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上級アンデッド

なんか粗筋とタイトルだけ浮かんだ




「初代勇者の賢者様、女神(嫁)と一緒に勇者の旅に同行します」

 この世界には沢山の種類のモンスターが存在するんだけど、モンスターと戦う仕事に就いていない人達が特に怖いと思うのはアンデッド系、特に人間の死体が元になったゾンビやグールとからしい。


 確かに臭そうだし痛みも感じず襲って来る上に筋力のリミッターが外れているのは厄介だと思うけど、町を囲む壁を越える飛行型モンスターや火を吐いて火事を起こすモンスターの方が怖いと思うけどな。


 聞いた話じゃアンデッド化するには死体に怨念が籠もる必要が有るけど埋葬の際にちゃんと処置さえすれば防げるから行き倒れや戦場でもない限りは滅多にアンデッドにはならないらしいけど……。



「それはですね、元が同じ人間だからこそ不気味さを感じ、死体から死を連想してしまうのかと。私は哀れな犠牲者として倒す事で魂を解放しようとしていますけど。……まあ、幽霊話は苦手なのですが」


 って、この世界の住人のエリーゼから聞かされて少し納得出来た。確かにホラー映画の怪物も完全に人外の化け物よりも人間っぽさが有る方が怖いって僕は思う。人間を真似て作った物が一定段階まで似ると不気味さを感じる不気味の谷って奴と同じなんだろうな、うん。


 ……それを考えれば目の前の怪物は確かに不気味なんだけど、其処まで言う程ではないね。どっちにしろ不気味なのは変わらないけどさ。


「ねぇ、コープスって確かスカー先生が授業で言ってた……」


 粘土で作った人形をバラバラにして出来るだけパーツの原型が分かる様にくっつけた、そんな感じの姿の絵ををつい先日の授業で見たばっかりだ。えっと、確か…‥…。


「遠くに姿を捉えたら近付くな、近くに来たら死に物狂いで逃げろ…‥って言われたよね。確か特定災害危険種のランクはバイコーンより上だった様な……」


「ふはははははっ! 敵が強大だからこそ燃えるのではないかっ!」


「………!ヴォルテクト様の馬鹿な発言は無視して結構ですが、恐らく逃げるのは困難かと。……業腹ですが戦うしか有りませんね……はぁ」


 この二人、男女だったり主従だったりの差があるんだけど、お祖父ちゃん達の関係にそっくりだ。豪快な方が周囲をグイグイ引っ張って、冷静で賢い方が窘めつつフォローする。何処にもこんな関係の人達って居るんだなぁ。


「……所でシャロットは腕は大丈夫なの?」


 クリスタルドラゴンの巣から帰る途中で迷子に……嫌な予感がして進んでみればシャロットが危なかったから咄嗟に抱えて助けたけど、よく見れば右肘から先が切り落とした状態で凍っている。止血にはなっているけど、早く医者に見せた方が良いんじゃないのかな?


 僕が心配して問い掛けるけど、シャロットさんは乱れた髪を片手で器用に括ると僅かだけど笑みを見せた。うん、本当に無表情に見えるけど微妙に笑ってるや。



「私はグラン公爵家に仕えし一族の長女。この程度で戦線を離脱致しません」


(役に立てないから引退する云々は掘り返さぬ方が良いか……)


「ええ、それが賢明かと」


 ……あれぇ? ヴォルテクトが何か言いたそうにしてたけど口にする前に窘められているや。これが以心伝心って奴か。何時の間にかくっついてたし……。


「無駄話は終わりです。……来ますよ」


 シャロットの言葉に僕は緋鋼を、ヴォルテクトは雷の刃を纏ったダガーを構え、シャロットさんは手斧を腰のホルスターに仕舞うとトンファーを構える。まるでこっちの動きを観察していたみたいにコープスが動き出した。




「アァアアアアアアアアアアッ!!」


 巨体の至る所に存在する口から叫び声が発せられ、重なる事で大きさが増す。その上、性別も年代もバラバラで凄く耳障りだ。右手を大きく振りかぶり、腰を捻ったかと思うと勢い余ってコープスの上半身がねじ切れそうな程に回転する。捩れた肉が悲鳴を上げて血が飛び散るけど相手はアンデッド、気にした様子も無く捻った体を勢いを付けて戻しながら突進して来た。


 指先(指の一本一本が腕とか足だから爪先でもあるのかな?)が触れただけで太い木が薙ぎ倒される姿にコープスが何故上級アンデッドとされるのかを思い出す。本来、腕はそのレベルの人の腕の分しか力を持っていないけど、数人分の体が一本の腕になっているこのモンスターの腕は数人の全身の力と同じだけの力を持つんだ。あの様子じゃ一人一人のレベルがそれなりかな?


「でも、所詮は大振り……いぃっ!?」


 腕の下を潜り抜けて近寄ろうとした瞬間、肉が内部から盛り上がって鋭く尖った骨が突き出して来る。咄嗟に刃の腹を差し込んで防いだけど下に押し込まれ膝を付いてしまった。その僕に向かって振り上げられる豪腕。更に増えた骨によって針鼠みたいになった腕は流石に当たりたくない。



「うん、矢っ張りアンデッドはアンデッドか。僕に集中しすぎだったね」


 その積もりは無かったんだけど、僕に意識が向いた瞬間にヴォルテクトとシャロットが懐に潜り込む。顔面に密集した目玉が二人の姿を捉えて対応しようとするけど、今度は僕から意識を逸らした。


「でやっ!!」


 刃を振り上げ、肉に食い込ませる。分厚い筋肉と極太の骨は緋鋼でも斬るのが楽じゃない位に斬りにくい。左右から肉が刃を挟んで止めて来る。でも、此処で止まれば僕は武器を失って戦力ダウンだ。只でさえお祖父ちゃん達に守られているんだし、同年代の足を引っ張るとか経験の差を考えてもb何か嫌だ。


「女にだって……意地はあるんだよっ!!」


 腕だけじゃなく、足や腰の力も総動員して刀に力を注ぐ。削がれていた勢いが増し、腕を切り飛ばした瞬間、シャロットのトンファーがコープスの足を叩いてバランスを崩す。元々歪な姿で重心のバランスが悪かったコープスは後ろへと倒れそうになり、ヴォルテクトがアンデッド共通の弱点である頭部へと雷の刃を突き出す。向こうも骨を更に生やして迎撃しようとするけれどリーチが違うから……あれ? あの骨、妙に罅が入っている上に振動している。僕が切り落とした腕の方も……。



「気を付けろっ!」


 僕が叫んだ瞬間、突き出した骨が砕け散り、鋭利な形の破片が四方八方へと弾け飛んだ。








「スカー先生っ!」


 リシャーナの叫びに反応し、スカーは直前で反応した。気絶した保護対象のコーシが必要以上の脂肪を蓄えた体からは想像出来ない機敏さで飛び掛かって頸動脈目掛けて噛み付いて来る。咄嗟に動いた為に歯が突き立てられたのは肩だが、尋常でない力でしがみ付き、骨さえ砕ける程に強く噛む。


「ぐぁああああああ!」


「グールですって!? こんな短時間で……いえ、今大切なのは」


「待ってっ!」


 コーシが何になったのかを見抜き動揺を見せながらもリシャーナは魔法を放とうとする。それを止めたのは襲われているスカー自信であった。コーシを必死に引き離そうとしながら彼は唖然とするリシャーナの目を見て頷く。此処は自分がどうにかすると目で語っていた。



「貴方はこんな時までっ!」


「……それが僕の生き方なんだ。原因不明で短時間でのグール化をしたのなら……」


「シャアアッ!!」


 未だ助かるかもと言い掛けた彼の脇腹に爪が突き刺さり、苦痛でよろめく。痛みに気が散った彼の首目掛けて勢い良くグールとなったコーシの歯が迫り、血が飛び散った。







「……死んだ人を蘇らせる術は有りません。時の流れも遡れないんです」


 放った魔法でコーシの頭部を吹き飛ばしてスカーを救ったエリーゼは悲痛な表情をしながらも毅然とした声色で告げる。その姿を離れた場所から眺めるキグルミが二人居た。











「……うっひゃあ。容赦無いですぅ。あんなのに喧嘩を売ってたんですねぇ。聞いた話が信じられますよぉ」


「いや、一切関係ない。あれはあの少女の資質だろう。……前世が先代の魔王だったなど大して影響していないだろうさ」

 

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