555.使徒たちと白の不死魔導士
残りHPが半分を切って、リッチの身にまとった黒のローブが滲むような白に変わる。
使徒組は一度、視線を合わせた。
「先手はわたくしがいきますわ! 【エンジェライズ】!」
背中に現れた小さな天使の羽が一度羽ばたくと、はじき出されるような形でリッチへ迫る。
「【ライトニングスラスト】」
いきなりの飛行突撃刺しが決まる。
しかしHPの減りは少なく、ダメージは5%にも満たない。
「やっぱり物理攻撃が効きにくくなってるわ! 高速【誘導弾】【ファイアボルト】!」
レンが最短で炎弾を放ち、白夜の隙を消す。
「はああああーっ!」
下がる白夜と入れ替わる形で飛び込んできたのは、ビビって声が大きくなっているリズ。
いつもより大振りで、二度の大剣振り回し。
ほとんど効いていない物理攻撃は、あくまで距離調整だ。
リズはそのまま大きく一歩踏み込んで、一度深呼吸。
しっかり敵を『範囲内』に収めたところで――。
「【魔法陣牢】!」
頭上に浮かんだ数十の小型魔法陣から乱射される魔力光が、下がるリッチを撃ち抜いていく。
「高速【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」
さらにレンが続き、リッチを大きく弾き飛ばした。
残りHPは4割ほど。
滑るような移動で距離を取ったアンデッド魔導士は、お返しとばかりに杖を掲げる。
「雲ですか?」
使用したスキルは【曇天】
深いグレーの雲が、あっという間に廃教会を覆う。
「――――!」
杖から連射される15発ほどの炎弾は、誘導付き。
これを走ることでかわし、最後尾の2発を飛び込みで回避した白夜に向け、リッチが空いた手を向ける。
「きゃあっ!!」
落雷が白夜の腕に落ち炸裂。
2割ほどのダメージと共に、尻もちをついた。
さらにリッチは杖を振り、今度は15発ほどの氷弾を斉射。
返す杖でさらに15発の氷弾を追加する。
左右から時間差で迫る30もの氷弾を、慌てて立ち上がった白夜は引き付け走る。
「【エンジェライズ】……【ライトニングスラスト】!」
ブーストの大きな一歩でかわし、さらに落雷のタイミングを計って特攻スキルを移動使用することで回避に成功。
「高速【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」
この隙を突き、レンが魔法による攻撃を狙う。
リッチは迫る炎弾を、滑るような移動でかわして手を高く掲げた。
「「ッ!!」」
するとレンとリズの頭上が光り、雷が落ちる。
二人はとっさにバックステップしてかわすが、地面を走る電撃にわずかながらに硬直させられた。
どうやら【曇天】下では、落雷の発生が早くなるようだ。
リッチはすぐに杖を振る。
魔法斉射を避けさせて、発生の早い【落雷】で撃つという戦い方はかなり強力だ。
「【暗衝】!」
リズは落雷をギリギリのところでかわすが、雷のペースは思った以上に早い。
HPは確実に削り取られていく。
「そこそこ減らされてますわね!」
「――――!」
攻めるリッチが、杖を大きく振り上げた。
現れたのは、炎の大蛇と氷の大蛇。
人間くらいなら余裕で飲み込むサイズの巨体が、一気に追ってくる。
「【エンジェライズ】!」
二匹同時に左右から迫る大蛇。
交互に食らい付きをかまし、それでも消えることなく白夜を追いかける。
ヘビの進んだ道には炎や凍結が残り、逃げ場を減らしていくのも特徴だ。
「喰らい付きには、隙間がありますわ!」
そんな中、白夜は覚悟を決め足を止めた。
左右から迫る二匹の蛇をしっかり見据え、同時に上方から喰らい付きに来たところを狙ってレイピアを正面に向ける。
「【ライトニングスラスト】!」
高速の低空特攻で、迫る二匹の蛇の間をすり抜ける形で通り抜け、どうにか難を逃れることに成功した。しかし。
「高速移動!?」
煌々と魔力光を輝かせる杖を手にしたリッチは、この瞬間を狙っていた。
必殺の一撃を仕込んだ状態で、まさかの滑空型高速移動。
一瞬で距離を詰められた白夜は、驚きに硬直してしまう。
どうやら2匹の大蛇すら、本命の一撃を通すためのオトリだったようだ。
「【暗衝】」
「ッ!?」
そんな白夜を、弾き飛ばしたのはリズ。
「い、いいいいだろう! 貴様の奥義は我が受け止めてみせる! 【妖炎】!」
迫ってきたリッチの骸骨顔に動揺しながら、リズは【黒威の大盾】を取り出し防御スキルを発動。
属性攻撃耐性を高めた上で、盾をしっかりと構える。
「――――!」
リッチは杖を、地面に強く叩きつけた。
「ッ!!」
直後、噴きあがる深紅の業火がレクイエムを焼き、渦巻く白煙が一気に気温を急降下。
そのまま地面を氷結させた直後、三本の氷柱が突きあがり粉砕。
続いて天に閃いた稲光が見え、爆音と共に目に焼き付くほどの雷がリズに突き刺さった。
「リズちゃーん!」
その派手なエフェクトに、メイも思わず声を上げる。
炎、氷、雷と三つの属性が荒れ狂う大魔法を三連発で放つという、すさまじい一撃。
誰もがリズの安否に、しっかりと目を凝らす。
煙の中に立ち尽くしていたレクイエムは、静かに手を上げた。
「来たれ――――【盟約の騎士たちよ】!!」
反撃の声と共に、リッチの足元に生まれる魔法陣。
現れた片手剣の黒影騎士が、影の剣を一閃。
すると入れ替わって特攻してきた黒槍の槍士の一撃が、身を貫く。
さらに背後から現れた大男が闇色の大斧を振り降ろし、三体の黒剣士が影の飛沫を散らす剣を同時に振り払う。
そして闇の波動をまとった騎士が放つ、派手な斬撃の二連撃。
計8発の連撃が決まったところで――。
「【ライトニングスラスト】」
闇を切り裂くように飛び込んできた白夜が、レイピアを突き刺した。
これだけでは終わらない。
「【極光乱舞】!」
キラキラと瞬く聖なる粒子が爆発し、燐光をまき散らす。
吹き飛ばされたリッチは地を転がり、廃教会の残った壁を突き破ってダウン。
「あら、わずかに残ってしまいましたか。最後はお任せしましたわ」
そう言って道を開く、クールタイム中の白夜。
「【フレアアロー】」
フラフラと立ち上がり、どうにか杖を構えたリッチ。
その胸元を一本の光線のごとき炎の矢が貫き、薄く残っていたHPを削り切る。
リッチは、ボロボロと崩れるようにして消えていった。
「ふ、貴様らしいなナイトメア」
敵の三連続大魔法から始まった派手なスキルの応酬を、『前座』にしたかのようなシンプルな一撃に笑う。
こうしてリッチ戦は無事、勝利で幕を閉じた。
「まさか闇の使徒に助けられてしまうとは……一応、お礼は言っておきますわ」
「勘違いをするな。戦線を維持するためだ」
「ふん」と、すげなく応えるリズに白夜が薄く笑う。
「ツバメちゃん、なんかカッコいいね……っ!」
「本来は敵対する組織のメンバーならではといった感じです」
「――興味深い」
そんな使徒のやり取りに、思わず興奮するメイたち。
「たぶん、やってる二人が一番『今の私たちカッコいい!』って思ってるわよ」
レンはなかなか楽しかった戦いに笑いながらも、そこはしっかりと指摘するのだった。
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