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いのせんっす!1-4

魔法少女に詰問する主人公……。

1-4

 俺はここを心の中で可もなく不可も無く公園と呼んでいる。

 どこかで聞いたが、我が日本国では一定範囲以内に公園というものを作らなければならないルールがあるらしい。

 その数合わせの為に作られた最低限の遊具と水飲み場しか備わっていない没個性的な公園、それがここなのだ。

 この公園を職業別に評価するなら一番ヒキョウなジョブってところだろうか。

 別に役人仕事を否定するわけじゃないんだけど、子供の時にほとんどここで遊んだ覚えが無い。

「ふむ、つまり君のその服はナニかね? 普通の服ではなくて、君の魔力でできていると」

 刑事の尋問のモノマネをしているような感じでした俺の質問に対して少女は真摯に答えて下さった。

「魔力っていうか、『想い』の力っていうか」

 水飲み場で手洗いを済ませた少女は胸ポケットからハンカチを取り出し両手を拭いていた。

 まったく、ご丁寧な事で。

 魔法は便利だ、と言い換えた方がいいか。

「どっちにしても俺からしたら同じようなもんだ」

 道中俺は、少女の服装の変化の原因を聞いていた。

 何やら怪しげな力で少女は服装を変える事ができる模様。

 今日の天気は晴れ模様。

 ただし既に日は落ちてしまった為に星空を見る事はできても青い空にお日様ニコニコニッコニコではない模様。

「同じじゃない」

「常識で判断できないものは同じですうぅ~理解できないものは全部同じと考えます~」

 センにとっては同じじゃなくても極平凡な人間、ヒューマン、日本人、中学二年生の自分としては、同じなわけでして。

 そういった超常現象に対する細かい理解まで急に求められたら、ちょっと不機嫌に逆切れ的態度でも取らなきゃいけない事になる。

 説明してもらわなきゃわからないからな。

 そういう態度を取るような人間の責任として口で説明するくらいなら俺は口で説明する。

 パンチングゲームで100出すのさえ厳しい軟弱な中学二年生なもので。

 ていうか俺はゲームセンターにはほとんど行かない。

「そんなの、ずるい」

 ちょっとむくれたように唇を尖らせるセン。

 しかし俺は意に介さず、

「ずるくありません心の準備もできてないのに魔法とか異世界とか出してくる方がずるいです~ちゃんと努力して事前準備して市街戦でビルを破壊しないように戦ってください~」

 別にセンは巨大化して戦っているわけじゃないから、ビルを壊す心配はしなくても良かったのだが、ヤケクソになって言ってしまった。特に意味は無い。

「むぅ……」

 とりつく島がないと判断したのか、少女は困ったような表情をしたまま赤い瞳で見つめている。俺の事を。

 ちょっと罪悪感が芽生えた。

 フォローさせていただきますか!

「でも、それって着替え放題って事だよな。便利だ」

「ええ。こうして戦闘が終わった後に市街に潜伏する時、とても便利。魔力が無くなっていなければだけど」

 おいおい、ていうことは……。

「魔力が無くなったら、どうなるんだ?」

 わかりきっているのに。

 いかにもわかりません的な感じで聞いてしまった。

 船頭多くして、とはいうが。

 ……残念ながら俺には理性とオベリスクの二人の船頭がかじ取り合戦していましてね。

 肉体と精神が不可分であるがゆえにこういった下卑た作戦を立ててしまうわけですよ。

 あとで多分自己嫌悪だな。

 猿ではできない反省をしておく必要がありそうだ――あいつら自慰行為を教えたら死ぬまでやってるって話だからな。

 俺はあと十六年以内に蹴りをつければいいのだから気楽だ。

 多分。

 だから今は、今はお許しください神様。仏様でもかまわないけれど。

「消失する。外部損傷によりあまりにも思念の流出が激しければ肉体の維持も困難になるけれど、ただの疲弊なら具現化した物体の消失だけで済む」

 要は戦闘であまりにも魔力を使い過ぎてしまうと、すっぽんぽんになってしまうという事らしい。

 俺は我が校の制服を着ている赤眼の少女の裸体を一瞬、いや三瞬ばかし想像してしまった。

 スラリとした体躯にそっと膨らんだ青い果実のような女性的部位。

 うーむ。

 うーむむ。

「見たい?」

「え?」

 え? え? え?

「こっちの世界の人間との円滑な関係を築く為に、相手に好かれるようになりなさいって教わったから。相手の好きな事をしてあげればいいんでしょう?」

「いやいやいや、それは教えてくれた内容はあってると思うけど、何かしてあげて好かれようってのは違うと思うぞ特に性的意味ではかなりちょっと大分違うんでは」

「そうなの? こうすればいいのかと思ってた」

 次の瞬間、センが着ていた衣服が消えた。残念ながらアングル的には後姿からの想像にしておいてくれ俺は何も見ていないオレヴァ何も……。




 うおっしゃらほんじゃらどんじゃらうぎょらっしょーい! ※

                ※歓喜及び驚愕の擬音的表現




「で、お前何者なんだ?」

 溢れる鼻血をセンからもらったハンカチで拭きながら、それだけ質問する。まだ全然こいつの事、わかっていない。

「セン」

 やっと衣服を着てくれたセンだが相変わらず俺とはかみ合わない、会話。異世界との文化交流への道は遠い。

「いや、そうじゃなくて!」

 にじりよってくる少女を、俺は両の手で必死に押し止める。

「ちゃんと話そう!」

 センは口先をちょんとかわいらしく突き出して、誰が見てもキスしようとしている状態。俺の精神状態は状態異常ステータス「誘惑」にかかる一歩手前だ。

「ちゃんと! キスとかじゃなく!」

 少女は何がいけないのかという顔を俺にしている。赤い瞳がつぶらになると無防備な可愛さが倍増する。

「キスがダメならせっ」

「接吻もダメです」

 まったく、最近の魔法少女教育はどうなっているんだ!? 貞操観念の修正を要求する!

「セックスって言おうとしたのに」

「そっちの方がもっとダメです!」

 齢14にして貞操の危機とは!

 魔法使いになれる年齢になるまで取っておく事になるのでは(あるいは死ぬまで……ん)と危惧していたが……!

 その約束手形を奪いに来た人が現れたようです……!


 ……でもせっかくならもっと普通の展開を俺は希望。


 食パンくわえた転校生と登校時に朝十字路でぶつかってそれから縞パン覗いてわーおして当然そいつは美少女でそれが同じクラスに来て「あ、あんた朝のパンツ覗き(以下略)」的な展開になるのを(以下略)。ちなみに親切心でいうと、この小段落二回目の(以下略)は「切実に、切実に希望申し上げます(えなりかずき風)!」の略だから。書かなくてもいいから書かなかったけど、心配になって書いてしまった。

 良い子のみんなは当然わかったよな?!

 などと脳内読者に語りかける俺14歳は今激しく動揺している。

 しかも先程の化け物との戦闘を見た時のドキドキではなく、もっと思春期っぽいドキドキしてます。

 あ~、どうしよう。

 ……どうもできんか。

 とにかく落ちつけ、落ちつけ俺のオベリスク※!

     ※オベリスクとはエジプト語で心を意味しています他意はありません(多分嘘)。

「なんでそんな事しようとすんだよ」(草食系男子の発言)

「人に好かれるようになりなさいって言われたから」

 ……まったく、最近の魔法少女教育は(以下略)。

「そういう好かれ方しても、意味ないと思うぞ。それに俺はいつか現れるであろう相思相愛の相手の為に純潔を取っておいているのだ。いくら迫っても無駄無駄無駄無駄」

「私は多分君の事、好きなんだと思う。今まで異界の男の人にもこんな事した事ないし、でもなんでだろう、君には……。君は私の事、嫌い?」

「いや、嫌いとか、だってまだあったばっかだし……!」焦る俺。相思相愛でも心の準備ができていないからダメです!

 制服を着た赤眼の少女はうつむいて足元の小石を蹴りながら、

「本当はパンピーに私達の世界の事言っちゃ、いけないの」

「パンピーってなんだよ」

「一般人の事」

 なんだそりゃ。いや、わかるけど。ていうか、

「お前の世界の事話してもいい人間なんて、こっちにいんのかよ?」

「いない」即答。

「なら別にパンピーとか分ける必要ないだろ」

「ん、そうだけど。せっかく覚えた言葉だから使ってみたくなって」

「どこでそんな言葉覚えてるんだよ」

 何やらアングラな香りがする。

「とにかく、私の世界の事は、こっちの世界の人間に話しちゃいけなかったの」

「ふむ」

「誰にも言わないで、なんて言ってもキミくらいの年齢じゃ、無理だよね」

「特撮映画の魔法少女役が俺に臨時でエキストラ募集してきたなんて、言ってもなかなか信じてもらえないと思うけどな」

「特撮映画なんかじゃ」「わかってるよ」

 流石にここまで見てきて否定する気も無い。

 超常現象をあまりにも見過ぎた。

 受け入れるしかないだろう。

 この世には人知の及ばざるものがあるという事か。

 あー、俺の常識人生活が。

「私は魔法使いじゃない。私は、異能使い。正確にいうと、基本になる魔法と、各人固有の異能の両刀使い」

「違いがよくわからん」

 とりあえずなんかエロそうだ。

 とは言わなかった。

 なんか場の空気にそぐわなそうだったので。

「言ってもしょうがない事よ」

「なら言うなよ」

 聞けば答えるみたいな感じで話してた気がするんだが。

 ……大丈夫なのか?

「そうね、私、なんでこんな事キミに話しているんだろう。ただの、人間相手に」

 少女は自嘲的に笑うと、長大なステッキを具現化させる。……なんでこんなところで具現化するんだ?

「私は、しばらくこの街にいなきゃいけないから」


 コン。


 魔法少女のステッキが俺の眉間にあたった。

 魔法的な何かが打ち込まれたのかただの物理的な衝撃だったのかわからない。

 とにかく、視界が揺れた。

「バイバイ」

 そこで俺の意識は急速に薄れていく。

 おい、ちょっと待てよ、俺はまだお前に聞きたい事が……それにしなきゃいけない事も……貞操観念の修正とか……。


 がくっ。

主人公は気絶し、魔法少女は姿を消した……。

このまま物語りは終わってしまうのか?(オワラネーヨ)

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