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563.蘇る悪夢

「ボクの力を見せてあげるよナイトメア。そしてキミはここで悔恨に震えるんだ」


 刹那の悪魔召喚によって目覚めた、強欲の大罪悪魔アモン。

 ヘビの下肢を持つ巨大フクロウが、動き出す。


「【フレイムバスター】」

「ッ!」


 アモンが放つは、真紅の豪炎弾。

 その大きさは直径にして約1メートル。

 これをかわすも、床にぶつかった炎弾は噴き上がる溶岩のように弾け飛び視界を赤く染める。


「【飛び影】【連続魔】【ブレイズキャノン】」

「ッ!!」


 その隙を突き、目前に高速で踏み込んで来た刹那。

 突き出した手から放たれる二連の炎砲弾を、レンは転がることでかわす。


「まずっ!!」


 しかし起き上がったところに迫るのは、下肢の蛇尾。


「きゃあっ!」


 その振り回しを受けたレンは、ゴロゴロと砂煙を上げながら転がる。

 ダメージは1割強。


「まだまだここからだよナイトメア!」


 刹那の手が伸びる。


「なっ!?」


 魔法による攻撃を警戒したところでなんと、蛇の下肢を伸ばしたアモンが刹那の背中を越え突撃。

 そのままレンに、狼の腕を叩き付ける。


「ッ!?」


 肩を弾かれ、思わず体勢を崩す。

 するとここで刹那は、右手を高く突き上げた。


「さあ、処刑の時間だぁぁぁぁ! 【アイアン・メイデン】!」

「ッ!!」


 足元に広がる無数の光点。

 聞こえた『鎖を引きずる』ような音の直後、大量のダガー付き鉄鎖が一斉に高く突きあがる。

 回避は完全な偶然、刹那の攻勢は続く。


「【フレイムディザスター】」


 アモンの咆哮と共に地割れが走り、溶岩のような炎が噴きあがる。

 禍々しい鎖の突き上げはまだ消えておらず、まともな回避行動がとれない。


「きゃあああああああ――っ!!」


 赤熱する炎を喰らい、吹き飛ばされたレンのHPは早くも6割ほどとなった。


「どうしたんだいナイトメア? キミの力はその程度なのかい?」

「高速【誘導弾】【連続魔法】【フレアアロー】!」


 両手を開き、首を傾げてみせた刹那に向けて放つ高速の炎矢。


「おっと」

「まだまだ! 【フレアストライク】!」


 続けざまの炎砲弾を炸裂させ、炎が高く舞い上がる。


「ナイトメア、最後のは蛇足じゃないかな? 炎の矢が避けられた時点でムダ弾にしかならないよ」

「それでいいのよ。その余裕を見越して立てた『壁』なんだから……っ!」


 そう言ってレンは、すぐさま杖を掲げる。


「【魔力蝶】!」


 杖がまばゆい輝きを閃かせると、舞い上がった無数の黒蝶が一斉に羽ばたき出す。

 それは小さなダメージを無限に起こし続けることで、HPを猛烈な勢いで減らしていく魔法スキル。


「……アモン!」


 その異様な光景に、さすがに危険を察知した刹那はアモンに守らせつつ【飛び影】で下がる。

 黒蝶は衝突と同時に淡い乳白色の輝きを放ちながら爆散し、闇色の羽を散らして消えていく。


「へえ。いいねえ、そのスキル……」


 身代わりとなったアモンのHPは、3割強ほど削り取られていた。

 それを見て、意味深な笑みを見せた刹那。


「それ、ボクにも使わせてよ――――【グリード】ォォォォ!!」


 フラッシュのように広がる光。

 レンは辺りを見回すが、状況に変化はない。


「それじゃあさっそく、遊んでみようかな」


 するとニヤリと笑った刹那が、強欲の大罪悪魔に命じる。


「アモン――――【魔力蝶】だ」

「ウソ……でしょっ!?」


 放たれた黒蝶の乱舞。

 自らの魔法ゆえある程度の回避ルートを知っているとはいえ、その全てを再現することなどできない。

 一斉に飛来する蝶たちは、次々にレンのHPを削っていく。


「これ、以上は……っ!」


 最後は回避を諦め、防御でダメージを軽減。

 敵が直前に使用したスキルをそのまま利用するという反則的な攻撃の前に、追い込まれたところで――。


「【飛び影】」

「ッ!!」


 すでに目前に迫っていた刹那の姿。

 着地からの【ブレイズキャノン】を覚悟して、再び防御を姿勢に入る。

 しかし低い跳躍から直で迫る攻撃は、まさかの【飛び蹴り】だった。


「くっ!」


 綺麗な低空跳躍蹴りが決まって、再び地を転がるレン。


「舐めたマネ……してくれるわね」


 魔導士型の『蹴り』は当然威力も低く、ダメージは3%にも満たない。


「言っただろう? ボクは強くなりすぎてしまったんだよナイトメア。キミを相手に『遊び』を入れるくらいにね」


 そう言ってクスクス笑う。

 すでにレンのHPは半分を切っている。


「……ナイトメアは、力を求めて闇の使徒を抜けた」


 不意に、刹那がつぶやいた。


「ボクと一緒じゃ強くなれないと思われたまま、済ませるわけにはいかないからね」

「……え?」

「ボクたちが聖教都市を落とせば証明になるだろう? だからキミの登場は好都合だったんだよ。ナイトメアを倒して街を闇に還す。そうすれば知らしめられる。ボクの、暗夜教団の強さをね……もう誰にも、弱いなんて言わせない――っ!」


 どうやら刹那も、リズとは違う形で勘違いしているようだ。


「ふふ、でも今は感謝してるんだ。おかげでボクは誰よりも強くなった……この世界を変えられるくらいにね」

「…………」


 レンは考える。

 力を求めて組織を抜け、新しいパーティを組んだという設定。

 それが刹那を勘違いをさせてしまっても、おかしくない。

 とはいえ。

「もう全力で中二病はできない」からと正直に言って、それで誤解が解けることはない。

 ある意味言葉が通じない病状なのは、誰より知っている。

 それなら、どうすればいいのか。


「一方的な正義を強いる神を抑止する者は必要。でも私は力に魅入られてしまった。だからその責務を押し付ける形で使徒を去った……」


 ささやきながら、設定を構築。

『刹那たちでは力不足』と考えたわけではなく、『抑止者は必要』と考えたから一人使徒を抜けた。

 神の抑止は闇の使徒の理念であり、創始者であるレンが言う分には説得力があるはずだ。


「でも、ここで勝たないと刹那はこのまま突っ走ってしまうでしょうね……」


 刹那は完全に『この設定』に酔っている。

 レンに勝てばそのまま、勘違いを正すことなく突き進んでしまうだろう。

 それは闇落ちしていくキャラクターを、止められなくなってしまうような状況。

 新たな設定を理解してもらうにはまず、刹那に勝たなくてはならない。


「来なよナイトメア。レクイエムと戦った時のような――――本気でさ」

「ああもう……っ」


 他に方法があるとは思えないし、何より刹那にも納得してもらいたい。

 そのためには『力に溺れた最強の魔導士』が必要だ。

 レンは刹那に背を向けると、自分の頬を強く叩いて大きく息を吸う。

 いろいろ想像して熱くなり出す顔を必死に抑えて、迷いを断ち切る。

 吹き抜けていく夜風。

 髪の揺れが収まるのを待って「……よし」と、静かに覚悟を決めた。


「――――フフ、フフフフ」


 途端にもれ出す、妖しい笑い声。


「ナイトメア……?」

「相変わらず可愛いわねぇ……ルナティック」


 そう言ってうつむいていた顔を上げると、そこにはかつて見た闇の魔導士がいた。

 この世界の闇を全てを知り尽くしているかのような、妖しい笑み。

 愛用の杖だけを気だるげに持ち、大雑把に払う銀の髪。

 そして全てを睥睨するかのような、『下目使い』を向ける。


「お、おお……」

「出たぞ、また見れた……!」

「暗黒魔導士の復活だっ!!」


 一部の観戦プレイヤーたちから、あがり始める歓声。


「いいわ、特別に遊んであげる。寂しがり屋の刹那ちゃん。おいで……【魔力蝶】」


【フリーズブラスト】を使い、羽の中心を青白く染めた【魔力蝶】を4匹舞わせると、ふわりと軽くステップ。


「【低空高速飛行】」


【夜風のローブ】を起動すると、そのまま滑るように加速。

 闇の魔導士ナイトメアが、動き出した。


「【連続魔】【ブレイズバレット】」


 速い飛行を行う相手に、攻撃を当てるのは難しい。


「アモン! 【フレイムバスター】!」


 一方4匹の蝶を移動砲台として舞わせているナイトメアは、敵の攻撃を回避しながら的確に反撃を仕掛ける。


「高速【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】」


 その隙に自らも魔法で大罪悪魔をけん制。

 低空飛行しながら放っても敵を追う氷の弾丸は、しっかりとアモンを足止めする。


「高速【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】」


 さらに4羽の蝶が放つ氷弾をかわしたばかりのルナティックを、狙う炎弾の連射。


「くっ! 【飛び影】!」


 すると一転、ルナティックは距離を詰めてきた。

 その右手に輝く魔法の光は【レビティア】のものだ。しかし。


「【スタッフストライク】」


 思わず距離を詰めたくなる直線の空白地帯は、誘い。

 ナイトメアはそこに、『杖を置いておく』感覚で打撃スキルを使用。


「なんだって……ッ!?」


 余裕を感じさせながら振り抜く杖が、今まさに飛び込んできていたルナティックに直撃した。


「ああああああっ!」


 得意の高速飛び込みを読んだ上に低ダメージの反撃を仕掛けるなど、『遊んでいる』と言ってもいい反撃だ。

 カウンターを取られ、大きく弾かれ転がったルナティック。

 ナイトメアはここで【宵闇の包帯】を外す。

 さらに【常闇の眼帯】も外し、【色炎のお守り】まで起動。


「【低空高速飛行】」


 倒れ込んだルナティックへ、一気に距離を詰める。


「守れアモン!! ナイトメア、キミの攻撃はボクまで届かないっ!」

「……あら?」


 しかしナイトメアは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「そんな薄い壁で、私の魔法を防いだつもりなのかしらぁ?」


 そしてそのまま、得意の爆炎魔法を放つ。


「【ペネトレーション】【フレアバースト】!」


【包帯】と【眼帯】の同時装備の場合、『上級魔法』を溜めておくことができる。

 解放時の効果は、その四連発だ。


「な、に……ッ!? うわあああああああ――――――ッ!!」


 その一撃に、誰もが呆然とする。

 四連発上級魔法という怒涛の攻勢。

 それが大罪悪魔を貫通して炸裂したという事実。そして。


「なんだ……あの炎は?」

「紫の炎なんて見たことないぞ!?」


 その色は、紫という特別仕様。

 これにはプレイヤーたちも、ルナティックも驚きが隠せない。

 使用したのは間違いなく、誰もが知っている赤い炎の上級魔法【フレアバースト】だったはずだ。


「これが……力を求めた魔導士の本気。炎までもが闇に染まったというのか……ナイトメア」


 紫の炎の四連発を、悪魔の盾を貫いて叩き込んだナイトメア。

 真円を描く月の下、長い銀の髪が揺れる。

 紫の残り火が揺れる中、闇の魔導士は静かに振り返った。


「「「…………っ」」」


 まとう空気に、思わず息を飲む観戦プレイヤーたち。


「どうしたのルナティック、そんなところに座り込んで。今宵の舞踏会はまだ始まったばかりでしょう?」


 そう言ってナイトメアは妖しくほほ笑み、その場にいた誰もがノドをゴクリと鳴らした。


「見せてあげるわぁ――――力だけを純粋に求めた、闇の魔導士の力を」

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【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] 暗黒騎士「我らも暗黒魔道師ナイトメア様ともに戦います、共にいきましょう。」観客のところかいかにも仕上がってきている人たち登場
[一言] 次の論理クイズは幼女と赤青のマークの予定です また幼女たち捕まってます。
[一言] レンスキー「素晴らしいこれでナイトメアアポカリプスに新たな伝説が加わった。」 レン(ナイトメア)のウィキを書き更にレン(ナイトメア)の非公認ファンブックを書いている 闇の教書よりも闇の黙示…
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