552.再会
レンとリズ、そして白夜が進むのは、高低差のある岩場。
天井には鍾乳洞のように出っ張ったところがいくつもあり、頭上には要注意だ。
「扉があるわ」
続く岩の道の一つにあったのは、鍵付きの古びた扉。
「開かないな。この鍵穴に合うカギが必要なのだろう」
「それって、あれではないですか?」
そう言って白夜が指さしたのは、高い段になった岩の上からこちらをにらむ一頭の猛獣。
その首輪には、飾りの様に付けられた金属細工。
「どう考えても、ここのカギね」
見るからに狂暴そうな四足獣は、ギラギラと輝く目でこちらをにらんでいる。
「あのカギを取って扉から進むか、諦めて遠回りするか。そんなところでしょうか?」
「―――おや?」
聞こえた声に、振り返る。
「こんなところで会うなんて運命的だね……ナイトメア」
鉢合わせたのはなんと、暗夜教団の三人だった。
輪廻と彼方の背後にたたずむ刹那は、すぐに状況を理解する。
「目的は新たな悪魔。早いルートはカギを使って進むことができる。そんな感じかな?」
そして、少し大げさに手を叩いてみせた。
「そうだ。せっかくの楽しい再会だし、どっちがカギを取れるか勝負といこうよ。どうかな使徒連合の皆さん?」
「望むところですわ。ですが」
「連合になった覚えはない」
自然と走り出す緊張感。
「レクイエム、貴方にあらためて如月の力をお見せします」
「暗夜教団の力を、思い知っていただくのでございますよ」
「ふん、いいだろう」
暗夜教団へ移った二人とリズの間にも、火花が散る。
「ルールは簡単、カギを取った者の勝ち。それじゃ……スタート」
刹那の軽いノリで始まった、猛獣のカギ奪取合戦。
「【ファントムダンス】」
大きな直線移動から、細かなステップで位置取りを調整。
輪廻は手にした二本の宝石ダガーで、踊るような連撃を繰り出す。
しかし猛獣は負けじと、早い足の運びでこれを回避。
「【エクステンダー】!」
下がったところを狙うリボン型のムチの振り払いまで、見事に回避してみせた。
「速いわね」
思わずレンが唸る。
猛獣、かなり速い。
「いきますわ! 【ライトニングスラスト】!」
一気に迫る白夜をかわしたところで、繰り出す反撃。
振り払った爪の軌跡が飛び、岩に深く傷跡を刻み込んだ。
「侮れませんわね……っ」
頭上を切り裂いていった爪撃に、白夜が息を飲む。
「【夜駆け】【照準】【斉射】」
しかも攻撃の硬直はほとんどなく、この隙を狙いにきた彼方の五本矢も軽快な跳躍で回避する。
「ここだ!」
しかしやや無理な体勢の回避は隙を生む。
【暗衝】で距離を詰めたリズのタイミングは最高。
振り上げた剣は、的確に猛獣へと吸い込まれていく。
「そうはいかないよ【ブレイズバレット】」
「チィッ!」
刹那の放った魔法が直撃し、体勢を崩したレクイエムは猛獣への攻撃に失敗。
「やってくれたな刹那」
怒りの声をあげるレクイエムに、刹那は「ふふっ」といたずらに笑ってみせた。
そして、これがきっかけとなる。
「【弾幕斉射】」
「【ファントムダンス】!」
40発に及ぶ誘導のかかった矢を、どうにかかわした猛獣に迫る輪廻。
「連続魔法【ファイアボルト】!」
「くっ」
レンの魔法に撃たれ、その場を転がる。
「お返しよ」
輪廻が顔をあげるとそこには、牙をむき出し迫る猛獣。
「もろとも落ちろ……【暗夜剣】!」
そこへ猛獣ごと切り裂かんと、リズが跳び込んできた。
「【スピンターン】!」
これをギリギリのところでかわした輪廻は、即座に反撃に入る。
「レクイエム、如月は貴方の手の内を知っています【エクステンダー】」
「それはこちらとて同じこと【暗衝】」
リズも輪廻の反撃をかわし、いよいよ二人は火花を散らす。
「【ブレイズキャノン】」
そこを突いてきたのは刹那。
「ほら、今が好機だよ」
あえて猛獣自体を狙わず、その足もとに炸裂させた魔法が炎を吹き上げた。
この隙を突き、彼方が攻める。しかし。
「グオォォォォ――ッ!!」
「咆哮……っ!?」
ぶつけられた猛烈な衝撃に、身体が硬直する。
そこへ身体に光の粒子をまといながらの特攻が迫る。
「くっ!」
彼方を守るために駆けつけてきた輪廻は、その強烈な一撃に思わず足を止め防御に回る。
しかしその威力は高く、大きく後方へ弾かれた。
「今よ! ここで一気にいきましょう!」
「いいだろう! 【闇の翼】【ダークフラップ】!」
翼の羽ばたきが、背後に闇の粒子を噴き出す。
「了解ですわ! 【跳躍】【ライトニングスラスト】!」
二人はクロスするような形で猛獣に迫る。
「この三段目が大事……高速【誘導弾】【ファイアボルト】!」
二連の突撃を猛獣が回避したところに放つのは、誘導の効いた四連続の炎弾。
これはさすがに回避し切れない。
炸裂し、転がる猛獣。
「【黒閃天衝】!」
リズは足元から突きあがる闇の槍で、迫り来る輪廻と彼方をけん制。
「そこまでですわ」
漁夫の利狙いで寄ってきた刹那は、自分に向けられたレイピアを見て「降参」とばかりに半笑いで両手をあげてみせた。
「ナイトメア!」
「レンさん! 今です!」
「【低空高速飛行】!」
そんな二人の間を抜け、レンは体勢を立て直せずにいる魔獣のもとへ。
そのままカギだけをつかみ取り、ゴロゴロと地面を転がって起き上がる。
するとカギを取られた猛獣は、そのまま洞窟の奥へと逃げ出していった。
これにて勝負あり。
「さすがはレクイエム。如月、不覚を取りました」
「ナイトメアとの連携も、見事でございましたね……」
「へぇ、光の使徒と闇の使徒。相反する二人が見事な連携をみせるもんだねぇ」
クスクスと、笑う刹那。
「ふん、偶然にすぎぬ」
「当然ですわ」
「やれやれ。これはボクたちの負けだね。仕方ない、ここは譲ろうか」
「え……?」
まるでこだわりを見せない刹那の余裕に、驚く白夜。
「よいのでございますか?」
「如月は、まだやれる」
「いいのさ。楽しかったよナイトメア、また遊ぼうね」
武器を構える二人に、そう言って踵を返す。
「その時まで勝手に死んじゃダメだよ? キミを壊すのは……このボクなんだから」
「あ、そういうのは間に合ってます」
こうして暗夜教団は、不敵な笑みを残しながらこの場を去っていった。
「完全勝利ですわ。さあ、参りましょう」
レイピアを優雅に収め、白夜は得意げな顔で髪を払う。
三人は手に入れたカギを使い、扉を開錠。
やや急な階段を降っていく。
「でも、ずいぶんとあっさりしていたわね。これでメイたちに追いつけるかしら」
「わたくしの強さに恐れをなしたのですわ」
「あまり調子に乗るな。闇の使徒は強い。浮かれていると足元をすくわれるぞ」
「あら、あの程度で『強い』とは。闇の使徒はずいぶんと評価が甘いのですわね」
「ふん、それでも我に比べればひよっこだ」
「光と闇の相反する感じ……しっかり出してくるわねぇ」
敵対する組織の者同士が共闘したらこんな感じなんだろうな、という会話を見事に再現。
なぜか活き活きしている二人のやり合いに、苦笑いのレン。
見事な勝利を飾った三人は、階段を出た先で――。
「「…………あっ」」
先行く白夜とリズがそろって踏んだ罠によって、転がり落ちてくる大岩。
「何やってんのよーっ! ほら、逃げるわよっ!」
三人は再び、大慌てで駆け出すのだった。
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