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564.ルナティックとナイトメア

「【魔剣の御柄】【フレアバースト】」


【魔力蝶】の効果が切れたナイトメアは、その手に紫の炎を宿した剣を持ち、低空飛行を開始。

 一気に距離を詰めに行く。


「ッ!!」


 振り降ろしからの横なぎを、必死のバックステップで切り抜けるルナティック。

 そのまま大きく踏み込んで突きに来るナイトメアに、右手を振り払う。


「させないよ! 【獄炎】!」


 自分を一周する炎の噴きあがりで、踏み込みを停止させた。


「開放」

「くっ! 【飛び影】【ブレイズキャノン】!」


 ナイトメアの放った魔法剣の開放攻撃を、大きく下がってかわしたルナティックは炎砲弾で反撃。

 さらにアモンに追撃を促す。


「【フレイムバスター】!」


 放たれた炎の巨弾は炸裂し、広場の石柱が砕け散った。


「…………消えた?」


 炎が消えたのと同時に伸ばした手。

 しかしそこにナイトメアの姿はなく、広場には観客だけが残る状態。

 アモンも敵対者の突然の消失に、ただ待機することしかできない。


「どういうことだ……?」


 姿を隠すスキルの可能性を考え、視界を広く取りながら暗い広場を駆ける。

 しかし並ぶ石柱に人影はなし。

 魔法石灯にも、灯篭にも違和感はない。

 観客の一部にわずかなざわつきを感じて駆けつけるも、異変はない。

 ルナティックは灯篭の下で寝ている猫を一瞥し、視線を広場の方へ戻したところで――。


「……猫?」


 戦闘マップの魔法陣付近に、そんなものがいるはずない。


「クスクス。知らないということは、罪よねぇ」


【変化の杖】による猫化から姿を戻したナイトメアが、笑い声と共に杖を背に突きつけた。


「ッ!? 飛びか――」

「【フレアストライク】」

「うああああああ――――っ!」


 炸裂した紫の炎に、吹き飛ばされる。

 魔法合戦から突然冗談のような変身をしてみせたナイトメアに、唖然とする観客たち。


「……あはははは」


 自然と、もれだす笑い。


「あはははははは! やはりキミは最高の魔導士だよ!」


 まるで相手を弄ぶかのような戦いぶりに、HPが半分を切ったルナティックは大きく目を見開いた。


「それならボクも開放するしかないよねぇ。覚えているだろう? ナイトメアの魔眼、レクイエムの闇の翼、そしてボクの――――【呪印】を!」


 あげる叫び。

 すると腕から肩にかけて、古代文明の紋章のような模様が浮かび上がってきた。


「行くよ……ナイトメア。もう止められない。ボクの……狂気はァァァァァァ――ッ!!」

「っ!」

「【飛び影】ェェェェ!」


 高速で迫るルナティックが手を伸ばす。


「【連続魔】【ブレイズキャノン】!」

「ッ!?」


 二連発の業火はその火力を大きく上昇し、石畳を黒く焼き尽くす。


「アモン! 【フレイムバスター】!」

「っ!」

「【飛び影】」


 炎砲弾の放つ熱波が、ナイトメアを大きく崩す。

 そこに踏み込んで来たルナティックの手に、輝く光。

 豪火を怖れて防御に回ったところで、足元に生まれたのは魔法陣。


「飛べ! 【レビティア】――――ッ!!」

「マズっ」


 大きく宙に吹き飛ばされたナイトメアは、すぐさま【浮遊】で対応しにいくが――。


「キミのスキル、使わせてもらうよォォォォ!? ――――【魔力蝶】!!」


 空中旋回からの反撃をさせないよう、放つは【呪印】版【魔力蝶】

 満月を隠すほどの夜光蝶が、空中のナイトメア目がけて進む。


「人の魔法まで、強化状態で……くっ!」


 迫る蝶の大群がぶつかり弾け、ナイトメアはバランスを崩して落下。

 ルナティックは止まらない。


「まだまだァァァァ! 啼き叫べ! 【アイアン・メイデン】!」


【呪印】でアップした火力はすさまじい。

 地面から突き上がる無数のダガー付き鉄鎖が、ナイトメアを切り刻む。

 それでもまだ、ルナティックは狂気のままに攻撃を続ける。


「アモォォォォン! 【シューティング・ゴールド】――――ッ!!」


 輝く夜空にきらめく無数の光。

 流星群のように降り注ぐのは、魔力光の輝きだ。


「く……っ!」


 アモンの放つそれはもう、回避などさせる気がない無差別攻撃。

 凄まじい速度で削られていくナイトメアのHPはついに、1割ほどまで減少。


「……すっげー」

「なんだよあれ、強すぎだろ……っ!」


 全ての火力を上げたルナティックの狂気的な魔法攻勢に、誰もが唖然。

 だが、この一撃ですら次のスキルを隠すための布石に過ぎなかった。


「――――【クルシフィクション】」


 ようやく防御を解いたところに足元から突き上がってきた鎖が、ナイトメアをつかむ。


「ッ!?」


 怒涛の範囲攻撃から、突然のピンポイントスキルによる拘束。

 敵を磔にするそのスキルは、『呪印起動』状態なら継続時間はなんと10秒。


「……ははははは。あはははははは! こうなったら終わりだよナイトメア!」


 捕まれば反撃はもちろん、逃げることも不可能。

 ほぼ無防備の状態で、相手の攻撃を受けることになってしまう。


「ボクもさぁ、炎は得意なんだ。【呪印】で放つこいつは、一味違うよ……」


 そう言って、腕の【呪印】を輝かせて笑うルナティック。


「これで終わりだ――――【クリムゾンフレア】ァァァァ!!」


 それは上位上級に属する、超高火力の必殺魔法。

 知力値を向上させる【呪印】によって放たれた真紅の業火は、夜空を焼くほどの赤光と共にナイトメアへ吸い込まれていく。


「……終わった」


 追い込まれた、圧倒的な窮地。

 これはさすがに勝敗がついたと、誰もが確信。

 全てを焼き尽くす豪炎が防御もできないナイトメアに炸裂する、まさにその瞬間。


「――――止まれ」


 ナイトメアは一言、そう命じた。


「……な、なんだあれ!?」

「どうなってるんだ!?」


 するとまるで波紋のように空気が大きく波打ち、【クリムゾンフレア】が空中に制止した。


「どういう……ことだ? 時が、時が止まったとでもいうのか……っ!?」


 これには誰もが驚愕する。

【水鏡】は悪魔復活の手伝いクエストをさせられた際に得た、消費アイテム。

 その効果は、魔法攻撃の反射だ。


「私の前では魔法すら畏怖し、その歩みを止める」


 そう言って「ニィッ」と笑みを浮かべたナイトメアは、命ずる。


「さあ、帰りなさい」

「なっ!? そんなバカなっ!? アモォォォォ――ン!!」


 反射され、戻って来た真紅の爆炎に慌てふためくルナティック。

 その大きな爆発の身代わりになったアモンは、炎に身を焼かれて地を転がった。


「……ナイトメアァァァァ――ッ!!」


 まさかの事態に叫ぶルナティック、唖然とする観客たち。

 一方静かにたたずむナイトメアの手には、黄金の林檎が一つ。


「黄金の林檎?」

「なんだ、知恵の実か?」


 見たこともない果実に、観客たちが目を奪われる。


「知恵の実だって? ナイトメアは、エデンにたどり着いたとでもいうのか……っ!?」


 それはスキル実験の際に【世界樹の芽】から作ってもらった【世界樹の実】だ。

 ナイトメアはあえて戦闘中の飲食システムをオンにすると、金色の林檎を一口齧る。

 そして、静かに目を閉じた。


「――――【魔眼開放】」


 吹き抜けていく風に、揺れる髪。

 ナイトメアが瞼を開くと、その眼は月よりもまばゆい黄金に輝いていた。


「さあ、終焉の時間よ――――【連続魔法】【ファイアボルト】」

「ッ!? 【飛び影】!」


 放たれた4連続の豪炎弾に、慌てて距離を取る。


「【連続魔法】【ファイアボルト】」

「【飛び影】! 【飛び影】ッ!」


 迫る紫の炎は、身の丈に迫るほどの大火。


「【連続魔法】【ファイアボルト】」

「【飛び影】! 【飛び影】ェェェェ――ッ!! どうなっている!? 魔力が上がっても連射力は変わらないはずだ! それがどうしてこんなに上級魔法を連発できるっ!?」

「聞こえていないのかしら? さっきからずっと……初級魔法しか使っていないけど?」

「バ……カなッ!!」

「証拠を見せてあげるわ――――【フレアアロー】」

「ッ!?」


 放たれた炎矢は、巨人の槍のごとき。

 ルナティックは、炸裂した矢の火力に足元を大きくフラつかせる。


「【フレアストライク】」


 続く炎砲弾は、もはや隕石。


「く、ううっ!?」


 凄まじい余波に地を転がるルナティック。さらに。


「【フレアバースト】」

「う、うああああああ――――っ!!」


 厄災レベルの紫炎が広場を焼き尽くし、石柱を焼き焦がす。

 豪炎に吹き飛ばされ転がったルナティックは、アモンにぶつかり止まる。

 残りHPはもうわずか。

 そこに聞こえてきたのは、終わりの言葉。


「光の前に灯す闇。黒き炎は病の絆。目覚めは哀しき大罪なり。我は世界を謀る虚飾を以って、新たな重き十字を背負う――――」

「……詠唱、だとッ!?」


 顔を上げるとそこには、真っすぐに【銀閃の杖】を向けるナイトメアの姿。


「貴方に本物の『炎』を見せてあげる――――【ダークフレア】!」


 凄まじい速度で集まる、大量の闇粒子。


「あ、ああ……っ」


 集結し、弾け、連鎖し、猛烈な闇の爆炎となる。

 夜空の星すら焦がしてしまうほどの炎が噴き上がり、闇の火の粉が宙を舞う。


「ああああああああ――――ッ!!」


 HP全損。

 大罪悪魔ごと地に伏したルナティックが「……信じられない」とつぶやく。

 あまりの凄まじさに、観客たちも呆然自失状態だ。


「このボクが、大罪悪魔を使役する最強の悪魔召喚士が破れるなんて……」


 しかしナイトメアはクスクスと、まるで「楽しくなってきた」とばかりに笑う。


「これで、確かめることができるわね」

「確かめる……?」

「戦えるんでしょう? 明けの明星と。しっかり見極めてあげないといけないわね。このナイトメアの眼鏡にかなうのか……ふふふふふ」


 これだけの戦いを終えたばかりだというのに、黄金に輝く目で楽しげに笑う。


「早くいかないと、せっかくの獲物をメイに喰われてしまうわ」


 そう言って銀の髪を払い、歩き出すナイトメア。


「……はは、ははははは」


 倒れ伏したままその背を見送るルナティックが、こぼす笑い。


「これが『力』を求め続けた魔導士か。大罪悪魔を使役しても届かないだなんて……」


 見えるのは、黒のローブをひるがえして歩くナイトメアの姿。


「これこそ――――悪夢だ」


 そんなつぶやきに、ようやく観戦者たちが我に返る。


「う、うおお……」

「おおおおお……」

「「「うおおおおおおおお――――ッ!!」」」


 静まり返った月の夜に、歓声が響く。

 もちろん、背を向けた時点で素に戻ったレンの顔がクリムゾンフレア状態なことには、誰も気づいていない。

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


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【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
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