703.怒涛のコンビネーション
「これがメイちゃんたちの力……っ!」
「いけるぞ! 俺たちも生成されるモンスター共をきっちり片付けるんだ!」
押され気味だった戦いに、メイたちが参加したことで生まれた変化。
トップ勢を含めたプレイヤーたちの間に、前向きな雰囲気が広がる。
しかしHPが3割強ほど減ったところで、黙示録の獣のスキルにも変化が現れた。
獣は7つの首を後方へ傾げる。
「「ッ!!」」
次の瞬間放たれたのは、魔法だった。
鼻先に現れた7つの魔法陣から一斉に放たれる魔法光弾は、300を超える。しかも。
「追ってくるよ!」
メイとツバメに向けて放たれた光弾は、速い上に追尾型。
「【加速】【リブースト】!」
「【バンビステップ】!」
二人は高速走行でしっかり引き付けてから回避するも、光弾は大きな弧を描いて戻ってくる。
「ツバメちゃん!」
「メイさん!」
付近には都合の良い障害物もない状況。
二人は名前を呼び合い、うなずき合う。
「【裸足の女神】【ラビットジャンプ】!」
「【加速】【リブースト】【跳躍】!」
向かい合うように駆けてきたメイとツバメは、直前で超加速しすれ違い跳躍。
すると遅れてきた追尾弾たちは正面からぶつかり合うことになり、一つの爆発が新たな光弾を巻き込み誘爆。
瞬くような連爆を巻き起こし、二人は見事に追尾光弾を攻略した。
「メイ! この神槍が反撃の機先を作るぞ!」
「りょうかいですっ!」
すると振り返ったメイのところに、グラムが【ソニックドライブ】で飛び込んできた。
その狙いはただ一つ。
「いきますっ! 【ゴリラアーム】!」
メイはグラムの腕をつかむと、そのままその場で三回転。
「せーのっ! それええええ――っ!!」
砂煙を上げ、高速で飛来するグラム。
予期せぬ速度と移動法に、わずかに反応が遅れた黙示録の獣。
対応するため喰らいつきにきた頭に、グラムはそのまま神槍を突き出すと――。
「【クインビーアサルト】――――ッ!!」
この一撃がカウンターで突き刺さり、獣は大きく体勢を崩した。
「【ペガサス】!」
そこに飛び込んで来たのはアルトリッテ。
「【サンクチュアリ】! 【セイクリッドレイジ】だああああ――っ!」
すぐさま『聖域』を発動し、聖属性攻撃の火力を向上。
「はあああああああ――――っ!!」
大きく飛び散る聖光。
残っていたMPで計8発の剣撃を叩き込んだところで、獣が反撃に入る。
放たれるのは、7つの頭が一斉に放つ高速水砲弾。
「【ソニックドライブ】【大車輪】!」
しかしアルトリッテの前に出たグラムが、これを神槍の高速回転で弾き飛ばした。
「【裸足の女神】!」
ここで舞い散る水しぶきを割るようにして、メイが最前列に躍り出る。
「【フルスイング】!」
エフェクトがド派手に飛び散る強化【フルスイング】は、迫る頭の一つを消し飛ばす。
だが獣の次撃は、すでに動き出している。
轟音をたてながら迫るのは、猛烈な尾の振り払い。
「【ペガサス】! 【セイントシールド】!」
これを飛び出してきたアルトリッテが黄金の盾で止め、巻き起こる衝撃波まできっちり受けきってみせた。
振り返る獣。
その5つの口内に輝くのは、ブレスの真っ赤な炎。
「いーちゃん!」
これを放つ爆風で炎をそらし、メイはヒザを大きく曲げる。
「【ラビットジャンプ】【装備変更】【アクロバット】!」
跳躍から、そのまま空中で一回転。
手にした【大地の石斧】を、高く掲げる。
「【地裂撃】ぃぃぃぃ!」
突き刺さった石斧が、大きく地面を突き落とす。
巨体を持つ獣は、それをかわすことができず崩落に巻き込まれた。
「からの――――【グレート・キャニオン】だああああっ!!」
大きく突きあがる大地。
高く吹き飛ばされ、落下してくる黙示録の獣。
「喰らうがいい……」
その瞬間を狙っていたのはグラム。
手にした神槍を掲げ、大きく振りかぶる。
「ゆくぞォォォォ! 【神槍雷破】ぁぁぁぁ――ッ!!」
収束するエネルギーエフェクト。
それが弾けた瞬間、投じられた神槍は轟音を響かせる。
それは超高速超威力の最終兵器。
炸裂し、吹き飛ばし、黙示録の獣の頭を2つ消滅させた。
「続きます!」
あっという間に再生していく頭。
早い起き上がりを見せる獣に、ツバメが走り出す。
するとその横に、よく似たアサシンが続く。
「いきましょうスワローちゃん! ここが勝負ですな!」
なーにゃのアサシンドール、スワローが前線への参加を表明。
「【分身】」
ツバメが生み出す分身は三体。
分身体もツバメと同様のスキルで、敵の攻撃を回避する。
そのため7つの頭も、分散せざるを得ない。
左右から喰らいつきにきた二つの頭を、分身ツバメが【加速】からの【リブースト】で置き去りにする。
前へ前へと連続での喰らいつきを仕掛ける三つ目の頭を、分身ツバメ2は【跳躍】でかわす。
そして分身ツバメ3は【疾風迅雷】からの【加速】三連発で、四、五、六個目の頭を翻弄。
残った頭に飛び込むのは、ツバメを模したドール『スワロー』だ。
「【急加速】【宙返り】! そのまま【二連空閃】ですな!」
喰らいつきを回避しつつ空中で放つ二連撃が、剣閃を走らせる。
「【四連剣舞】」
見れば空中には、もう一つの影がある。
時間差で【跳躍】していたツバメが、剣舞で着地の隙を埋める。
これによってスワローは、体勢を整える時間を得た。
「【ブレードダンス】!」
回転しながら放つ、閃光のごとき三連撃。
すると連続攻撃を決めた『危険な敵』に反応した獣の頭たちが、一斉にスワローへ狙いを変えた。
あっという間の取り囲みから、一斉に迫る【爆炎喰らいつき】の嵐。
迫る大きな危機。
「【スライディング】【瞬剣殺】!」
そんなスワローの足元にすべり込んできたツバメの放つ空刃が、迫る頭をまとめて切り刻む。
「すげえ……こんなの捕まえられねえだろ……っ!」
三体の分身とスワローを加えた計五人の見事な動きで、七つの頭を見事にかく乱。
アサシンコンビは止まらない。
「スワローちゃんここですな! 【弐雷金威】!」
のけ反る獣にスワローが突き刺した、右の短剣が電気を発生し、パリパリと輝き出す。
「ツバメちゃん! 次の一撃で隙ができますな!」
「了解しました! 【加速】【リブースト】【アサシンピアス】!」
ツバメは高速の直進から、獣の胸元に一撃。
すると六つの頭が、即座に炎弾で反撃。
巻き起こる爆発の中に、もちろんツバメの姿はない。
「それは、残像です」
「今ですな!」
ツバメの【残像】が陽炎のように消え去った直後、スワローは残った左手の短剣を獣に突き刺した。
一本目の短剣と反応し、獣の全身を駆け出す電流。
次の瞬間、目を焼くほどにまばゆい閃光が地から天に上りゆく。
生み出された『逆行の雷』は、雷鳴と共に天を突いた。
【弐雷金威】は両手の武器を敵に刺すことで、ダメージとなるスキル。
一時的に武器を手放してしまう上に、二度の機会を必要とする分、高いダメージと同時に硬直を奪うことが可能。
ツバメと共に『雷』を扱って戦うことを空想しながら載せた、ひと財産投げうちスキルだ。
もちろんこの隙を、ツバメは逃がさない。
「【サクリファイス】【雷光閃火】――――ッ!!」
黒煙を上げる黙示録の獣に、9割のHPを捧げ突き刺す【致命の葬刃】
派手な火花を散らし、盛大な爆発を巻き起こす。
クルクルと宙を舞い戻って来た短剣を、ツバメは華麗に受け取った。
「――――畳みかけるなら、今しかないわ!」
声を上げたのは、ナイトメア。
「我が行く! 【闇の翼】!」
これに応えてレクイエムが、闇の粒子を噴き出しつつ暗い空へと上昇。
「【ダークフラップ】!」
漆黒の翼の大きな羽ばたきで、一気に距離を詰める。
「はああああああ――――っ!」
そのまま黒の大剣で斬りつけ着地。
ダメージを受けた黙示録の獣は当然、目前のレクイエムを喰らいにいく。
「そうはさせないよ【クルシフィクション】!」
しかし迫る2つの頭は、地面から突きあがったルナティックの鎖に締めあげられた。
「高速【誘導弾】【フレアアロー】!」
さらに上部から迫りきていた頭を、ナイトメアの炎矢が弾いたところで――。
「喰らうがいい――――【飛天闇祓い】!」
地を擦りながら放つは、毛筆で描いたような荒々しい漆黒のエフェクトを生み出す、豪快な大剣の振り上げ。
凄まじい威力の一撃は、獣の巨体をひっくり返してみせた。
「……目覚めなよ、ボクの【呪印】」
ルナティックの命令に反応し、腕から肩にかけて刻まれた紋様が煌々と光り出す。
「……【魔眼開放】」
同じくして、ナイトメアも右目を金色に輝かせる。
二人は同じタイミングで手を伸ばし、宙を舞う黙示録の獣に照準を合わせる。
「この身に刻みし紋様は、悪魔契りし呪いの烙印」
「この眼に瞬く妖光は、魂穿つ魔性の顕現」
「煌天の月」
「静天の日輪」
「暗夜にたゆたう羅刹の光は」
「影征く者の魂の慟哭」
「啼き叫べ」
「舞い踊れ」
「神を喰らい」
「光を喰らえ」
「気高き汝に与えられるは」
「昏き悪魔の祝福なり」
「慈悲を汚し」
「闇と散れ」
「――――【クリムゾンフレア】!」
「――――【ダークフレア】!」
ナイトメアとルナティックが同時に放った闇の炎は、我先に黙示録の獣を焼き尽くさんと迫りゆく。
ぶつかり、弾け、交じり合う業火。
炸裂し、天高く地獄の豪炎が舞い上がった。
二人の魔導士の髪が夜に揺れ、その姿が紫色に照らされる。
「狂気が見せる悪夢に沈め。これが貴様へ送る――――葬炎のレクイエムだ」
「「「…………ッ」」」
クールに杖を払うナイトメアと、邪な笑みを浮かべるルナティック。
そしてゆっくりと剣を下ろす重装の黒騎士レクイエムに、黒少女や使徒加入希望者たちが鳥肌を立てる。
「…………」
気づいた者はいなかった。
いよいよ即興でルナティックと合体詠唱をし始めたツバメに、ナイトメアが完全な白目をむいていたことを。
そしていよいよHPが半分を切った黙示録の獣の目が、真っ赤に輝き出していたことに。
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