表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

553/1482

553.お返しからのお返しよ

「ここが魔法陣のある部屋なのでしょうね。少し待ちましょうか」


 早々目的地についてしまったメイたちは、見るからにしっかりとした作りの石扉の前に腰を下ろす。

 なぜかツバメはここでも正座だ。


「――そういうことなら、お菓子がいくつかある」

「やったー!」

「ありがとうございます」


 雨涙の持ち込んだお菓子は、アップルパイ。

 さっそく並んで食べ始める。


「おいしいです」

「いーちゃん!」


 ここでイタチを呼び出したメイ。

 ひとかけら渡すと、両手で持ってかじりつく。


「――使い魔、良い」


 雨涙も、いーちゃんを見ながらひと息つく。

 これぞ飲食システムの解禁によって生まれた光景と言えるだろう。


「それにしても、やはり使徒さんたちの装備は格好良くていいですね」

「本当だね! 黒の装備でクールで決める……わたしもやってみたいなぁ」

「形を真似ることなら、そう難しくはない」


 そう言って自ら、ふるまいの特徴などを語る雨涙。

 メイとツバメは興味深そうに耳を傾ける。


「うん?」


 墓所の地下迷宮で楽しい時間を過ごす三人のもとに、慌ただしい足音が聞こえてきた。


「だからわたくしは言ったのですわー!」

「貴様が犬に怯えなければ良かっただけだ!」

「それを私の背中から見てたリズに、言う権利ないわよ」

「ほらご覧なさい!」

「だからって白夜が必要以上に魔犬を叩いたのがきっかけなのも、変わらないわ!」


 なんとレンたちはゾンビ戦士や魔犬、よく分からないアンデットを大量に引き連れてこちらに逃げてくる。


「あっメイ!? お願い! ここなら多分大丈夫だから、こいつらを吹き飛ばしてーっ!」


 レンが頼むと、メイはゆっくりと立ち上がる。


「ククク、いいだろう」

「メイ!?」


「集え闇の力――――【ソードバッシュ】」


 メイが剣を振り上げたのを合図に左右に分かれ、道を作り出す三人。

 駆け抜けた衝撃波は、見事にゾンビたちを消し飛ばした。


「フッ……」

「メイ――ッ!! ちょっと雨涙! 貴方メイに何してくれてるのよぉぉぉぉ――ッ!!」


 突然の目覚め。

 レンは大慌てでメイのもとに駆けつける。


「お願いだから、メイだけは無事でいてぇぇぇぇっ!」


 そう叫びながら、肩をつかんでガクガク揺らす。


「どうかな? カッコ良かった?」

「……え?」


 いつも通りの笑顔で問いかけてくるメイに全てを察したレン、そのまま地面に倒れ込む。

 見れば体力的に疲れるわけでもないのに、なぜかリズと白夜も思いっきり息を切らしていた。


「そんなに大変だったのですか?」

「……岩が転がってくる罠からどうにか逃げ切ったところに、魔犬使いの従魔士アンデッドが二体同時に出てきたところで戦線が崩壊したわ」


 そう言いながら、ゆっくり立ち上がるレン。

 それでもこの場まで二人を無事に連れてきたのは、がんばったと言えるだろう。


「待たせちゃったわね、いきましょうか」


 紋様の描かれた金属製の扉。

 今回はレンの状況を見て、メイとツバメは武器を持って隣に控えることにした。


「それだってのに、白夜まで私の後ろにつくの?」

「…………」

「なんか言いなさいよ」


 魔犬の連発ですっかりビビっている白夜も無事、リズと共にレンの後方部隊へ。

 扉を開くと、中はいかにも魔導士の研究室といった風情。

 広い石積みの部屋の半分には机や研究材料などが並んでおり、もう半分には魔法陣。


「さて、二重クエスト状態の私たちはどうするか……ね」


 神官と聖女、両方から依頼を受けているメイたち。

 ここでどちらのクエストを達成するのかを、決めなくてはならない。

 レンはジッと、魔法陣を見つめる。


「どうしたのですか?」

「ちょっと、気になることがあってね……やっぱり、間違いなさそう」


 そして深くうなずいた。


「どうするんだ、ナイトメア」

「どうなさるおつもりですか?」


 レンの決断を、興味深そうに見守るリズと白夜。


「決まっているでしょう?」


 魔法陣を挟んで反対側に進んだレンは、ゆっくりと振り返った。

 そして、ニヤリと妖しい笑みを浮かべる。


「――――アルティシアを、闇に還すわ」

「ええええええええ――――っ!?」


 まさかの言葉に、驚きの声を上げるメイ。


「な、なんだとッ!?」

「そんな、ありえませんわ!?」


 リズと白夜は、驚きのあまり完全硬直。

 レンは静かに、説明を続ける。


「悪魔たちを復活させていけば、必然的に新たな『可能性』を目にすることができる。やがて……大罪悪魔も」

「復活させて、どうするというのです!?」

「試すのよ。私の目にかなう『力』を持っているのかどうかをね」

「わたくしたちを、謀っていたということですか……っ!」

「そうなのか……ナイトメア!!」

「……まったく、笑えますね」


 激高する二人の声に応えたのは、意外にもツバメ。


「ツバメちゃん!?」

「強き力のためなら全てを騙す。それが我ら『十六夜』の目的です」

「なんて……こと……っ」


 まさか過ぎる事態に、誰もが驚愕し困惑する。

 指一つ動かすこともできずにいる中、レンは聖女から受け取った【濃縮聖水】を手に取った。


「なーんてね」

「「「「え?」」」」

「魔法陣は、消させてもらうわ」


 そう言ってレンは、【濃縮聖水】を魔法陣に振りまく。

 すると悪魔召喚は、盛大に煙を上げて効力を失った。


「どういうこと……ですの?」

「ナイトメア……?」

「ふふふ、なんてことないわ。好き勝手してくれた貴方たちへの、ちょっとしたお返しよ」


 見事なイタズラを成功させたレンは、そう言ってペロッと舌を出してみせた。


「おおーっ! レンちゃんすごーい! びっくりしちゃった!」


 メイはキャッキャと大喜び。


「や、やられましたわ……」

「これまでの、どのクエストより驚かされたぞ」

「――腰が抜けるかと思った」


 実際ちょっと抜けている雨涙、足をフラつかせる。


「ふふふふ。でも私が一番驚いたのは、何も聞いてないツバメが普通に設定に乗ってきたことね」

「面白そうだったので、つい」


 もちろんこのイタズラは、ツバメも初耳。

 それにもかかわらず普通に話を合わせてきたことに、レンは「やっぱりツバメはすごいわ」とまた笑ってしまう。


「……ええと、これで聖女さんのクエストを選んだんだよね?」


 話の展開がいまいち飲み込めていないメイが問う。


「そうなるわね。ちょっと考えてみてほしいんだけど、そもそも暗夜教団にもクエスト主になる人物がいるはずでしょう?」

「うんうん、そうなるね」

「それ、神官なのよ」

「ええええええーっ!?」

「……なるほど。神官さんは表裏の顔でそれぞれクエストを出していたというわけですか」

「そういうこと。ドラゴン救助のクエストも表で私たちに道を作らせて、暗夜教団と神殿側が競争。『偽命の石』も一応、私たちとリズたちの争いになっていたのよ。ただし私たちは『アルティシア崩壊の手伝い』をさせられているとは知らないまま。事実に気づくチャンスは神殿側プレイヤーとの接触と、今回の『指輪』ね」

「指輪ですか?」

「メイの感じた違和感の正体がそれよ。神官なのに、身に付けてた指輪の紋様が妙に禍々しかった。今確認したらこの部屋の魔法陣と同じなの。おそらくあれが【ソロモンの指輪】なのね」

「おおーっ」

「利用されたままいるか、気づいて選ぶかのクエストだったのですね」

「そして最後は、聖女側のクエストで『どちらに付くか』の選択肢も出るって感じね」

「なるほどー!」

「聖女側が『魔法陣の効力が薄れてきているのに、怖くて再封印を先延ばしにしている』可能性もあったから、一応最後まで様子を見てみたんだけど……もう間違いないわ」

 そう言ってレンは、デスクに置かれていた帰還用の小型ポータルの前へ。

「さて。私たちを利用してくれた神官にも、お返しはしっかりしておかないとね」

「おかえし?」

「いきましょう。お待ちかねのはずよ」


 レンを先頭に、六人がポータルで戻った先は廃教会。


「あーあーあー」


 そこには予想通り、煤けたステンドグラスを見上げて大げさに首を振る神官の姿があった。


「気づかれてしまいましたか。そのまま私に使われていればよかったものを。欲しかったんですがねぇ……私だけの悪魔が」

「一応聞いておくわ、それはどうして?」

「もちろん大悪魔と共に――――アルティシアを滅ぼすためですよ」


 そう言って神官は、怒りを含んだ邪な笑みを浮かべたのだった。

誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆新作よろしくお願いいたしますっ!◆◆◆

【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] 感想とか見てたら新キャラ、新設定、新アイテムが思い付いたのでまとまったら伝えますね
[一言] 論理クイズですが初動は今までの二色クイズと同じかな
[一言] 神官が黒幕は納得
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ