551.駆け抜けますっ!
白夜とリズを追って崩落ルートへと降りていったレンが、アンデッドたちに追いかけ回されていた頃。
残ったメイたち3人は、そのまま石造りの迷路を進んでいた。
「道幅が狭くなってきましたね」
「――何かありそうな気配」
しっかりと舗装された道は、学校なら教室前の廊下よりやや細い程。
並ぶ魔法石灯に照らされながら、メイたちは前進する。
「何か聞こえた!」
振り返るメイ。
すると天井から大柄な槍が五本まとめて放出され、床に突き刺さった。
さらに五本槍の放出は、こちらに向けて猛スピードで近づいてくる。
見ればこの道の天井には、槍を降らすための穴が無数に開いていた。
「いきましょう! 【加速】」
「――【早駆け】」
「【バンビステップ】!」
すぐさま走り出した三人は、続く迷路を右へ左へと駆け抜けていく。
「また何か音がしたよ!」
そんな中、メイが聞きつけた音は前方から。
次の瞬間、バリスタから放たれた大きな矢が真正面から放たれた。
「しゃがんでくださーい!」
メイはこれを、走りながらしゃがんで回避。
それを見たツバメと雨涙も、足を止めることなく身を低くして回避した。
追って来る槍の落下の中を、メイたちは足を止めることなく駆けていく。
続く仕掛けは矢の連射。
これは完全に、列の先頭を狙って放たれる攻撃だ。
「よっ、それっ」
これをメイは踊るようなステップで回避しながら進む。
そうなれば続くツバメと雨涙は、流れ矢を避けるだけ。
驚くほどスムーズに、続く罠の道を抜けていく。
「あれ?」
するとたどり着いたのは一枚の扉。
そこに描かれた魔法陣に触れると、魔法陣内の『枠』の一つに炎が灯った。
隣りの『枠』に触れるとまた炎が灯り、そのまま隣に触れると今度は火が全て消えた。
「あれれ?」
どうやら、炎を灯す順番が大事になるようだ。
そして天井から放出する矢の波は、確かにメイたちを追ってきている。
ここは慌てずに仕掛けを解けるかどうかを、試される場面だ。
「ここは私が」
するとツバメがそう言って、魔法陣の前に立った。
「【罠解除】」
やや面倒な仕掛けを、スキル一つで余裕の開放。
扉を開いて、槍の降る道を攻略してみせた。
「ツバメちゃんないすーっ!」
「――これは良いスキル」
かなりの余裕をもって、罠の道を抜けた三人。
罠の道を抜けた先は、自然の洞窟をそのまま利用した岩の道。
道の先に現れた一体の石製ガーゴイルが、レバーを倒す。
すると各所に埋め込まれた魔法石から、炎が噴きあがった。
「足を止める暇は、もらえないようですね」
吹き付ける炎の中を、再び走り出すメイたち。
するとその先にも、新たなガーゴイル。
壁の魔法陣を起動すると、そこからゾンビ犬たちが飛び出してきた。
「――【流刃】」
それでもメイたちは足を止めない。
先頭に出た雨涙が二刀流で放つ剣舞は、迫る犬たちを華麗に切り裂いていく。
速い振りにもかかわらず火力が高いのは、両手の武器の性能に『通常攻撃の威力と速度』を上げるスキルが見事にマッチしているため。
この隙間を抜けてくるわずかな犬程度になら、足を止めることもない。
「それっ!」
「【アサシンピアス】」
メイとツバメの対応で、難なく打破。
「グォォォォォォ――――ッ!!」
最後尾にいた大型のゾンビ犬の飛び掛かりを前に、雨涙は強く踏み込んだ。
「【火遁・竜鳴砲】」
竜の鳴き声のような音と共に放たれた火炎砲で、一撃必殺。
「【壁走り】」
すると大型ゾンビ犬を焼き飛ばした雨涙の側方の壁を、ツバメが駆けていく。
その目には、今まさに動き出したガーゴイルの姿がある。
それは魔導士や弓術師などが、素早く当てられれば止められるという罠。
この区域の『システム』を把握したツバメは、新たな罠を起動しようとするガーゴイルに狙いを付ける。
「【投擲】」
ブレードが当たると、ガーゴイルが体勢を崩し罠の発動を中断停止。
さらにその後方に出てきた新手のガーゴイルには――。
「【投石】ーっ!」
メイの正確な遠距離投石が見事着弾。
本来コンビネーションで繰り出される連続罠の起動を、先だって止めてみせた。
「――すごい飛距離」
いよいよ各自が、先に先にと動いて道を作り始めるメイたち。
三人の足はもう止まらない。
進んだ先に見えたのは地下水脈。
メイたちが水流の下をくぐるような形で足を進めると、案の定『濁流』の流れ込む音が聞こえてきた。
「飲み込まれれば、おそらく即死になります」
三人、うなずき合って速度上昇。
入り込んだ高い天井のホールに現れたのは、またも罠起動用のガーゴイル。
「「「ッ!!」」」
バリスタ矢の連射。
どうやら自動で放ち続ける矢で時間を稼ぎ、その隙に天井部を崩して崩落に巻き込む罠のようだ。
バリスタは自動でターゲットに向き、次々に矢を連射。
「ここはおまかせくださいっ!」
先頭を行くメイはなんと、計8台のバリスタを一人で引き付ける。
「【加速】【リブースト】【跳躍】」
メイが作り出した有余を使い、ツバメが高く跳躍。
ホール上部、出っ張り岩の上で『爆破』レバーを倒そうとしているガーゴイルを叩きにいく。
これに気づいたガーゴイルは、手持ちのボーガンで撃ち落としを狙うが――。
「【エアリアル】【アクアエッジ】!」
先んじて水刃を一閃。
見事に爆破を止めてみせた。
「――しゃがんでください」
着地したところで聞こえた雨涙の言葉に、ツバメがヒザを突く。
目の前には、爆破ガーゴイルへの攻撃を防ぐために設置されていた多くのゾンビ兵たち。
「――【封魔手裏剣】」
大きさにして1メートル強。
四枚刃の手裏剣を手に取った雨涙は、一回転して投擲。
ゾンビたちの中心に放り込まれた一撃はそのまま炸裂し、無数の氷刃を巻き上げた。
「カッコいいー!」
「これぞ忍者ですね!」
罠は解除し、道も開けた。
メイたちはそのままバリスタ矢をかわして、続く道へ一直線。
すると一気に、流水の音が近づいてきた。
「いきましょう! この感じ、ラストスパートになりそうです!」
「りょうかいですっ!」
「――承知」
最後はシンプルな岩の道が続く。
さっそく放たれた矢には毒が付着している。
喰らえばダメージを受け続けることになる矢をかわしながら駆けると、ガチャン! という音と共に天井から突き出す槍。
前転でかわし、足元から突き出す槍を跳躍で越える。
噴き出す炎の先にあるガーゴイル像の持つ宝珠を、【投石】で破壊し炎を止める。
それがこれまでの罠の集大成となれば、メイには『一度見た物の繰り返し』でしかない。
「――速くしなやかな走り」
「【バンビステップ】は、速い走行かつ回避ステップにも使えるようなのです【跳躍】」
「――それは優秀【苗木越え】」
「足元がしっかりしてる場所は、走りやすいねっ」
次々に迫る罠を前に、『前衛話』をしながらかわしていく。
「「「ッ!!」」」
見えたのは、次々に廊下を駆けてくる雷光。
これは小さなジャンプでかわして進まなければならない。
容赦のない雷光の嵐に、思わず目を細めるメイだが――。
「とんとんとーん、とんとんとーん、とんとんとととんとーん!」
地を駆ける雷光のタイミングをズラしてくるという悪質な罠も、メイは普通にリズムを取って跳び越える。
雷光はさらに増え、天井と左右の壁にも駆けてくる。
凄まじい勢いの雷の波。
突然、最奥の宝珠が強烈に輝き出した。
「……行きますっ! 【装備変更】【裸足の女神】!」
それを見てメイは裸足で全力疾走。
凄まじい加速で廊下を駆け抜け踏み切り、低空跳躍。
「それーっ!」
そのまま床を三回転してレバーを倒し、最後の大技が放たれる前に仕掛けを停止させた。
見事に最後の『雷光廊下』を駆け抜けた三人は、そのまま続く階段を駆け上がろうとして――。
「こっちだよー」
「――うっ」
間違って階段の横にあった部屋に入るという、余裕がなければシャレにならないうっかりミスも、猶予があるから問題なし。
あらためて続く階段を駆け上がり、ゴールに到着した。
「……あれ?」
すると到着が速すぎて、まだ前の扉が開いてないという異常事態。
これには自分のことながら、驚いてしまうツバメ。
ようやく流れて来た水に階段下が埋まるのを眺めながら、開いた扉をくぐる。
「んーっ、気持ちいいクエストだったね!」
「本当ですね」
「――華麗だった」
三人でハイタッチ。
実は他にも『時間のかかる進みやすい道』がいくつもある中、メイたちは『早いが最難関の道』を通り抜けることになった。
そして続く道には、鍵付きの小さな扉がある。
「途中の道に、カギがあったということでしょうか」
「雨涙ちゃん、それは?」
「――さっき間違えて入った部屋にあった」
雨涙が手にしていたカギを差してみると、あっさり開放。
「ないすー!」
「雨涙さんお見事です。時間限定クエストによくある、回り道に置かれた特典アイテムですね!」
テンション上がったままのメイに抱きしめられ、雨涙もうっかり「うへへ」と素の笑いをこぼす。
完璧な難関攻略を見せた三人。
土壇場で道を間違えたことで、どうやらショートカットのカギまで手にしていたようだ。
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