表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1487/1489

1487.レンの疑念

「ゴグゥ……ンン……」

「ザッハ、なんだよな……?」


 戦闘中に、そして今もハウジング仲間である極・魔剣の名を呼ぶ不死の魔物。

 今はまた倒れ伏したまま、ゆっくりとHPを回復させている。


「でもこの不死の魔物はザッハで、事の発端じゃないってなると……その前に倒した粘土みたいな魔物の『入れ替わり』を、喰らったってことだよな?」

「そう考えるのが普通だよなぁ」

「元凶の変身する粘土の魔物を倒したのに、不死の化物になったまま元に戻らないのね……回復方法はまた別に探せってことなのかしら」

「ええっ!? 勝っても治してあげられないのーっ!?」


 これにはメイも、残念そうにする。

 街づくり組の中に潜り込んできた、偽物のザッハ。

 そしておそらく本人は今も、倒れている魔物の中にいると思われる。

 そんな状況がそのまま続くというのは、さすがに恐ろしい。


「治せないのであれば、この魔物を移動しないとここで復活を繰り返すのでしょうか」


 それはさすがに面倒だ。

 復活する直前に攻撃して、動けない状況を作り続けるなんて手間がかかり過ぎる。


「それに街づくりの中で急に起きた事件ってことは、他にも気づいてない犠牲者がいるかもしれないのよね」


 レンの言葉に、思わず皆息を飲む。


「もしかして、姿を見なくなったゲンサンもか……?」

「とにかく一度、確認してみようぜ」


 こうして戦いを終えたレンたちは、再び街の中心部に戻ることにした。


「では、この魔物の回復は私たちが抑えておきますよ!」


 一部の掲示板組の申し出を受けて、メイたちは街へ戻る。

 そこではすでに、ハウジング組や掲示板組が自分たちの作業を始めていた。


「なあ、ゲンサンを見なかったか?」

「いや、今日も見てないな」

「魔物とか魔法陣とか、ちょっと話が噛み合わないプレイヤーとか、何か怪しいものは見ていない?」

「突然帰って来たプレイヤーさんでも構いません」

「特にないなぁ」

「ああ、でも今日になって来てないヤツならいるぞ」

「……本当か?」

「この時間に来るって話してたんだけど、見かけてないんだよな」

「ちなみに、怪しい魔物を見たりとかは?」

「いや、見てない。そんな話も聞いてないぞ」


 約束の時間に来ていない者はいる。

 だがハウジング組や掲示板組の中に、魔物の気配を感じた者はなし。


「んー……」


 レンは、わずかな違和感を覚えているようだ。


「来てないプレイヤーは存在する。そして魔物の発見はなし……一応、調べておきたいんだけどいいかしら?」

「もちろんだ、何でも聞いてくれ」

「街作り組の中に、橋を完成させた後にやって来た初見の人っていない?」


 その問いに、極・魔剣が驚きを見せる。


「なるほど……! ソロで来た新参は特に怪しいかもな。パーティを組んでないのであれば、怪しまれることも早々ない。さすが闇の世界を活きる者は違うな……!」

「その経験が今役に立ってるわけじゃないんだけど!」


 さっそくハウジング組と掲示板民が、こっちに渡って来てから初めて見かけたプレイヤーの名前をあげていく。

 あがったのは、数人のみ。


「声を掛けに行ってみましょう」


 極・魔剣はさっそく、該当者を探して進む。

 するとやがて、見かけた一人の人物を指差した。

 黙々と街路作りを進めている青年のもとに、極・魔剣が駆け寄っていく。


「どうしたんですか? こんなに大勢で」


 ちょっと驚いたようにする青年。

 肩に小さな使い魔を乗せた青年は、メイたちに空を駆ける馬を貸してくれたハウジング勢だ。


「いや、調子はどうかと思ってさ」

「上々ですよ」

「一応聞いておくけんだけど、昨日から起きてる妙な事件について何か知らないか?」

「事件? 知りませんね」


 青年は【石タイル】を並べながら、首を傾げた。


「やっぱり違うっぽいな」


 馬を貸してくれた青年は、極・魔剣に肩を叩かれるも表情一つ変わらない。

 こうして踵を返した極・魔剣を先頭に、来た道を戻る。

 そしてまた別の鍛冶ソロプレイヤーの元へ。


「なあ、誰か怪しいやつとか魔物とかを見なかったか?」

「知らねえなぁ」


 皆、鍛冶プレイヤーの挙動を真剣に見つめるが、やはりおかしな点は見つからない。

 そしてそれは、他のプレイヤーも一様に同じだった。


「……謎は謎のまま残る感じかな。来てないプレイヤーも、そのうち出てくるように祈ろう」

「そうだな。こうなった以上、ザッハらしき化物は回復する前に攻撃を繰り返して、どこか遠くに……運んでこようか」

「それしか……ないな」


 やはり七不思議は、解決しない。

 新たな手掛かりもなく、ハウジング勢が残念そうに息をつく。

 不死の魔物が何度でもよみがえってしまうという状況は、さすがにやっかいが過ぎる。


「ザッハ……」


 そしてそんな嫌な役回りを、仕方なく極・魔剣が引き受けようとしたその時。


「ちょっと待って」


 声をあげたのは、レンだった。


「これまで何人も消えてる可能性があるのに、今日まで話題にならなかったのよね。そしてそっくりに化けて入れ替わる粘土の魔物……ちょっといい?」


 思い出してレンは、極・魔剣に提案を一つ。

 今度は一人で、青年の元に行ってもらうことにした。


「おーい、度々悪いな」

「はい。あれ、今度は一人ですか?」

「ああ。聞き忘れてたんだけど、怪しいプレイヤーか魔物は見てないか?」

「いいえ、知らないです」

「そっか、悪いな」


 あらためて確認を終えた極・魔剣は、再び踵を返してゆっくりと歩き出す。

 そして、十数秒ほど後。

 青年は極・魔剣の後ろに、音もなく接近。

 そのまま――。


「【アサシンピアス】」

「っ!?」


 聞こえた声に振り返る。

 そこには極・魔剣の背後を、【隠密】で尾行していたツバメの姿。

 そして空を駆ける馬を貸してくれた青年が、粘土状になって倒れ伏した。


「……こいつも犠牲者だったのか!?」

「やっぱり、ザッハだけじゃなかった!」


 そのまま消えていく青年に、困惑するハウジング組。しかし。


「いいえ、違うわっ!」


 異変に気付き、声をあげたのはレン。


「成り代わりを増やしていくのなら、内密なのが前提になるから大勢の目前でプレイヤーを襲うことはできない。だから独りになったフリをしてもらうことで様子を見たんだけど、正解だったわね! 見て、偽物のプレイヤーが粘土になって消えたのに――――肩に留まっていた使い魔が消えてない!」

「……まさか! 最初から本体は……っ!」


 極・魔剣が、そう言った瞬間。

 青年の使い魔のフリをしていた翼を持つ蛇の魔物が、その目を赤く輝かせて襲い掛かってきた。


「ぐっ!」

「チッ! 思ったより速いぞ!」

「痛っ!」


 高速移動からの連続【喰らいつき】が、ハウジング組数名のHPを削る。そして。


「動きは結構なもんだな! でも、勝てない相手じゃないって……こ、これは、なんだ……っ!?」


 ダメージはそこまで高くなく、もれる安堵の息。

 しかし次の瞬間、噛まれたハウジングプレイヤーの身体が異変を起こし始めた。


「う、うおおおおおおっ!?」

「なんだよこれ、う、うわああああああ――――っ!!」


 腕や脚の色が黒く変わり、その組織自体が明らかに人間のものとは違う構成になっていく。

 それは先ほど見たザッハのなれの果て、不死の魔物によく似ている。


「そういうこと……っ!! この使い魔みたいな魔物は、粘土で作った人間を街づくり組に紛れ込ませて使役。隙を突いて【喰らいつき】でプレイヤーを不死の魔物化しては、代わりに粘土の魔物に化けさせた偽物を増やしていく……そうやって浸食、崩壊させていくんだわ!」

「それが、不死の魔物の生まれ方ですか……!」

「お、おそろしいですっ!」

「……ええと?」


 ゲーム経験の少ないメイがちょっと迷っているが、レンの予想は鋭い。

 この事態を生みだしたのは大物モンスターなどではなく、『内側に入り込んでくる』小さな一匹の魔物によるものだった。

 まさかの展開に、皆驚きを隠せない。


「う、うああああああ――――っ!!」


 次々にその姿を浸食されていく、ハウジング組。


「急ぎましょう! おそらく魔物化が始まっている皆さんは、時間経過で牙をむいてきます……!」

「りょうかいですっ!」

「は、はひっ!」

「元凶の魔物、今度こそ叩かせてもらいましょう!」

「……もちろんだ」


 レンの言葉に、極・魔剣はそっと自作の剣を取った。


「ここでザッハの仇は取らせてもらう。いくぞおおおお――――っ!!」

脱字報告、ご感想ありがとうございます! 修正させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆新作よろしくお願いいたしますっ!◆◆◆

【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
キュアアルカナシャドウ、紳士向けも増えてきたな… https://youtu.be/-XySGltfuLU?si=b7u7JkOmth_FDsO8 https://youtu.be/P0z2byYjS…
トラベルプリキュア https://youtu.be/vEZmt6_fS1w?si=S42zyX0QqZ5JSPgJ
不思議な町並み https://youtu.be/9PiRueTL-_g?si=R_C2OCBXR8vWuOSq https://youtu.be/hxYqw6y2iqY?si=PXYCOOnDmYF…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ