559.使徒と使徒
アルティシアが闇に沈み、住人たちは不死者へと変わる。
そんな恐ろしいクエストの達成を防ぐため、三手に分かれて暗夜教団を討ちにいくメイたち。
黒神リズと九条院白夜は共に、街の東部へと急いでいた。
「この街はわたくしが光の使徒として冒険をはじめた地。闇に落とすことなど許しませんわ!」
「闇の使徒から堕ちた者たちは、このレクイエムが直々に断罪する」
「足を引っ張らないよう、くれぐれもご注意くださいね」
「ふん、こっちのセリフだ」
たどり着いたのは工業地域。
防具や衣装などを作る工房の多い場所で、馬車などが行き来するためか広く道が空いている。
静かな夜の街はずれにいたのは黒き踊り子、如月輪廻。
常に薄い笑みを浮かべた黒弓術師、六道彼方。
二人はしっかり建物の縁の上に立ち、月を背に静かにたたずんでいる。
そんな二人のもとに、ほどほどの距離を開けて並んだ使徒二人がたどり着く。
風はなく、ただ闇を照らす月明かりだけが妙に白々しい。
「今さら説明は不要ですわね。魔力供給の陣を破壊し、街の崩壊を止めさせていただきますわ」
「邪魔だてするなら、斬り捨てる」
静かに、宣戦を布告する使徒二人。
すると輪廻と彼方が、静かに振り返る。
「如月は、もはやかつての如月ではありません。この強き力を持って、ただ街を闇に還すのみ」
「覚悟が必要でございます。我ら暗夜教団が誇る悪魔召喚を前に剣を抜けば、ただでは済みません」
かつての仲間でも、任務のためなら討つと宝石付きの短剣を握る輪廻。
貼り付けたかのような笑みとその丁寧さが、どこか不気味な彼方。
二人は計ったように屋根を飛び降り着地すると、そのままリズたちの前に立ちふさがる。
武器を構える四者。
「光の使徒がいる限り、悪の栄えることはありません。そこに深き闇あらば、光の使徒が全てを暴き出します!」
「来い! ここが貴様たちの墓標だ!」
二人の叫びがきっかけとなり、第二の魔法陣を賭けた戦いが始まった。
「来たれ。地獄の侯爵にして監督官――――ネビロス!」
輪廻の悪魔召喚。
魔法陣から出てくるのは、フードマントに黒犬顔をしたネビロス。
「起きろ【雑兵】」
大量のアンデッド兵を呼び出し、一帯に配置する。
犬顔の悪魔がゾンビ兵を呼び出すという状況に、軽く顔をしかめるリズと白夜。
「【ファントムダンス】」
さっそくその隙間を、輪廻が細かく速いステップで駆け抜けてくる。
アンデッド兵たちは武器を振り回し、輪廻の接近を隠す。
かなりやっかいな構成だ。
「ならばまとめて斬り飛ばすのみ。【暗夜剣】!」
リズは大剣の斬り払いで、アンデットごと輪廻を吹き飛ばしにいく。
「【スピンターン】」
これを見た輪廻は、移動からの早いターンでリズの大剣振り回しを回避した。
するとリズの一撃によって生まれた空間を、彼方が利用する。
「【呪爆の矢】」
「そうは――――させませんっ!」
リズに向かい放たれた黒光の矢を、レイピアで弾き軌道変更。
炸裂した矢は、空に闇の花を咲かせた。
「見事でございます……っ」
「このくらい当然ですわ!」
完全に偶然の成功だった白夜は、メイの三連弾きを思い出して苦笑い。
それでも「いかが?」という顔で、レイピアを彼方へ向ける。
「【ライトニングスラスト】!」
あいさつ代わりの高速飛行突撃。
「【ハイジャンプ】でございます」
彼方はこれを高い後方への跳躍で回避して、弓を構える。
「【神速連射】」
そして空中、着地際を狙われないよう先行して矢を連射。
しっかり白夜の接近をけん制する。
「【ファントムダンス】」
一方の輪廻は、リズとの距離を寄せて両手の短剣を振る。
かわされることは予想済み。
三連撃の最後。
魔法石を輝かせての雷斬撃がかすめたところで、さらにもう一撃。
「叩け【狼腕】!」
地面に現れた魔法陣から出てきた【屍狼】の巨碗が石畳を叩き、砂塵があがる。
「クッ! 【暗衝】!」
「【ゴーストダイブ】」
悪化する視界。
回避のために突撃スキルを使わせたところで、輪廻は影に沈む。
そしてそのまま音もなく、リズの背後に回ると――。
「【バックスタブ】」
背後から決めると大ダメージを与える暗殺スキルを発動した、その瞬間。
「はあっ!!」
「なっ!?」
まるで接近を知っていたかのように振り回されたリズの大剣に、輪廻は弾き飛ばされた。
「なぜ……如月の接近が分かった」
「かつて言ったはずだぞ輪廻。【ゴーストダイブ】を攻撃にしか使わないのでは、姿を消した瞬間『今から向かう』と言ってるようなものだとな」
「くっ……!」
「【暗衝】」
単純な移動や回避などにも使用していなければ、狙いが読まれてしまう点を指摘しながら突撃。
タックルを行わずに移動使用としたところで、強い踏み込みから黒剣を大きく引く。
「【飛天闇祓い】」
「ッ!?」
その黒いエフェクトの閃き方に、輪廻の背筋が凍る。
「【ゴーストダイブ】――ッ!!」
それは黒の弧を巨大な毛筆で荒々しく描いたような、豪快な振り上げの一撃。
付近のアンデッド兵たちが、まとめて消し飛んだ。
そしてこれを影に潜ることで運良くかわすことに成功した輪廻に、リズは一言。
「それでいい」
反省を活かした回避を、冷静に評価するのだった。
一方、白夜は距離を取りつつ戦う彼方を追いかける。
「【夜駆け】」
大きな連続バックステップをも可能とするそのスキルで、彼方は矢を放ちつつ下がる。
「【照準】【斉射】」
狙いを一人に絞ることで、かなり無理な体勢からでも『狙い』を精密にするスキルと、五本同時撃ち攻撃の併用。
「【エンジェライズ】【ライトニングスラスト】!」
しかし白夜はこれを緩いジグザグの移動でしっかりかわしつつ接近。
「【エーテルジャベリン】!」
近づいたところで、六本の光の槍を飛ばして攻撃をしかける。
「【ハイジャンプ】【弾幕斉射】!」
彼方はこれを高い後方へのジャンプでかわして、40本に迫る矢の集中豪雨で反撃を狙う。
「その攻撃はもう、攻略済みですわ! 【エンジェライズ】!」
迫る矢たちをしっかり引き付けてから、小さな天使の翼を羽ばたかせて一気に低空跳躍でかわす。
カタパルトから飛び立ったかのような勢いで空を行く白夜は、着地したばかりの彼方へそのままレイピアを向ける。
「【ライトニングスラスト】!」
空中で突然軌道が『へ』の字型に変わり、レイピアの切っ先が彼方の肩口に叩き込まれた。
「くうっ!!」
予期せぬ軌道変更攻撃に、転がる彼方。
すると起き上がったところに、輪廻も後退してきた。
「光の使徒、侮れないようでございます」
「やはりレクイエムは強い。如月たちはこのまま、なす術なく倒れるのか?」
白夜とリズの思った以上の強さに、息を飲む二人。
「――――否」
「戦いは、ここからでございます」
六道彼方が、【ソロモンの指輪】をした手を掲げる。
「我が呼び声に応えよ。大いなる地獄の伯爵――――フールフール!」
すると真紅の魔法陣から、炎蛇の尾を持つ有翼の黒鹿が現れた。
「あら。それなら最初から呼んでおいてはいかがです? わたくし、召喚の邪魔をするほど野暮ではありませんわよ?」
白夜は余裕でそう告げ、リズは「ふん」と静かな同意をみせたのだった。
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