる、時間がないぞ……っ!」

「攻め切れ……ないのかっ!?」


 地を転がった黙示録の獣はその目をさらに強力に輝かせ、猛烈な咆哮と共に光弾を吐き出す。

 大量の光弾は収束し、先ほどよりも広い範囲での爆発を巻き起こす。

 これを逃げたところに放つのは、降り注ぐ500発の魔法。


「仕方ない……っ! イフリート!」

「そうねえっん! アビヤードちゃんごめんねっ!」


 少ないHPと崩れた陣形。


「ああっ!!」

「きゃあんっ!」


 瀕死のメンバーの盾となった召喚獣と従魔が倒れ、いよいよ誰もが終わりを意識する。

 これだけの火力の攻撃を連発する、黙示録の獣。

 消耗しているこの状況で、時間内に攻め切ることはさすがに厳しい。


「いきます」


 そんな中、つぶやいたのはメイ。

 残ったいくつかの選択肢。

 選んだのは、さらなる召喚だ。


「――――誰が来てくれるかなっ!」

「「「ッ!!」」」


 ここでツバメとレン、そしてごく一部のプレイヤーだけが気がついた。

 猫の耳に尻尾、肩までの髪。

 右手に剣を持った、見慣れた少女。


「メ、メイちゃんが」

「――――もう一人?」


 遺跡都市ラプラタの奥地からやって来た無表情のメイは、その全身を銀色に輝かせていた。

※今回は少し長くなってしまったので、分割して2話同時更新という形にしております! 


ご感想いただきました! ありがとうございます!

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【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
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